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14 フィリア3
『姉様と殿下は本当にお似合いね』
『ふふ、ありがとう。ねえシェリール、あなたはまだ婚約者を決めないの?』
『婚約者なんて要らないわ!』
『どうして?』
『そんなの決まってるじゃない!私の一番は姉様だもの!姉様を超える人が現れたら、考えるわ!』
『ふふ、シェリールったら……』
『ねえ、姉様の一番は、』
「はっ」
目を大きく見開いて目覚めた私は、大量の汗をかいていた。
……また、昔の夢……。
まだ胸の痛みが消えない。眠りにつくと、幸せだった頃の夢ばかりみてしまう。
私が今、求めているもの……
「フィリア、大丈夫か?」
私の顔を心配そうに覗き込むのは、昨日結婚したばかりの殿下だった。
「大丈夫です」
私に触れてこようとする手をやんわりと避けて、笑顔を作る。
上手く、笑えているだろうか。顔は、歪んでないだろうか。そんな心配ばかりしてしまう。
じくじくと痛む心と昨夜の腰の痛みに耐えていると、殿下は恥ずかしそうに微笑んだ。
「体は、大丈夫か?その…昨夜は幸せだった」
「……ありがとうございます」
私が言葉にできたのは、それだけだった。しかし殿下は私が照れていると勘違いしたのか、私の額にキスをし、今日はゆっくりしてて。と優しく囁き部屋を出て行った。
殿下が居なくなるのを確認すると、私はまたベッドに沈み込む。
虚しい……
なんて虚しいのだろう……
私が夢見ていた初夜とは、全く違っていた。
殿下は優しく丁寧に私に触れ、何度も愛してると耳元で囁いてくれた。
でも、彼の愛してるが、軽く感じてしまう……
彼の全てが、表面上だけの、仮面のように見えてしまう……
覚悟を決めて、嫁いだはずなのに。
お父様やお母様、王族の方々、私たちを理想とする貴族や使用人の皆……
数々の愛する人の顔を思い浮かべ、私が目を瞑れば丸く収まるならそれでいいと、覚悟をして殿下と結婚したはずなのに……
なのに何故、こんなにも心が苦しいの……
◇
その日の夕方、シェリールの侍女が報告にやってきた。
彼女の兄は王宮の騎士だった。
彼女にはシェリールの行動を見張り、週に一度兄に会いにくる名目で、私の元へくるよう指示していた。
しかし今日は約束の日よりも早い。
もしかしてシェリールが行動を起こそうとしているのだろうか……
「話して……」
侍女は何かに恐れるようにカタカタと震えていた。
私はシェリールが毒を使用する計画を立てたのだと思った。
だがシェリールは、私の想像以上だった。
シェリールは結婚式の日、殿下から別れを告げられると、彼に避妊薬を盛ったのだという。
「なんて、ことを……」
私は目眩がした。
その避妊薬は私に使用するためのものだったのか、それとも違う薬なのかは侍女には分からないという。
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