誰も愛さない

まめ太郎

文字の大きさ
上 下
104 / 247

93

しおりを挟む
 公民館に着くと、そこには既に9人の男性と3人の女性が待っていた。
「お前、最近全然顔見せないで、何してたんだよ」
 少し髪の長い整った容姿のアルファの男性が、大賀と肩を組んだ。
 大賀も気安げに、その腕を払い笑っている。

「俺も忙しかったんだよ」
 大賀は俺の手をひくと、みんなを見回した。
「付き合ってる成澤さん」
 俺は頭を下げ、少しでもいい印象を与えられるように微笑んだ。
「どうも成澤唯希です。初めまして」
 急に静かになって、俺は焦った。

「えっ、ええっ。マジで?だってその人アルファじゃん。男じゃん」
 女性の一人が叫ぶ。
「馬鹿」
 眼鏡をかけた男性が叫んだ女性を小突き、俺にむかって笑いかける。
「目黒幸助です。初めまして。ほらみんなも挨拶」
 目黒という男がこのサークルのリーダーなんだろうか。
 俺は全員の名前を覚えようと必死にみんなの自己紹介を聞いた。

「俺は澤山隆。剛士の親友です。よろしくっ」
 先ほど大賀と肩を組んでいた男性が、俺にむかって手を差しだす。
 握手かと思い、俺も手をだそうとすると、横から大賀に阻まれた。

「そこまでしなくていいっしょ」
 大賀から威圧的なオーラを感じ、俺は手を引っこめた。
「ふうん」
 澤山は何が楽しいのか笑っているが、周りは気まずい雰囲気だ。

「さあさ、試合だ。今日負けたチームが公民館のコートレンタル代金払う決まりだからな。頑張ろうぜ」
 目黒が話を変えてくれたおかげで、ぞろぞろとみな公民館に入っていく。

 大賀はジャージに着替えるとコートでストレッチを始めた。
「剛士。今日すごいやる気ですね」
 先ほど叫んだ女性に声をかけられる。

「日野香(ヒノ カオリ)です。ってさっきも挨拶したか」
 からっと彼女が笑う。
 俺の隣のパイプ椅子に彼女は腰かけた。
 女性陣は応援だけで、試合には参加しないようだ。
 コートの端っこにパイプ椅子を並べて、いつも見学だという。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

BL / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:3,042

運命を知っているオメガ

BL / 完結 24h.ポイント:844pt お気に入り:3,699

ラットから始まるオメガバース

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:95

努力に勝るαなし

BL / 連載中 24h.ポイント:484pt お気に入り:531

【完結】水と夢の中の太陽

BL / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:708

白銀オメガに草原で愛を

BL / 完結 24h.ポイント:198pt お気に入り:243

碧に溶かして

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:103

Ωの恋煩い、αを殺す

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:142

婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話

BL / 完結 24h.ポイント:965pt お気に入り:2,168

処理中です...