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第二章 異世界交流と地球人たちと邪神討伐

#40 コクアとムカムカとユリア

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そいつはダンジョン最下層で見た黒竜よりも2周り程大きかった。
それになんか刺々しい、肘とか膝とかにやたらデカイ角のようなものが飛び出ている。

廃坑の奥は大きな広間になっていたのだか、隅の方には人骨のようなものが多数転がっている。

《新しい生け贄か?それにしては妙な気配があるな》

「生け贄?何の話だ?俺らはお前を退治に来ただけだ」

《退治か、ふはははは!》

「何だ?何がおかしい?」

《貴様が矮小な身で生意気な事を言うから面白くてな》

《お前は相変わらずだな、全く反省しなかったようだな『コクア』》

黒竜と話していると突然ハクが割り込んできた。
つーか知り合いか?

《妙な気配はハクか、貴様がここまで来るとはな、今さら何の用だ?》

《今日の私は彼らの付き添いだ、お前の仲間は皆逃げるか死んだぞ、お前はどうする?》

《どうもこうもない、貴様らを殺して終わりだ、そこの人間2人は痛め付けて楽しむがな、いい声で鳴く様なら長く楽しめそうだ、クククククク》

そう言うとコクア?は悪そうな顔して笑い出す。

「なぁハク?あのかなりムカつく奴は知り合いなのか?」

《かなり昔に我が集落にいた者だ、同族を痛め付けて何を言っても止めなかったのでやむ無く追放した》

《今は同族には興味は無いぞ、痛め付けるなら人の方がいい表情をするし、悲鳴も心地いいからな、お前らも我のコレクションに加えてやろう、ガハハハハハ》

・・・・こいつ殺そう(笑)
話を聞くのもムカついてしょうがない。
何だろうな、いじめっこがそのまま成長して殺人鬼になった感じか。
どちらにしてもここまでムカつくのはエルフの国以来だ。

「こいつは殺す、いいなハク?」

《構わぬ、ここまで歪んでいるとは思わなかった》

「タッチャン私はどうする?」
「・・・テルはこの付近に強力な結界を張ってくれ、こいつは何もさせずに殺す、ちょっと本気出すから頼むよ」
「えっ、じゃああれ使うの?」
「そこまではしない、本気で身体強化するだけだ」
「わかった、崩れないようにしとくね」

《何をごちゃごちゃ話している、早く来るがいい、すぐに絶望させてやるがな、クハハハハ》

本気で身体強化魔法を使う。
そして思考速度も集中力と魔法で早める。
イメージは以前と同じだが肉体の中の魔力を出来る限り込める。
武器は『桜』と背中に『大ハンマー』のみだ。

まだコクアは油断しているな。
テルの魔法が発動したと同時に俺が飛び出す。

『ドンッ』

一歩踏み込むと地面がえぐれ土ぼこりが舞う。
0.1秒にも満たない時間で背後に回り、桜で翼の根元を狙う。

「2連閃!」

『ズドドーンッ!』

斬れた翼が大きな音をたてて落ちる。

《ヴギャァァァ、き貴様ら何をした!》

コクアの問いには答えずに頭上に登り、大ハンマーを振りかぶる。
つーか前にも思ったがこの速度で動くと空気すら邪魔に感じる。

『ドゴン!!!』

そのまま大ハンマーを振り下ろしコクアの頭を地面に叩きつける。

《グァァァァァァ!何だこれは!何が起きてる?》

大ハンマーをしまい今度は空中から両腕と尻尾めがけて桜を振るう。

「3連閃!!」

《俺の腕が~!何なんだこれは!》

俺は落下中にマジックバッグから試作品の大刀を出す。
刃渡り3m、幅は20cm素材はブルーで作った刀だ。
これは鍛造では無く生産魔法で形作ったので妙な付与はされていない。
ジルさんに教わったが、魔力を込めたハンマーで鍛造すると、かなりレアな付与がされることがあるので、いつもそうしていたが、これは大きすぎるので時間短縮のために魔法で作った。

