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第二章 《最凶の天空迷宮編》

第五十四話 虚像の敵?

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《エラン視点》

「ウッズ!」



 憎き相手を見つけた僕は、声を上げる。



「リーダーがこの場所にいるの?」

「うん。ちょっとの間クレアととーめちゃんのこと頼んだよ!」



 エナにクレアととーめちゃんを預けるや否や、スキル《超跳躍ハイ・ジャンプ》と《飛行フライト》を起動。

 数百メートル先の崖っぷちで横たわるウッズめがけて、一直線に滑空する。



(ったく……こっちはクレアのことで忙しいのに、よりによって先にオマケの方が見つかるとはね)



 手っ取り早く助けて、嫌味を言われる前に帰ればいいや。

 一瞬で詰まる彼我の距離。



 情けないリーダーの元までカッ飛んでいった僕は、素早くウッズとモンスターとの間に割り込む。

 そして、スキル《衝撃拳フル・インパクト》を起動した。



 ザッと地面を踏み込み、正拳突きを放つ。

 拳から放たれた衝撃波は、水の不死鳥を容易く吹き飛ばした。



「ば……かな!?」



 後ろで、倒れているウッズが驚きの声を上げる。



(驚いてるな? つい半日前に追放した奴に、いきなり登場されて助けられるなんて、屈辱的だろ? 驚いたろ? 悔しいだろ)



 おっといけない。

 自分の中のブラックエランが出てしまうところだった。



「何をそんなに驚いてるんだい?」

「ど、どうしてテメェがここに?」

「え? 散歩だけど」

「ば、バカにするな! エランのくせに!」

「えぇ……」



 理不尽だなこの野郎。まあ、バカにしたのは事実だけど。

 心の中でそう付け加える。



「それよりテメェ、油断してんじゃねぇぞ!」

「え?」

「ソイツは何度でも蘇る不死鳥なんだぞ!」

「ご高説をどーも」



 まったく。

 ちゃっかりアドバイスをくれるいい先輩風になってるけど、根は真っ黒だってわかってるからな。



 悟られないように歯を食いしばる。

 と、消し飛ばしたはずの水滴がぐるりと輪を描きながら集まりだした。



 集まった水滴は再び水の不死鳥を象り、襲いかかってくる。



(あー、本当に攻撃が効かないみたいだ)



 この程度の脆さなら、仮にもウチのパーティの頭を張っていたウッズが倒せないはずもない。

 なのに勝利していないということは、殆どの攻撃が効かないと思っておいて良いだろう。



「厄介だな!」



 スキル《積層土壁ラミネート・グランドウォール》で、土壁を展開。

 襲いかかってきた水の不死鳥を隔離する。



 行く手を阻まれ、動きが鈍った隙に《サーチ》を起動し、水の不死鳥を調べる。

 弱点は実際にステータスを見て確認する。

 基本中の基本だ。



 だが。



「なっ!?」



 《サーチ》を起動した僕は、思わず驚いてしまった。



 確かに水の不死鳥に焦点を合わせているはず。

 だというのに。



 まるでそこには誰もいないとでも言うかのごとく、ステータスが全く表示されなかったのだ。
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