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健全な牽制だから許して
しおりを挟むいくらフリアに近づけないとはいえ、やはり公爵家とのツテやあわよくばフリアに見そめられたいと近づく輩はそれなりに居る。
危険な男だと分かっていても令嬢達があの双子に群がるように、フリアにもまた危険を冒しても近寄る男達は居るのだ。
それほどディザスターは蠱惑的だった。
(俺だって負けてないよフリア)
心の中であの双子と張り合ってみるも、口に出すとフリアに「兄様達の方がかっこいいわよ」と言われるのが嫌で口には出すのはやめておく。
魔法の授業の為に席に着いた俺達はやっぱり注目されてて、興味がないからか全く気付いていない様子のフリアの椅子にちょっとだけ自分の椅子を近づけた。
彼女の兄達ならばここでその白い首筋に唇でも寄せるのだろうが生憎俺にその度胸は無い。
開いた教科書を覗き込んで「フリア、分かる?」と耳元近くで尋ねるとピクリと反応してから俺の口を掌で塞いで押して離すと「近い」と頬を染めて睨む。
その様子を見て欲の混じる目でフリアに釘付けになる男達を今度はドン底に落とす為にぺろりと掌を舐めて慌てて離したフリアに笑うと、柔らかそうな頬にちゅっと口付けた。
教師までが顔を赤くして目を見開いていて、男達は顔を青くさせて落ち込んでいる。
「きゃあ」と令嬢たちの控えめな黄色い声が聞こえて気分がいい。
「なにするの、ソル」
「子供の頃からしてるだろう」
「そうだけど、もう子供じゃないのよ」
「でも拒まなかったでしょ」
「アンタが嫌いになったら弾くわよ」
「……気をつけるよ」
フリアに軽く睨まれて慌ててそう言うと、「子犬みたいね」って笑われて恥ずかしくなってフリアから顔を逸らした。
それでも特にソルから距離を取らないのは、幼い頃からの習慣なのかなんとも無い表情で魔法学の教科書を開いている。
本格的に授業が始まると流石、ディザスターと言うべきかつまらなさそうに淡々とこなす彼女の魔法は群を抜いている。
弱い者に優しいフリアに、おずおずと近づいて来た気弱そうな令嬢をきっかけに自分達を囲みコツを教えてくれと騒ぎ立てる皆。
ツンとした雰囲気だが、キッチリと教えてやるフリアのさりげなく優しい所が好きだなぁと実感しながらも段々と彼女の側に寄ってくる令息をフリアに気付かれないように睨みつける。
「フリア、それって教科書にも書いてなかった?」
「え?そうだったかしら?」
フリアが下を向いた隙に、笑顔のまま男達に殺気を飛ばすと「ひっ」と情けない顔をして「あ、ありがとうございました!」と自分の席に戻って行くのを確認して周りの他の者達にも微笑んだ。
頬を染めながら「邪魔をしてすみませんっ」と戻って行く令嬢を筆頭に皆気を利かせて戻ってくれたので無事授業を進められそうだと先生に視線を送ると、怯えたようなけれどホッとしたような複雑な表情でつぎの工程に移った。
「ソル」
「なに?」
「時々、貴方から兄様達のような雰囲気を感じるの」
「それはどう言う意味?」
「私にも分からないけど……」
「君の兄達に負けないくらいフリアを愛してるって事かな?」
「冗談言ってないで、次のページ捲ってくれる?」
「ほんと、つれないね」
「私で練習しないで頂戴」
「??」
「ちゃんと好きな人を口説きなさいよ」
「……」
(鈍感なのか、態となのか……)
「次、私の番だから行くわね」
「あ……」
また意識して貰えなかったと溜息をついたのも束の間、アプローチにはあっさりスルーした癖に、先生に褒められると得意げに自分に向かって小さく手を振ったフリアに「好きだ」と口元だけで伝えた。
「あは、私もソル好きだよありがと!」
騒めいた教室と、特に変わった様子のないフリア。
(そういう好きじゃないんだよなぁ)
ー愛してるって言ったら、君はあっさり「ごめんね」って言うんだろう。
「まぁ、今はまだこのままでいっか」
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