亡くなった王太子妃

沙耶

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13 フィリア2

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妹が、私を殺そうとしている……?まさか殿下、も?

愕然とし、体が冷たくなっていくのを感じた。

「全部、話して……」

この侍女は、覚悟を持って私の所へ来たはず。

きっと嘘偽りなく話してくれる。

侍女は涙を浮かべながら、ポツポツと話し始めた。

「二年ほど前に、シェリール様は殿下にお近付きになられました。最初はフィリア様の愛らしい情報を殿下にお伝えしていたのですが、シェリール様は殿下に恋をしてしまい、半年かけて殿下と恋人になられました」

「……半年?」

侍女は頷く。

「はい。殿下は当初、フィリア様がいるからと拒んでおられました。しかしシェリール様の可愛らしさに落ちてしまったようで……」

侍女は気まずそうに俯き徐々に声が小さくなっていくが、私が続きを促すと覚悟を決めたように前を向いた。

「二人は月に数回、先程の教会で会っています。シェリール様と殿下は額と頬のキスのみで、体の関係は一切ありません。殿下はフィリア様がいらっしゃるので一線を引いているようにも見えます」

殿下は私にも、額と頬のキスだけ。王族だもの。結婚前に子を作る愚かなことはしない。

でもきっと私にしていることを、シェリールにも同じようにしている……先程のように……

「……薬は?シェリールの、独断なの?」

「はい……」

侍女は苦しげに答える。彼女は薬のことがなければ、二人のことは墓場まで持っていくつもりだったのだろう……

シェリール……

私の、可愛い、妹……

「シェリール様は、薬をどうするつもりなのでしょうか?」

侍女は消え入りそうな声で、瞳を揺らしながら私に問う。

「それは……」

私は言葉に詰まった。

薬を使う人物なんて、私しか、いないでしょう……?あの光景を見た後では、誰だってそう思うでしょう……?

あなたもそう思ったから、私に告げにきた……

でもこの言葉を私は口にすることが出来なかった。あまりにも、あまりにも、無残で……

私は侍女の問いには答えられなかった。

「このことを、知っているものは?」

「私ともう一人、シェリール様の侍女です」

「そう……」

上手く、隠していたのね……お父様もお母様も知らないはずよ。きっと陛下たちも……

「結婚式は、三日後なのよ……」

もう結婚準備はできている。ドレスも作って、指輪も用意して、招待客も呼んでいるの。隣国から来る人だっているわ。

「どうしろというの……」

妹は殿下に惹かれた。そして殿下も……お互いに、愛し合っている。

では私と殿下は?殿下の愛してるは、嘘だったの?妹は私のこと、本当はどう思っているの?

二人とも私の前では無垢な顔して、裏では私を騙していたの?

どうして……どうして、あの二人が……私の一番愛する、二人が……

「……っ」

「フィリア様……」

ポロポロと、ポロポロと、次から次へと涙が溢れ出してきた。

「はぁ……っ」

苦しい、苦しい、心にナイフをいくつも刺されたみたいに。

シェリールが産まれてからの思い出が、殿下との八年間の思い出が、

二人との大切な数々の思い出が、私を苦しめる。

私の愛おしい、記憶──。


どうするの?どうすればいいの?

自身に問いかけても、何が正しいかなんて分からない。

だけど私はまだ、二人を愛してる。

もう消してしまいたいその気持ちだけは、心の奥底に深く、残っていた。




































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