悪役令嬢の中身が私になった。

iBuKi

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第二十一話 これ、声に出さないと発動しないんですか…?

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 女神様とお話する為に教会へ行って、この世界の時を止めた状態でのいくらでも会話し放題の状態の中、能力も全部じゃない感じだったけど教えて貰ったり、お茶の話や、私やお父様達の名前を教えて貰ったり、仲良しの印的な略した名を呼ぶ事になったり――――
 そんな色んなことを詰め込んだ時間だったから?
 いや、その後の聖獣さまの犯罪じみた大根芝居ショーのせい?

 多分、全部だったかもしれないけれど。
 
 そういう訳で私は、女神様に教えて貰っていた“ステータスオープン”なる恥ずかしい呪文めいたやつを唱え、自分の能力を確認する事を忘れていた。

 ティナ様に言われたあの恥ずかしい文言。

 もっと別の言い方なかったの? ティナ様って日本のファンタジー小説に毒され過ぎてない?

 思う所は多々あるが、そう言われたのだからそうしなければ開けないのだろう。
 それよりも心の中でステータスオープンと言っても開けるのか開けないのかがとても気になる。
 もし心の中でも可能なら細かくチェック出来るけど、声に出さないとダメならば就寝前限定でのチェックになるだろう。うん。





 私は現在、就寝前の寝室にて、ユキとスノウと私だけでベッドの上に座っていた。

 両親へ就寝前の挨拶を済ませ、寝室まで付き添いのメイドも私がベッドに横になったのを確認して「おやすみなさいませ、お嬢様」と室内の照明を薄暗くして去っていったばかり。


 寝室の扉が静かに閉められた後、耳を澄ませメイドが私室から完全に立ち去るまで待ち、ベッド下に専用寝床を作られたユキとスノウに「私のベッドに上がって」と話して上がって貰ったのだった。


「女神様にね、自分の能力の詳細が知りたければ“ステータスオープン”と口にしなさいって、前に教会に女神様に会いにいった時に教えて貰ったの。」

『『ステータスオープン…?』』

 二匹とも何それ知らないという風に仲良くハモった後、コテっと頭を傾げた。
 その姿に思考が「か、かわ…!」と暴走しそうになったが、今はそれどこじゃないのである。
 一度可愛いと愛でたら最後、少しで済む訳がない。
 モフモフして満足したら、この恥ずかしい言葉を口にするのを忘れて寝てしまうかもしれない。
 煩悩より優先するものは「ステータスオープン」なのだ。

「女神様がそう口にすれば私のステータス…えーっと能力欄っていうのかな? そんな感じのが可視化されて確認できるんですって。」

『ほう、そんな便利な魔法があったとは。己の能力値など気にした事はあまりなかったが、いい機会だから見てみて良いな。』
『ふーん…その言葉、必ず口にしなきゃダメ?』

「それなのよね…口にしないと見れないのか、それとも心の中で口にしても見れるのか。口にしなきゃいけないとしたら、小声でもいいのか。」

『僕、そんなの口にするの何か恥ずかしいんだけど。魔法を展開する時のダサい詠唱文言が嫌でたまらないから無詠唱出来るように頑張ったし』

「えっ、魔法ってダサい詠唱しないと発動しないの?」
 スノウじゃないけれど、私も正直嫌である。

『んー…たぶん。人間はそのダサい詠唱を唱えてから発動させてた思う。僕は嫌でたまらなくて女神様に特訓して貰ったんだ。無詠唱を習得したくて。』

「………私も女神様に特訓して貰えるかな?」

『リティシアなら特訓して貰えるよ、何てったって愛しい子だもの!』

「ホント? 助かったぁ…ステータスオープンでもちょっと嫌なのに、恥ずかしい詠唱を言わなきゃ魔法が発動しないなんて、内容によるけど凄く嫌だもの。」

『女神が面白がって、リティシアに言わせる為に特訓しないってならなければ…な?』
 ユキの言葉にスノウが『ああー、ありえそう。』と同意する。

「……女神様に余計なアドバイスしちゃだめだよ? ユキもスノウも。」
 私はスンとなりつつ、しっかりと二匹に言わないよう約束させた。


「まずは心の中で口にしてみるよ!」
 リティシアは気合いをいれる。

( ステータスオープン…)

「…発動しないね。」
 シンとしてしまった室内でリティシアがぽつりと零す。

『……』
 スノウは酸っぱい物を飲みこんだような微妙な顔をしている気がした。
 表情はちょっとわかりづらいけど、なんとなくそんな空気が漂っている。


( ステータスオープン!)

 これは口にしないとダメな方だったか…
 リティシアはそんな気がしていたけれど、でも一縷の望みは持っていた。
 ―――が、ダメなら、ステータス見たいなら口にするしかない。


 ゴクリと喉を鳴らし、リティシアは口を開いた。

「ステータスオープン!」

 リティシアの顔は真っ赤である。

「嘘でしょう…! ステータス出てこないよ!?」
 リティシアの勇気を返して欲しい。

 もうステータス見なくてもいいかなー…なんて。
 女神様にまた訊きに行って、口にしても発動しなかったってクレームいれよう。

『もう一回言ってみたら? 今のちょっと声が小さかったかも。』

 ……本当に?

 リティシアはもう一度覚悟を決めなければならないようだ。
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