転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

文字サイズ
特大
153 / 296
ダークエルフの島

第17話 夢のドラゴンライダー

「ヒャッホーーーイ!」

俺はドラ美ちゃんの上で跳び跳ねて大声を上げていた。

自分で空を飛ぶのとは違い、ドラ美ちゃんに乗って空を飛ぶのは、なんか凄く強くなった気がする。

俺はドラゴンライダーにクラスチェンジしたぞぉーーー! 

もちろんそんなクラスチェンジなどしていないが、何となく舞い上がって心の中で叫んでいた。

「グギャァーーー!『ご主人様ぁ! 約束は守ってくださいよぉ!』」

ドラ美ちゃんが俺に念話で伝えてきた。

『大丈夫だよぉ。膝枕ぐらい喜んでぇーーー!』

ドラ美ちゃんに乗って移動すると話すと、ご褒美が欲しいとリディアから初膝枕を要求された。俺を乗せて飛ぶことを嫌がった訳ではなく、オークカツ貯金ができないことに不満を漏らしたから、交換条件として要求をのんだのである。

「マ、マッスル殿ぉ~、あ、暴れないでくださーい!」

ダガード子爵がドラ美ちゃんの背中にしがみついて涙目で訴えてきた。

ルームやD研の事はダガード子爵達にはまだ秘密にしている。捕虜を気絶させてD研を使って運んだことはあるが、基本的に彼らには秘密のままである。

だから今回の移動も、ダガード子爵と他に5人が同行しているが、全員がドラ美ちゃんに乗って移動しているのだ。

「ドラゴンに乗って移動するなんて、望んでも叶わない夢のような事だろ? 楽しまなくてどうするぅ~」

ドラ美ちゃんは凄い速さで空を飛んでいる。俺達が乗っている背中は速さほどの風の影響は受けてはいない。それでも強風程度の風が吹き荒れていた。

「お、落ちたら死んでしまいますぅ~」

ダガード子爵だけでなく、他の5人も涙目で、あっ、泣いている人もいる……。

「大丈夫だよ! 落ちたら俺が助けてやるからぁ~。ほら、こんな風に落ちてもぉぉぉ……」

「ギャァーーー!」

俺は風に任せてドラ美ちゃんの背中から転がり落ちて見せる。彼らの叫び声が聞こえた気がしたが、すぐにフライの魔法で飛んで戻ってくる。

「マッスル様ぁーーー!」

戻ったのは落ちた場所とは反対の場所だった。ダガード子爵が俺の名を叫んでいるのが見えた。

「んっ、どうしたの?」

「うわぁあぁぁぁぁ……」

おいおい、勘弁してくれぇ!

声を掛けるとダガード子爵がパニクって手を離した。そして風に煽られドラ美ちゃんの背中から落ちていった。

すぐに落ちていくダガード子爵をフライで追いかけ助ける。

ダガード子爵を空中でキャッチしてドラ美ちゃんの背中に戻ってくると、残りの5人は背中にしがみついて泣きながら叫んでいる。

「こんなところで……、グスッ」
「ダ、ダガードさまぁ~」
「後はおまかせをぉ~」
「奥さんは私がぁ~」
「娘さんは私がぁ~」

「む、娘はみゃだ8歳だひょ!?」

うん、収拾できそうにない……。


   ◇   ◇   ◇   ◇


黒耳長族の島に向かった時に飛び立った崖の上に到着した。この付近はダガード子爵の領地だったようだ。

ダガード子爵達は普通に立ち上がることもできず、ドラ美ちゃんの背中から滑り落ちていく。痛そうだが、痛みではなく地面の感触を確かめるように嬉しそうに微笑んでいる。

「じ、地面だぁ……」
「うん、間違いなく地面だ!」
「こんな石っころが愛しいなんて……」
「い、生きて帰ってきたぁ!」
「タンターン!」

えっ、それなに? 名前?

「みんな! 辛い時間は終わった。そして我々は伝説のドラ美様の背中に乗ったのだ。それぞれの家族や一族の誇りとなり、子々孫々まで語られる偉業となろう! 情けない姿を見せるな! 胸を張れ!」

「「「おうっ!」」」

うんうん、ドラゴンライダーになったのは、確かに偉業と言えるだろう!

俺は同じようにドラゴンライダーになったことを喜ぶ彼らが、仲間のように思えてくる。

「ここからどうやって移動すると思う。もう一度ドラ美ちゃんに乗ることになるよ!」

もう一度ドラ美ちゃんに乗れる喜びを見たくて、楽しそうに彼らに伝える。

あれっ、なんでそんな悲しそうな顔を!?

喜んでくれるのかと思ったが、どう見ても絶望の淵に追いやられた人間の表情をしていた。

それから涙を流して懇願してくる彼らを、俺が一人ずつ最寄りの街道まで送っていった。更には馬車まで彼らに貸し与える。

最後にダガード子爵を送り届けると、全員が安心したように抱き合って喜んでいる。

解せぬ!?

