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ダークエルフの島
第5話 夢破れたり!
目の前にはマッチョーズが並んでいる。
どう見てもボディビルダーの集まりにしか見えない。無駄のない筋肉に肌は浅黒く日焼けしており、汗でテカっているからだ。
「また性懲りもなく女を攫いにきたのか!? フンッ」
え~と、リディアと俺の組み合わせで、さすがにそんな風には見えないよね?
それに目の前には攫いたくなうような、ダイナマイトセクシーエロフは居ない。
「あのぉ、俺達は人攫いではありません。知り合いがいるか訪ねただけです」
「知り合いだとぅ! フンッ」
……なんで答えた後に、毎回違うポーズをするんだ?
「ああ、俺は昔エクスと一緒に旅をしたリディアだ。エクスは死んだと聞いたけど、俺があと知っているのはエクスの娘のエアルしかいない。エアルにリディアが来たと伝えてくれないか」
「フハハハハ、エクス様と一緒に旅をしただとぉ。フンッ、ホレックの連中はそのような愚かな嘘を平気で吐くのかぁ。フンッ、エクス様が昔旅に出られたと聞いて、そんな嘘をついているのであろう。フンッ、それがどれほど昔のことか知らないようだなぁ。フンッ」
こいつ話しながら四回もポージングを変えやがった。ハッキリ言って隙だらけじゃねえか!
俺としてはあまりオシリアイにはなりたくないな……。
「う~ん、エアルも死んだんなら仕方ないか。ご主人様どうします?」
リディアは相手のポージングはあまり気にせずに俺に尋ねてきた。
「勝手に祖母様を殺すな!」
先程の幼女が後ろから顔を出して抗議してきた。
んっ、リディアの事を知っているエアルは生きているのか?
そしてこの子供が孫なのか!
「お嬢ちゃん、だったらリディアが来たと伝えてくれないかな?」
俺は相手が子供なので、できるだけ優しく頼んだ。子供は心なしか頬を赤くして、目が泳いでいる。
「私は母上から、リディアと言う人族の話は聞いたことはないのじゃ!」
あれっ、そっくりさん? 双子? それに母上?
先程からポージングを極めているマッチョさんの左右に、同じ顔の幼女がもう一人現れた。話し方は少し違うが、双子にしか見えない。
「おっ、そういえばお前達エアルに似ているな。もしかしてエアルの子供と孫か?」
ちょいちょい、双子にそれは失礼じゃないかなぁ。
「母上様、祖母様、こいつらは危険です! フンッ、お下がりください! フンッ」
マッチョさん、母上とか祖母とかどういうことーーー!
も、もしかしてダークエルフって……。
「リ、リディア……ダークエルフの女性はあれで大人なのか?」
「ダーク? ああ、耳長族の事か。そうだぞ、正確には黒耳長族はこんな感じだ。ちなみに白耳長族は逆に男が小さいぞ」
……夢のエロフ設定がこれほど早く崩壊するとは。
「おい! フンッ、お前達だけで話をするんじゃない! フンッ」
マッチョ君が怒っている。しかし、そんなのはもうどうでもいいかな。
「なあ、あの最後に気合を入れて変な格好をするのも意味があるのか?」
先程からマッチョ君の動きに合わせて、他のマッチョーズもポージングをしている。ハッキリ言って鬱陶しい。
「あれか? あれは黒耳長族が警戒して相手を威嚇するときにする行動だな。エクスもよくやっていたなぁ」
そうかぁ、個人的には嫌いだが、種族特有の習慣や風習なら拒絶する訳にはいかないよなぁ。
「いい加減にするのじゃ! エクス様を知っているみたいに話すのは許せないのじゃ!」
黒耳長族の幼女……女性をよく見てみると、綺麗で整った顔立ちをしている。しかし、三頭身に近い、でこぼこのない体を見ると涙が滲んでくる。
か、彼女たちは悪くない! 勝手に俺が期待して思い込んでいただけだ……。
ただ我慢しようとすると、余計に涙が零れそうになる。
「お、お母さま、彼は悲しそうにしています。少し話を聞いてみましょう?」
先程頬を赤らめた幼女……黒耳長族の女性がこちらの話を聞こうと言ってくれた。あれで、こんなマッチョな子供がいるのかと感心してしまう。
「何を言い出すのじゃ! ホレックの者でないとしても、英雄エクス様の知っているという嘘は許せん。勇者と共に戦った私達の誇り高き祖先じゃぞ!」
「そうそう、俺も良く一緒に戦ったよぉ。あいつはいつも、「フンッ、この美しき筋肉を死ぬ前によく見ておけぇ! フンッ」と言っていたよなぁ」
リディアが楽しそうにポージングを交えて話すと、黒耳長族の全員が驚いた表情を見せていた。
「なぜその言葉と秘伝の威嚇姿を知っているのだ?」
「んっ、よく見せられたし、真似したらエクスが細かく教えてくれたぞ?」
「う、嘘じゃ! それならエクス様の言い伝えに、教えた相手の名前が残っているはずじゃ! リディアという名前は聞いたことがない!」
「んっ、そういえばエクスに最後に会ったのは、リディアと名乗る前だったなぁ。あまり名乗りたくないが、その当時はドラ美と名乗っていたぞ。ハル姉もエクスのことはよく知っているぞ!」
「ドラ美……様⁉」
「ハル様の名前も……⁉」
驚いて混乱している。
「何だったら、本当の姿を見せようか?」
おおっ、改めて変身する過程を最初から最後まで見られるのか!
