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64.他国からの干渉
しおりを挟む東部同盟国のパスカル国はそう遠い訳でもない。
国の隔たりがない休戦地区であるエイワ森林地区を抜ければすぐにあるそれなりに栄えた国だ。
金はあるが軍事力は無く、我が国と同盟を結ぶ事で他国からの侵略を抑止し平和を保ってきた。それが今になって此方に手を出してくる理由が見つからずレイヴンは悩んでいる。
エリスの話では犯人達は訓練された軍人というよりは傭兵のような話し言葉であったらしい。
それにも関わらず国の紋章の入った武器を持っていたことを考えると金で雇われたということは間違いないだろう。
王族の中でもか弱い女性が狙われるのはよくあることだ。
欲しかったのは金かほかの何かか、人質を取る理由が知りたいのだ。
「レイヴン、パスカルから部下が戻ったよ」
「何か手がかりがあったか?」
「手がかりと言うよりは気になる事があるな」
「話してくれ」
まずはパスカルの首都と国境に一部の国以外が貧窮していること。
まるでハリボテのように豪華な城の中身はどうやらかなり使用人が少ないらしい。
王族達の贅沢ぶりは相変わらずでその度に都市がひとつ貧しくなり続けているらしい。
「金が底をつきたと?」
「と、いうよりはあまりにも欲深い現王の悪政で国が王族の個人的な財布のような扱いになっている感じだね。上手く統治すれば豊かな国だ」
「我々も舐められたものだな」
「同盟国の怖い顔なんて見ないからでしょ、浅いね」
「陛下に報告の後こちらで対処する予定だが」
「もちろんヴィルヘルムは動くよ、俺は怒ってるからな」
そうする内に森林を囲む各国、大陸に幾つかある休戦地区に兵を待機させている国の旗を持たない者達が居ると各周辺国へ警告が届く。
「「!」」
顔を見合わせて互いに少し考え込んだあと、やはりパスカルではないかという結果に繋がる。
「まさか、なかなか来ない王太子妃を乗せた仲間の馬車を迎えに来たのか?」
「ああ、もし此方と鉢合わせても休戦地区ならば手出しできないだろうと言う事だろうね」
王族が直接来るような事こそないだろうが、行ってみる価値はある。
馬車だと少しかかるが馬であればもっと早く到着する。
「兵を出す」
「まさか、乗り込む気?」
「狙いはセイランか母上だろう。許し難い」
「丁度俺も怒りが鎮まらなくて困ってたとこ」
陛下への許可を取りに行く途中、すれ違うように歩いて来たのは引退したエリスの父であるクロフォード伯爵とケールだった。
「レイヴン殿下、ジョルジオ閣下、お久しぶりですな」
「相変わらず年齢不詳、見目麗しいですね伯爵殿」
「義父様、水くさいなぁジョルジュとお呼び下さい」
「団長、まだエリスはクロフォードです」
「ふふん」
(エリスは妻になってくれると言ったんだからな)
「何か含みがありますね」
「はは!娘はもう任せたも同然、ジョルジオ殿、殿下今回は感謝していますよ」
だが何故、二人が謁見の間から出て来たのかひとつ憶測が浮かぶ。
「伯爵、休戦地区のことを知ったのですね?」
「ええ……」
伯爵とケールの目付きが変わる。
きっと溺愛するエリスのことでかなり頭に来ていたのだろう。
「密やかにクロフォードで処理すると陛下に申し上げました」
「もちろん許可も頂いております。身勝手をお許し下さい団長」
「「ふっ」」
「「??」」
「俺たちも同じ事を考えていたんだ、ケール」
「陛下は渋るだろうが此方も混ぜてもらおうか、ジョルジオ?」
「そうだね」
クロフォード伯爵家は有能な騎士の家系。
他の高貴な家門を遥かに引き離してヴィルヘルムの次に軍事力を誇る、所謂王族の他に一番力ある家門なのだ。
「心強いなぁ」なんて緩やかに言うジョルジオの目は全く笑っていない。
無口だが、レイヴンとて同じだ。
それに気付いたケールは「休戦地区ですからね」と念押ししまたあとで会おうと言う二人と離れた。
後に同盟国であるはずのパスカルへの怒りを静かに表した国王陛下によって許可が下り、王太子、ヴィルヘルム公爵家、クロフォード伯爵家の連合軍は完成したが休戦地区に居るパスカル国の者達が知ることは無い。
「一日もかからないな」
「ウチは二手に分かれて、近くで待機するよ」
「取り逃さぬよう父がエイワの周囲に幾つかに分けた兵を待機させます」
「空の馬車を、おとりに手前で停めて出方を見る」
エイワ森林地区に入って一同は驚愕した。
「あんなにバカ丸出しの王族が居るのか」
「余程自信があるのか?」
「休戦地区とはいえ丸腰でウロウロしていますよ、団長」
「こっそり討っちゃう?」
「だめです」
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