「おらぁ~!」
『ドスッ』

話が逸れたな、落下の勢いのまま大刀をコクアの首に突き刺し地面に縫い付ける。
ちょっと聞きたいことがあるから少しだけ生かしとこう。

《グァァァァ》

「良しこれでもう動けないだろう」

かなり無茶な動きをしたので目が回ってちょっと気持ち悪い。

《俺の腕が!翼が!尾が無い!貴様らは一体何をした!》

「俺がぶった斬っただけだ、それよりも俺の質問に答えてもらうぞ、生け贄とは何だ?何処かの村を脅してるのか?それとコレクションとやらも答えてもらおうか?」

《貴様が斬っただと!そんなはず無いだろうが!どんな魔法を使「一閃!」ギャァァ》

グダグダ五月蝿いので足も斬り落とす。

「これで分かっただろ、俺はかなりムカついてるから早く答えろ、次は無いぞ」

強めに威圧しながら最後にもう一度聞く。

《・・・・・何なんだこれは!たかが人族の威圧が何故こんなに強いんだ?貴様は何者だ?!ハク!お前は何を連れてきたんだ?!》

《・・・私もわからん、ただ者じゃないと思っていたがここまでとは思わなかった、早く喋った方がいいぞ》

《クソッ、生け贄は時々何処かの村から届けられる、何処の村かは知らん、コレクションは後ろの部屋にいる》

「テル、こいつ見張っててくれ」
「分かった」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「これはひどいな」

奴のコレクションとやらは奥の部屋にいた。
居たのだが傷が酷い、動けないように足が切られている。
その他も傷だらけだが詳しくはやめとこう。
起こすと彼女は混乱しているのか暴れだした。

「イヤァァ、もうやめてぇぇ」
「大丈夫だ、もう大丈夫だ」

なので落ち着くまで抱き締めて落ち着かせる。
数分後、落ち着いて来たので話を聞いてみる。

「話せるか?薬は飲めるか?」
「そう言えばあなたは誰ですか?竜は?」
「意識はあるんだな、話も出来るのか」
「はい、あいつは私たちの苦痛に歪む所や悲鳴が好きらしくその辺りは何もされてません、でもそれ以外は・・・・」
「そうか、大変だったな、取り敢えずこの薬を飲め」

『ゴクン』

「ちょっと染みるぞ、傷口にもかけるからな、出来るだけじっとしててくれ」

今回は欠損部位が多いし、腱や神経も傷ついているので、原液のエリクシールを使う。
ぶっちゃけ今まで使ってきたのは飲みやすいように薄めてあるのて原液は今回が初使用だ。
エリクシールをかけると傷口が光出す、つーか首から上以外は傷だらけだったのでほぼ全身光っている。

「これ大丈夫なんですか?」
「多分大丈夫だよ、それよりもよく薬飲めたな、これくそ不味いだろ」
「今まで残飯ばかりでしたから・・・」
「そうか、後で旨いもん食わしてやるよ」
「それよりも竜はどうなったんですか?」
「あいつは向こうでぶっ倒れてるから気にすんな、それよりもそろそろだな」

光が収まり彼女の体を見ると傷は見当たらない。
欠損部位もどうなってるのかわからんが復活してる。

「足がある!指も!元に戻ってる!」
「治ったな、じゃあ歩けるようなら付いてきてくれ、歩けるか?」
「はい、大丈夫みたいです」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《貴様どうやってそいつを治した!?》

「何ですかこの状況?竜がハリツケになってる?」

戻るとコクアの拘束が増していた。
巨大な体の四隅に光輝く魔法の槍が突き刺さっている。
何だこの魔法?

