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第二章 《最凶の天空迷宮編》
第六十九話 決戦。
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お前なんかの好きにはさせない。
ここまで横暴を貫かれて、黙っていることなどできようはずもない。
「エナ、《飛行》のスキルは持ってる?」
「え? いいえ、持ってないわ。でも、この状況の中で自分の身を守ることくらいなら、できる」
「そうか」
本人がそう言うなら、信じることにしよう。
今までの戦いに一歩遅れて付いてきているとはいえ、仮にも《緑青の剣》のエースだ。
この程度の危機、自分でなんとか乗り越えてみせるだろう。
少なくとも、僕の知っているエナは大波とかダンジョンの崩壊に巻き込まれて命を落とすほど、ヤワじゃない。
「スキル《飛行》!」
僕は、空中へと飛び上がり、大波の直撃を難なく躱す。
「エナは……」
眼下を見ると、エナは見知らぬスキルを唱えているところだった。
「スキル《滑走》」
エナは、背中にとーめちゃんを侍らせたまま、押し寄せてくる波の上に立つ。
そして、轟々とうねりを上げる大波の上を滑り始めた。
重心を傾け、右へ左へ、波に乗って器用に移動するエナ。
(なるほど。《滑走》は、その名の通り地面や水の上を高速移動することのできるスキルみたいだ……便利だな、欲しい)
思わず、《交換》を持つ僕の好奇心が疼いてしまうが、ここで《滑走》を獲ってしまうとエナは波に呑まれてしまうので、グッと堪える。
生き残ることが出来たら、是非僕の持つスキルと交換してもらえないか交渉してみよう、うん。
とにかく今は、やるべきことをやらねば。
「ダメ元で聞くけど……復讐をやめる気はないの?」
『愚問だな。ダメ元で聞いているのなら、お前もよくわかっているんだろう?』
「そうだな」
同じ《飛行》のスキルを持っているのか、空中でホバリングしながら、報復者は不敵に笑う。
「なら、力尽くでお前を止める!」
空中を蹴り、一直線に報復者の懐に飛び込む。
この状況を打開する方法は――。
一つ、報復者を、完全に抹消すること。
ダンジョンを崩壊させているのが、彼の《報復》というスキルであれば、術者を殺めればこの崩壊も止まる。
実際にこの崩壊をおこしている中心はクレアだが、それはあくまで《報復》のスキルを付与されているから。
彼女に《報復》のユニークスキルがないことは、《サーチ》で確認済みである。
そしてもう一つの方法は――上手くいく可能性こそ低いが――
それを思い浮かべようとした瞬間、肉薄する僕にカウンターをしかけるように、報復者が動いた。
『《氷柱弾》―速射』
(っ!? 派生技か!?)
僕は相手の指先に氷柱が生まれる前に回避行動をとった。
空中で身を捻り、大きく右へ重心を逸らす。
が、次の瞬間には僕の頬を鋭い冷たさが掠めていた。
(なっ!)
驚いて、頬を掠め去った攻撃を目で追うが、とても追いつけない。
僕の視線が横を向く頃には、攻撃は遙か後方に過ぎ去っていた。
氷柱の弾丸が生まれるより前に、回避行動をとったのに、瞬きをする瞬間にはもう僕の方まで攻撃が飛んできていた。
速射……弾速を急激に上げる派生技だろう。
厄介極まりない。
「くっ!」
空中で体勢を整え、人差し指と親指を直角に伸ばして、銃のような形を作る。
間髪入れず、意趣返しとばかりに攻撃した。
「《火炎弾》―三点発射ッ!」
刹那、指先から炎の弾丸が三連続で飛ぶ。
相手が氷の弾丸なら、こっちは炎の弾丸だ。
高熱を圧縮した三発の弾丸が、空気を裂いて報復者へと肉薄する。
ここまで横暴を貫かれて、黙っていることなどできようはずもない。
「エナ、《飛行》のスキルは持ってる?」
「え? いいえ、持ってないわ。でも、この状況の中で自分の身を守ることくらいなら、できる」
「そうか」
本人がそう言うなら、信じることにしよう。
今までの戦いに一歩遅れて付いてきているとはいえ、仮にも《緑青の剣》のエースだ。
この程度の危機、自分でなんとか乗り越えてみせるだろう。
少なくとも、僕の知っているエナは大波とかダンジョンの崩壊に巻き込まれて命を落とすほど、ヤワじゃない。
「スキル《飛行》!」
僕は、空中へと飛び上がり、大波の直撃を難なく躱す。
「エナは……」
眼下を見ると、エナは見知らぬスキルを唱えているところだった。
「スキル《滑走》」
エナは、背中にとーめちゃんを侍らせたまま、押し寄せてくる波の上に立つ。
そして、轟々とうねりを上げる大波の上を滑り始めた。
重心を傾け、右へ左へ、波に乗って器用に移動するエナ。
(なるほど。《滑走》は、その名の通り地面や水の上を高速移動することのできるスキルみたいだ……便利だな、欲しい)
思わず、《交換》を持つ僕の好奇心が疼いてしまうが、ここで《滑走》を獲ってしまうとエナは波に呑まれてしまうので、グッと堪える。
生き残ることが出来たら、是非僕の持つスキルと交換してもらえないか交渉してみよう、うん。
とにかく今は、やるべきことをやらねば。
「ダメ元で聞くけど……復讐をやめる気はないの?」
『愚問だな。ダメ元で聞いているのなら、お前もよくわかっているんだろう?』
「そうだな」
同じ《飛行》のスキルを持っているのか、空中でホバリングしながら、報復者は不敵に笑う。
「なら、力尽くでお前を止める!」
空中を蹴り、一直線に報復者の懐に飛び込む。
この状況を打開する方法は――。
一つ、報復者を、完全に抹消すること。
ダンジョンを崩壊させているのが、彼の《報復》というスキルであれば、術者を殺めればこの崩壊も止まる。
実際にこの崩壊をおこしている中心はクレアだが、それはあくまで《報復》のスキルを付与されているから。
彼女に《報復》のユニークスキルがないことは、《サーチ》で確認済みである。
そしてもう一つの方法は――上手くいく可能性こそ低いが――
それを思い浮かべようとした瞬間、肉薄する僕にカウンターをしかけるように、報復者が動いた。
『《氷柱弾》―速射』
(っ!? 派生技か!?)
僕は相手の指先に氷柱が生まれる前に回避行動をとった。
空中で身を捻り、大きく右へ重心を逸らす。
が、次の瞬間には僕の頬を鋭い冷たさが掠めていた。
(なっ!)
驚いて、頬を掠め去った攻撃を目で追うが、とても追いつけない。
僕の視線が横を向く頃には、攻撃は遙か後方に過ぎ去っていた。
氷柱の弾丸が生まれるより前に、回避行動をとったのに、瞬きをする瞬間にはもう僕の方まで攻撃が飛んできていた。
速射……弾速を急激に上げる派生技だろう。
厄介極まりない。
「くっ!」
空中で体勢を整え、人差し指と親指を直角に伸ばして、銃のような形を作る。
間髪入れず、意趣返しとばかりに攻撃した。
「《火炎弾》―三点発射ッ!」
刹那、指先から炎の弾丸が三連続で飛ぶ。
相手が氷の弾丸なら、こっちは炎の弾丸だ。
高熱を圧縮した三発の弾丸が、空気を裂いて報復者へと肉薄する。
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