王太子様、丁寧にお断りします!

abang

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誕生日なんてあったんですか?

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「あ、ありがとうフレイヤっっ!!!」

感動して涙を流すルディウスがこんなにも歓喜しているのには理由がある。



遡ること、数分前早朝。


「ふふん、フレイヤ。今日はなんの日だろうか?」

「……朝から不法侵入ですよルディ様」

「今日は何の日だとおもう?」

「言葉は通じていると思う?」




フレイヤのいつもと変わらない様子に「まさか」と思うルディウス。

今日は彼の誕生日なのだ。


パーティーの招待状もドレスも届いている筈だし、街中が祝ってくれている雰囲気に。


けれどフレイヤからの「おめでとう」を一番に聞きたくてこうして朝早くから不法侵にゅ……訪ねて来ているのだ。

なのにこの、「何の用ですか?」と言わんばかりの冷たい態度。

主役が居ない訳にはいかないじ、パーティーの準備もあるので与えられた時間はごく僅かだ。


それなのに、煩わしそうに「なんですか」と眉を顰めているフレイヤに焦る。


(無理矢理起こしたのがいけなかったか?)


もういっそ、今日は誕生日だから君から一番初めに「おめでとう」が聞きたいんだと伝えてしまおうか?


(いや、それだと言わせた感があるしな)


「ルディ様、今何時か知っていますか?」

「朝の四時」

「私の警備どうなってるの」

「顔パス」

「その顔凄く剥がしたい」

「怖いな」


そう言っているうちに、時計の針は進む。



「あ、あのフレイヤっ」

「なんですか」

「いや、それが」

「あ、そういえば私もルディ様に用がありました」

「用?」

「ええ」

「なに?」


言いたいことがある筈なのに、フレイヤがそう言うと優しく微笑みながら言われるがままにベッドサイドに腰掛けたルディウスの優しさにフレイヤは温かくなって、この人でよかったなと思う


が、全く表情には出さずにいつも通りの抑揚の少ない声で「ルディ様」と呼んだ。





「はい、フレイヤ」



「生まれて来てくれてありがとうございます。お誕生日おめでとう」

「ーっ」

ふわりと香るフレイヤの香り、抱きしめられているのだとルディウスが気付いた時には小さな箱が彼の太ももにぽんとフレイヤの手ごと乗せられる。


「指輪?」

「お守りです、小指につけておくらしいです」

「守りの祈りが込められているそうです」


「あ、ありがとうフレイヤっっ!!!」


と、冒頭に戻る訳だが。


「俺を案じてくれているんだねフレイヤ」

「ルディ様、弱いから」

「え」

「野垂れ死なないように」

「え」

「それ肌身離さず付けて置いてください」

「……」

そう言って何気なくを装ってそっぽを向くフレイヤの耳が赤くなっていることに気付いて顔が緩むのが隠しきれない。


「これは愛されてると思ってもいいかな」

「誤解」

「はいはい」

「でも、今日のパーティーは楽しみです」

「?」

「みんながルディ様を祝ってくれて、」

「フレイヤ……っ」

「美味しいお菓子が沢山並びますね」

「おい」



悪気ありません。という風な見慣れたフレイヤの表情からはもう甘ったるい雰囲気は無かったが、優しく握られた手だけで充分だった。


数時間後のパーティーで、父上に「おめでとうございますルディ様」と言うまでは……


「あはは、フレイヤ!ルディウスはそっちだよ」

「あれ?ルディ様ちょっといい感じに老けた?」

「フレイヤ、俺はこっちだ」

「ごめんなさい。後ろ姿がとても似ていたので」



「あなた、本当に私をハラハラさせないで頂戴」

「ごめんティリー、てっきりルディ様が超絶ダンディイケメンになったかとぬか喜びしちゃったわ」

「その言葉どこで覚えたアンタ」


「フレイヤの誕生日な王宮で盛大にやろう!」

「父上ちょろい」

「まぁルディ様はイケメンではあるけれど」

「フレイヤの為にマカロンタワーを用意しろ」

「殿下ちょろい」



そうこう言っている間にティリアの手を引いて王妃と話始めるフレイヤの自由さに振り回されるルディウスだったが、


「やあ、フレイヤ嬢!」

「まぁ伯爵。本日はお会い出来て光栄ですわ。ルディ様もきっと喜んでいるでしょう」

と、すっかり婚約者として板についた挨拶を交わすフレイヤにデレデレと顔を緩めて国王に足を踏まれるまで数秒……


「い、イタッ!」

「顔緩みすぎだ」

「母上のおはようのキスで顔緩むくせに」

「おはようのキスしたことない癖に」

「あれ?俺って今日誕生日だよね?」




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