「タッチャンお帰りなさい、ちょっと暴れたから大人しくさせといたよ」
「また随分ド派手な魔法使ったな、何だこの光る槍は?」
「これはね『ジャジメント』って魔法だよ」
「名前あるんだな」
「魔法名は大体あるよ、タッチャンも魔法使うときは魔法名だけは言った方がいいよ」
「えぇ、何でよ?」
「1人の時はいいんだけど誰かと一緒に戦う時は合図にもなるし、誤爆を防ぐようにだよ」
「・・・そうなのか、でも俺は魔法名なんて知らんよ」
「後で教えるよ、それでこいつどうするの?」

《話を聞け!そいつをどうやって治した!?》

「ウルセエな薬で治しただけだよ、ハク構わないな?」

《あぁ、やってくれ、コクア去らばだ》

《どう言うことだ?》

「3連閃!!」

『ドスンッ!』

首の同じ箇所に3回斬撃を加えて完全に断ち斬る。

「何したんですか?黒竜の首が斬れましたよ?その刀で斬ったんですか?何が起きたんですか?」
「俺が斬った、君はもう自由だ、村に帰るなら送って行こうか?」
「えぇ?小さい竜もいるし、エルフの人もいるし、黒竜あっさり死んじゃうし何がどうなってるんですか?」
「あぁそうだな、ちょっと説明しよう」

囚われていた彼女にこれまでの説明をする。
色々驚いてたが何とか理解してくれた。
そのついでに彼女から色々話も聞けた。
後邪魔だからコクアはマジックバッグに片付けた。

彼女の名前はユリア、歳は16才。
ここからおよそ2日くらいの村に住んでたらしい。
その村には数十年前に竜が現れて、数年おきに生け贄を要求してきたらしい。
運悪くユリアの両親が昨年亡くなり、無理矢理今回の生け贄にされてしまったらしい。

「これからユリアはどうする?」
「もう村には戻れませんし、戻りたく無いです、何処か他の村に行こうと思います」
「そうか、何かしたいことはあるのか?」
「・・・料理が好きでした」
「じゃあ私たちの街に来なよ、ミカエラが手伝い欲しいって言ってたもん」
「テルミーナさんの街ですか?」
「うん、ダンジョンの周りに街が出来てるんだけどまだまだ人手が足りないの、特に料理を専属でやってくれる人が欲しかったの、どうかな衣食住はこっちで面倒みるし、お給金ももちろんあるから来ない?いい街だよ」
「そんな好条件でいいんですか?」
「全然いいよ!こっちからお願いしたいんだから、中々料理専属の人材がいないのよ、お店は忙しくなる一方なのにね」
「ありがとうございます、でも街に行くのはちょっと後になってもいいですか?」
「別に良いけど何で?」
「一応生け贄はもう要らないって村のみんなに伝えたくて、仲の良かった人もいたし」
「そっか、そうだよねじゃあまずは村まで行く?」

《ならばそれは任せてくれ、ここにはコクアの溜め込んだ財宝もあるからそれを持って行こう》

「良いのか?」

《うむ、追放したとはいえ我が同胞が迷惑をかけた訳だからな、我が責任を持ってこの娘を送って行こう、竜である我が説明した方が納得いくだろうしな》

「・・・本当は?」

《・・・まぁ久々に旅をしたい気持ちもあるな、何せずっと山に引きこもっていたからな》

「・・・ユリアは怖くないか?」
「ハクさんは怖くないですよ、優しい目をしてますし、小さくて可愛いですから」
「こいつ元々でかいぞ、ちょっとハク戻ってみてくれ」

《分かった》

ハクの体が光だして、コクアよりもさらに大きくなる。

「・・・大きいですね」
「怖いか?もしキツいなら他の方法考えるぞ」
「いえ、怖くは無いです、あのたてがみとか触ってみたいです」

ハクが頭を地面に置いてたてがみをユリアに近づける。

《触ってみるがいい》

「いいんですか!」

そうしてハクの首に乗るとユリアがたてがみにしがみついた。

「最高です!凄いフワフワです!」

俺も触ってみる。
・・・・これいいな、これで服作りたいな。
布団も作りたいな・・・布団と枕作ったら気持ちいいだろうな。
ちょっと貰おうかな、ちょっとならいいよね。