リディアは俺の教えたポージングをしてから、ドラ美ちゃんに変身した。変身を始めると最初はそのまま服が引き延ばされ、破れる寸前に魔道具に収納された。服が無くなった時はほとんどドラゴン姿に代わっていた。
自分の作った魔道具の完成度が高いな。ラッキースケベはもう二度と無いだろう……。
それよりマッチョーズはドラ美ちゃんの姿を見て、怯えるように女性たちの後ろに隠れるように後ろに下がっていた。
おいおい、幼女の後ろに隠れるマッチョーズはあまりにも情けないぞ!
そして幼女姉妹……ゲフン、女性たちが土下座して謝罪を始める。
「ド、ドラ美様とは知らず失礼なことをして申し訳ありません!」
うん、どう見ても幼女の土下座に見える。さすがに心が痛むなぁ。
リディアはドラゴン姿で変身ポーズをして人の姿に戻った。つい目を凝らしてその瞬間を見てしまい、変身する寸前に発した光に目がやられてしまった。
わ、分かっていたけど……。
ラッキースケベが起きることを期待したけど、儚い夢だったな……。
ファイアードラゴン姿のリディアを見たことで、その後はすんなりと話が進む。
「ドラ美様、母のエアルは体調を崩していまして、村で寝ておりますのじゃ」
そう言って村に案内するために前を歩くのは、黒耳長族の英雄エクスの娘であるエアルのそのまた娘のエリスである。そして双子姉妹のように仲良く横を歩くのはエリスの娘のエリカ、そして怯えるようにマッチョな体を小さくしているのが、エリカの息子のオクスである。
正直何が何だか良く分からない。名前も似ているが見た目も似ているのである。少し目を離すと、どちらがエリスでどちらがエリカなのか分からなくなる。
「え~と、他の仲間たちも一緒に大丈夫かな?」
他の皆は『どこでも自宅』で待機している。
「……ドラ美様、彼はドラ美様の従者でしょうか?」
エリスが俺の質問に答えることなく、リディアに尋ねた。
「おい、俺のご主人様に失礼なことを言わないでくれ! それに俺の名前はリディアだ、ドラゴンの姿に戻った時だけドラ美と呼んでもかまわない」
呼び方についてリディアと話し合って人の姿の時はリディアで、ドラゴンの姿の時はドラ美ちゃんと呼ぶことにしたのだ。一緒の名前だとリディアの正体がバレる可能性が高くなるのでそう決めたのだ。
「「ご主人様?」」
エリスとエリカは驚いている。
ただエリカは俺を見るたびに頬を赤めるのはなぜだろう……?
見た目幼女にそのような視線で見られるのはあまり嬉しくないな。夢のダークエルフだったら最高だったのに……。
リディアは俺の従魔になっていることを黒耳長族たちに自慢気に話した。エリスは信じられないと驚きの表情で俺を見つめ、エリカはさらに頬を赤くしてキラキラした瞳で俺を見つめてくる。
いやいや、俺の質問に答えてくれよ!
もう一度質問する。
「他の仲間たちも一緒に大丈夫かな?」
「大丈夫です!」
エリカが食い気味に即答してくれた。エリスはそんなエリカを驚いた表情で見つめている。
まあ、色々と気になるが敵対する雰囲気もないから大丈夫かな。
細かいことを気にするのも面倒なのでD研を開いてみんなを紹介しよう。
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