亡くなった王太子妃

沙耶

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14 フィリア3

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『姉様と殿下は本当にお似合いね』

『ふふ、ありがとう。ねえシェリール、あなたはまだ婚約者を決めないの?』

『婚約者なんて要らないわ!』

『どうして?』

『そんなの決まってるじゃない!私の一番は姉様だもの!姉様を超える人が現れたら、考えるわ!』

『ふふ、シェリールったら……』

『ねえ、姉様の一番は、』


「はっ」

目を大きく見開いて目覚めた私は、大量の汗をかいていた。

……また、昔の夢……。

まだ胸の痛みが消えない。眠りにつくと、幸せだった頃の夢ばかりみてしまう。

私が今、求めているもの……

「フィリア、大丈夫か?」

私の顔を心配そうに覗き込むのは、昨日結婚したばかりの殿下だった。

「大丈夫です」

私に触れてこようとする手をやんわりと避けて、笑顔を作る。

上手く、笑えているだろうか。顔は、歪んでないだろうか。そんな心配ばかりしてしまう。

じくじくと痛む心と昨夜の腰の痛みに耐えていると、殿下は恥ずかしそうに微笑んだ。

「体は、大丈夫か?その…昨夜は幸せだった」

「……ありがとうございます」

私が言葉にできたのは、それだけだった。しかし殿下は私が照れていると勘違いしたのか、私の額にキスをし、今日はゆっくりしてて。と優しく囁き部屋を出て行った。

殿下が居なくなるのを確認すると、私はまたベッドに沈み込む。

虚しい……

なんて虚しいのだろう……

私が夢見ていた初夜とは、全く違っていた。

殿下は優しく丁寧に私に触れ、何度も愛してると耳元で囁いてくれた。

でも、彼の愛してるが、軽く感じてしまう……

彼の全てが、表面上だけの、仮面のように見えてしまう……

覚悟を決めて、嫁いだはずなのに。

お父様やお母様、王族の方々、私たちを理想とする貴族や使用人の皆……

数々の愛する人の顔を思い浮かべ、私が目を瞑れば丸く収まるならそれでいいと、覚悟をして殿下と結婚したはずなのに……

なのに何故、こんなにも心が苦しいの……













その日の夕方、シェリールの侍女が報告にやってきた。

彼女の兄は王宮の騎士だった。
彼女にはシェリールの行動を見張り、週に一度兄に会いにくる名目で、私の元へくるよう指示していた。

しかし今日は約束の日よりも早い。
もしかしてシェリールが行動を起こそうとしているのだろうか……

「話して……」

侍女は何かに恐れるようにカタカタと震えていた。

私はシェリールが毒を使用する計画を立てたのだと思った。

だがシェリールは、私の想像以上だった。

シェリールは結婚式の日、殿下から別れを告げられると、彼に避妊薬を盛ったのだという。

「なんて、ことを……」

私は目眩がした。

その避妊薬は私に使用するためのものだったのか、それとも違う薬なのかは侍女には分からないという。

そして私に薬を使う日も、シェリールは決めたと話した。

妹は、よりにもよって、王妃の茶会で薬を使うと決めたのだ。





























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