「・・・なぁハク、このたてがみちょっと頂戴」

《な、なんだその目は、その獲物を見るような目はなんだ!》

「だってさわり心地最高!ねぇちょっとでいいから、布団と服を10くらい作れればいいから、ね、頂戴、お願い」

《それはちょっとじゃないだろう!・・・待て待て刀をしまえ!その赤い刀を出すな!何だその青い刀は!》

「大丈夫だよ、エリクシールもあるからすぐに元通りだよ、ちょっと動かないでね、手元が狂うと大変だから、ね」

《待ってくれ!ならば何故威圧をする、何だこの強大な威圧は!全く動けない!古竜の我が威圧で動けないだと!!・・・本当にたてがみだけなのか?本当にたてがみだけなのか?》

「大丈夫だよ、たてがみだけだから、威圧は動くと危ないからだよ、安心してね」

《全く安心出来ないぞ!怖い怖い怖いイヤァァァァァァァ~~~》

『チョキン!』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《怖かった、本当に怖かった》

ハクが泣いてる、ちょっと悪いことしたかな?
たてがみは根こそぎ刈って、エリクシールで元通りにしといた。
つーか古竜も泣くんだな、初めて知ったわ。

「大丈夫だったろ、怖がらせて悪かったよ、ごめんなハク・・・そう言えば何の話してたっけ?」
「確かユリアちゃんがハクを怖くないかって話じゃなかった?」
「そうだった、ユリアはハクのこと怖くないか?」
「ハクさんは怖くないですよ、むしろ可愛いと思います」
「ハク良かったじゃん、可愛いってよ」

《グスン、我は古竜なのだが、・・・・まぁ良い、それよりもユリアを送る街はどこなのだ?》

魔道具の地図を出して場所の説明をする。

「場所は覚えたか?」

《大丈夫だ、一応街の名前も教えてくれ》

「名前なんてあるのか?」
「うん、街が大きくなったから名前決めて欲しいって、国の人がこの前お願いに来たの、それでみんなで決めたよ、『迷宮都市タツキ』にしたの!」
「・・・却下~~~~!!!!」
「もう決まっちゃったよ」
「何で俺の名前なんだよ!他に色々あんだろうが!マジでもう決まったの?何でよ?」
「みんなで多数決したら全会一致で決まったからしょうがないじゃん、タッチャンが居ても変わらなかったよ」
「数の暴力だ!いじめだ!」

《まぁ街の名前は分かった、なるべく早く連れていこう》

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな感じで竜退治は終わった。
約束通りハンバーガーを作ってユリアに食べさせてあげたり、ハクがひたすら食べたりしてたがそれはまぁいいだろう。

そして飛空挺に戻り迷宮都市?に戻ろうとすると通信が入った。

『タツキ、テル聞こえる?』

「エリザちゃんどうしたの?」

『良かった、急いでダリス帝国の帝都まで来て頂戴』

「ダリス帝国の帝都?何があったんだ?」

『反乱軍が防衛線を突破して帝都ダリスに攻めて来ているのよ、こっちはゲートの魔法で順次向かうからあなた達も早く向かって頂戴』

「おぉう忙しいな、了解です」

『じゃあダリスで会いましょう』

なんか色々忙しくなってきたな。
つーか防衛線が突破されちゃったのか。

「ヒスイ、帝都ダリスの場所は分かるか?」
【もちろんです、すぐに出発しますか?】
「頼むわ、あとマジで急ぎらしいからブーストも使ってくれ」
【かしこまりました、それではタツキ様、テルミーナ様座席にお座り下さい、出発します】
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