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第二章 《最凶の天空迷宮編》

第六十七話 明かされる真相3

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『《報復リタリエ―ション》をクレアの亡骸に付与したものの、復讐上限を解放するには、それ相応の条件を要した。一つ、対象を崩壊させるためのエネルギーの蓄積に、それ相応の時間を必要とすること。二つ、エネルギーを蓄積するには、復讐心を生んだ場所――クレアが死んだ場所で蓄えるのが不可欠であること。だから、俺は人格の変わった状態で蘇ったクレアを、亡くなった場所――第三迷宮サード・ダンジョン《トリアース》89階層のドーム内に放置した。余計なことをしないよう《睡眠スリープ》のスキルをかけて眠らせ、強力なモンスターに襲われないよう《気配消去ヘイト・イレイス》や《幻影イリュージョン》などの隠密系スキルをかけて、な』

「それで……クレアは、一人で最下層にいたのか」

『そういうことだ。十分な時間を掛けてパワーを貯め、ダンジョンの崩壊を可能にした後、隠密系スキルを解除。お前がちょうどその場所に着くタイミングに合わせて、スライムにクレアを襲わせた。お前が、クレアを助けたいと思うようにな』

「ちょっ……じゃあ、あのラッキースケベは意図的に起こしたの!?」



 流石にそれは、ごちそうさ……いや、けしからん。

 シスコンだからって、スライムのネバネバで妹(ただし別人格)を苦しませるなんて。

 いや、そのことも十分問題だが、それよりももっと問い詰めなければいけないことがある。



「待てよ。つまり、僕がクレアと接触することも、この場に連れてくることも……全て最初から仕組まれてたってこと?」

『察しが良いな。その通りだ。俺はクレアを第三迷宮サード・ダンジョンの最下層に放置した後、第一迷宮ファースト・ダンジョンへ一人向かった。事前にできる限りこの天空迷宮について調べ、復讐の場はここが最適だと踏んだからだ。全てのダンジョンの起源オリジンたるここは、他のダンジョンに比べ満ちているエネルギーが多い。事を起こせば、クレアの体内に蓄積したエネルギーにダンジョンの豊富なエネルギーを上乗せして、規模がより大きくなる』

「なんだって……?」



 一杯食わされた。

 確かに、この男は前にも第一迷宮ファースト・ダンジョン《モノキュリー》には、エネルギーが多く満ちていると言っていた。



 だが、それはあくまでクレアの身体を治すのに効率がいいから、という名目だった。

 言いくるめられたことに他ならない、それを理解する。



『それにだ。第一迷宮ファースト・ダンジョンには虚像空間があって、一度入ったら誰にも会わないまま出られないということがわかっていた。つまり、仮に誰かが俺の計画に気付いたとしても、俺が復讐を始めるそのときまで俺の姿を見つけることは絶対に出来ない』

「より計画を盤石にするため、単身最凶と唄われる迷宮に踏み込んだ、と?」

『ああ』



 こいつはこいつで、狂った覚悟の持ち主だな。

 そう思わずにはいられなかった。



「……一つ、聞きたいことがある」

『なんだ』

「お前は、僕がクレアを連れてここにくるよう仕向けたんだよね?」

『その通りだが、それが?』

「外の世界に出たあと、クレアが苦しんだのはなぜ? 苦しむよう呪い系のスキルを付与した……とも考えられないし」



 仮にもシスコン(笑)であるこの男が、事実上別人とはいえ苦しませるような呪いをかけるか?

 それに、もし外の世界では生きられない呪いをかけたなら、このダンジョンに入った瞬間息を吹き返していないとおかしい。



『勘が鋭いな。別に呪いを掛けていたわけじゃない。どのみち、あの前後のタイミングでクレアの身体に限界が来ることはわかっていた。大量に貯蓄したエネルギーが、徐々に彼女の肉体を蝕んでいて、お前がクレアを外に連れ出した辺りのタイミングで一定の閾値を超えたんだ』



 要するに、あの症状はなるべくしてなったということ。

 そして――今も、クレアの身体に溜まった大量のエネルギーが、内側から彼女の身体を蝕んでいると言うこと。



「クレア!」



 僕は、エナが背負ったクレアを見る。

 顔色はすでに真っ青。

 正直、もう彼女の身体は保たない……そんな雰囲気。



『クレアも相当耐えているな。そろそろ楽にしてやらねば……』

「シスコンのくせに、やってることは鬼畜だな、あんた」

『否定はしない。だが、これは俺の復讐であると同時に、クレア自身の復讐でもあるんだ。殺されたのは、他の誰でもない、クレア自身なんだから』

「くっ」



 言っていることは理解できる。

 だが……正しいとは言えない。



『さて……話も済んだことだし、奏でようか。俺の復讐の序奏曲プレリュードを』



 両手を広げ、報復者リタリエイターは高らかに宣言した。

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