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ダークエルフの島
第3話 狂乱の暴食竜?
ホレック公国の国境の村に入り、宿を見つけて泊まることにした。
珍しくバルドーさんも普通に宿に入り、部屋は違うが同じ階に泊まることになった。宿でみんな揃って食事をする。
女性陣には目立たない服装にするようにお願いしたけど、綺麗だから目立っている気がする。
「ちょっと味が濃いです。塩が豊富にあるからですかね。魚も燻製とは違います」
ジジは相変わらず料理を研究して楽しそうだ。
「これは干物だね。まだ海から距離があり塩を多めにしのだろう。だから味が濃いというか、塩辛い感じなんだね」
俺は説明しながら料理を楽しむ。前にダンジョンで魚を確保した時は、普通に焼いたり燻製にしたりして食べた。その時は干物を作っていない。
リディアはすでに自分の分を食べてしまい、アンナから分けて貰っている。
アンナにも餌付けされている感じだぁ。
バルドーさんは従業員に追加注文している。従業員がテーブルから離れると、小さな声で話しかけてきた。
「我々を監視している者がいるようです」
それは俺も気付いていた。門を通過してから宿までずっと後を追うようについてきたし、今も離れたテーブルで食事しながら二人でこちらを窺っている。
「なぜですかね?」
バルドーさんに監視されている理由を聞いてみた。
「別に何というわけでないでしょう。初めて見る商人で、商人としては珍しい一行ですから。念のために様子を窺っているのでしょう」
たしかに成人して間もない商人が執事とメイド二名を連れていて、A級冒険者が護衛している。明らかに普通ではない商人一行である。
「なら、気にする必要はありませんよね?」
「はい、ですが騒ぎは起こさないようにしてください」
それはリディアぐらいじゃないか?
ジジやアンナは騒ぎを自分から起こすことはないはずだし、俺も基本的に自分から騒ぎを起こした覚えはない。
そんなことを考えていると、騒ぎが向こうからやってきた。少し酔っぱらった冒険者風の男三人がこちらに向かってくる。
「よお、坊ちゃん、綺麗な女の子を独り占めはいけないなぁ」
今回は少し宿の質を落としたので、面倒な連中もいるようだ。
「食事の邪魔をするんじゃない!」
リディアは俺達を守るためではなく、食事を邪魔されたことを怒っているようだ。
「へへへ、お姉ちゃんが俺達の相手をしてくれるのか?」
今のリディアは冒険者装備を付けていないが、素手でもあのリディアである。彼らの運命は決まったようなものだ。
「リディアさん、A級冒険者のあなたがここで暴れるのは遠慮してください。やるなら外でお願いします」
さすがバルドーさん!
注意するように話しながら、A級冒険者だと相手に分からせている。
「A級? そ、そんなハッタリをするんじゃねぇ!」
A級冒険者と聞いて相手は動揺したみたいだが、リディアが普通の格好だから彼らは信じられないのだろう。
監視者の一人が彼らに近づいて話しかけた。
「おい、止めておけ! 彼女は狂乱の暴食竜と呼ばれる有名なA級冒険者だ。食事中に彼女に絡むと命を落とすぞ!」
え~と、なにその二つ名!
「きょ、狂乱の暴食竜!!」
絡んできた冒険者たちは顔色が悪くなった。そして、すぐに逃げるように自分達のテーブルに戻っていった。
そして助けてくれた監視が話しかけてきた。
「我々はこの領地の役人です。彼女の事は知っていますが、珍しく同行者がいるので驚いていました。
あなた達が彼女を護衛で雇っていることは確認済みです。できれば先程のような場合は彼女を止めるか、穏便に済ませてはもらえないでしょうか?」
もしかして、監視されたのはリディアのせいなのぉ~?
俺はバルドーさんに目を向けると、バルドーさんも困った顔をしている。
「リディアさん、久しぶりに私と会う前に、何か問題を起こしていたのですか?」
「お、俺は悪くない! お前と別れてから何かと絡まれることが多くて困ったのは俺の方だ! たまに食事をするために町に来ると、さっきのような馬鹿が絡んでくる。だから仕方なく叩きのめしただけで、俺は捕まったこともないぞ!」
「私もそのように聞いています。彼女が問題を起こしている訳ではないと報告はあるのですが、いくつかの町で彼女が絡む騒ぎが起きているので、念のために警戒していたのです。
今の事も彼女が悪いわけではないと分かっています。ですが、もしあなた達が雇い主なら、騒動が起きないようして頂けないでしょうか?」
うん、何となくリディアの行動が目に浮かぶ。
リディアは腹が減ると町や村に食事をしに立ち寄ったんだろう。しかし、その度に絡まれて、相手を叩きのめす。特に食事中に絡んだ相手は悲惨な目に遭ったのだろう。そして狂乱の暴食竜という二つ名が付けられたのでは……。
「私も穏便に済まそうと、A級冒険者だと彼らにそれとなく教えたのですが……。しかし相手が信じないとなると実力で排除するしかないと思いますが?」
バルドーさんが説明すると、お役人さんも頷いている。テーブルに戻った冒険者たちは話を聞いていたようで、逃げるように立ち上がると食堂から出ていった。
「それはそうですね……でしたらA級冒険者だけでなく狂乱の暴食竜とも伝えてみてください。そうすればこの辺で絡むものは居ないはずです。狂乱の暴食竜は赤毛の女性冒険者だと知られていますから」
「わかりました。親切に教えて頂いて助かります。我々も揉め事は望んでいませんので注意します」
バルドーさんがそう答えると、役人だと名乗った監視者は自分のテーブルに戻っていった。
「俺は悪くないんだ。バルドーやドロテアと別れてから、昔みたいに変な奴に絡まれるようになったんだ。でもバルドーのようにうまく対応できなくて、だから仕方なくあそこに戻っていたんだよ!」
たしかに可哀想ではある。ドラゴン種はマイペースな所があるから、人間社会では上手く馴染めないのかもしれないな。
根本的な性格を変えることは難しいな。ハルの事を考えると間違いないだろう。
「リディアさん可哀想……」
優しいジジはリディアに同情しているようだ。
でもこれからはみんなでフォローすれから大丈夫……だと思う。
それよりも目立たない作戦はすでに崩壊したとみて間違いない。
リディアをテイムしたからこれがずっと続くのかぁ……。
それに狂乱の暴食竜は誰が付けたのだろうか。よく揉めて暴れるから狂乱で、竜のように非常識な食欲を見て誰かが付けたのだろう。
まさか本当の竜だとは気付かれていないよな?
その後リディアから詳しく聞いてみた。
リディアはバルドーと別れてから最初は王都周辺で冒険者として活動していた。その頃はちょっとしたトラブルはあったものの、それなりに彼女を知っている冒険者もいたので、大きな問題はなかったようだ。
しかし、何年も経つにつれて彼女を知らない冒険者も増え、頻繁にトラブルが発生したことで居ずらくなり、あの森の拠点に引きこもることになったらしい。
ただ料理など全くできないリディアはちょくちょくと近隣の町や村に食事や食糧確保に訪れていたが、数回、もしくは初めて訪れると必ずトラブルが発生して、その度に訪問する町や村を変えていたらしい。
王国の町や村はもう数年前から訪問しておらず、最近ではホレック公国の町や村もそれなりに遠くまで行くようになっていたようだ。
リディアと一緒にホレック公国を旅することに一日目で不安になった。
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