「馬車は貸すだけだから返してもらうぞ!」

「もちろんです!」

「それと馬は絶対に傷つけるな。もしなんかあったらピピが悲しむ。何かあったらお前達を許さないからな!」

そこまで話すとフライで飛び上がる。地上で彼らが馬車を返すと叫んでいた気もするが、面倒なのでそのままドラ美ちゃんの所に戻るのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


戻ってくると既にドラ美ちゃんではなくリディアになって待ち構えていた。目をキラキラ輝かせ、期待するような表情で話しかけてきた。

「ご主人様、は、早く膝枕を! ここでしますか!?」

え~と、不穏な感じがするんですけどぉ……。

膝枕ぐらいで、リディアはオークカツを見ている時と同じような欲望の籠った目で俺を見つめてくる。

リディア(初膝枕!? そして二人っきり!)

「そ、外はさすがに……。ルームの中でお願いするよ」

「は、はい、喜んでぇ~!」

う~ん、少し恐いなぁ……。

ルームを開き、手を繋いでリディアと中に入る。握ったリディアの手が熱かった。

ファイアードラゴンだから体温が高いのかな? いや、熱すぎだろう!

握ったリディアの手は、普通の人なら火傷するぐらい熱かった。熱耐性のある俺だから平気な顔をして手を繋げるのである。

ルームに入るとすぐに握った手を離した。リディアは寂しそうな表情をしていたが、これ以上は熱耐性スキルの限界が気になって俺が落ち着かない。

黙ってリビングに向かうとリディアもついてくる。俺がソファに座っても、リディアはモジモジと恥ずかしそうにしている。

リディア(いざとなると恥ずかしい……)

熱湯水枕のような足で膝枕するのかぁ~。

どう考えても拷問のような膝枕になりそうだと悲しくなる。

「あら、思ったより早く戻ってきたのね」

そこにダイニングからアンナが来て声を掛けてきた。

リディア(なんで!?)

「ああ、ドラ美ちゃんが頑張ってくれたからな」

おれは普通に答えたが、リディアは両眼を見開いてアンナを見つめて固まっている。

「良かったわね。リディアはこの後初体験でしょ。さあ、ボーっとしないで、テンマ様に初めてを捧げるのだから、お風呂に入りなさい。それにそんな服装では失礼よ!」

リディア(待って、待って、待ってぇぇぇ!?)

アンナが固まっていたリディアを引きずってお風呂に連れて行った。

う~ん、相変わらずアンナの表現は誤解を受けそうだ……。

そう言えばリディアはあんな体温で風呂は大丈夫なのか?

あれっ、そういえばこれまでもリディアは普通に風呂に入っていた。それに前にリディアに触れた時はどちらかと言うと冷たかった記憶もある。

どゆこと?

あとで判明するのだが、リディアは油断していると感情の起伏で体温が上下に変動するようだ。普段はそれほど意識しなくても自動で調整されているということだ。

2人が風呂に行ってからあることが頭に過る。

ア、アンナが着替えを!?

アンナがリディアの着替えを監修するとなると……。

あ、あの、過激な下着姿かぁ!

思わずソファから立ち上がってキョロキョロ、ウロウロしてしまう。テーブルの周りを意味もなく歩き回ったり、爪を噛んだり、動揺して落ち着きのない行動を始めてしまった。

い、いや、俺っ女《こ》のリディアなら拒絶するだろう!
本当か? あの欲望に満ちた目はアンナに通じるものがある!
ドロテアさんやエリカにも通じるものがあった!
俺は冷静に居られるのか!?

「テンマ様、どうされましたか?」

「ひゃい、なんでもありましぇん!」

動揺して噛みまくる。色々想像している間に時間が経ったのだろう。アンナがリビングに入ってきて声を掛けてきたようだ。

そして、後ろにはメイド服に着替えたリディアがいた。

動揺していたが、期待もしていたようだ……。

がっかりしている自分に驚くのであった。
感想 441

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略 表紙

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

祝 書籍化決定!! あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ファンタジー 連載中 長編
文字数:413,497
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます 表紙

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。
ファンタジー 完結 長編
文字数:609,294
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました 表紙

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
恋愛 完結 短編
文字数:52,731
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~ 表紙

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋愛 完結 ショートショート
文字数:9,943
貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし 表紙

貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし

【祝・書籍化】第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 2026年7月発売です。4万字以上エピソード追加しました。 感想もありがとうございます! なかなか返信できておりませんが、全て拝読させていただいております。 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元宮廷魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ファンタジー 連載中 長編
文字数:210,794
元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜 表紙

元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜

平凡な大学生だった俺は、ある日突然、神のミスによって命を落としてしまう。 そのお詫びとして異世界へ転生することになったのだが、なぜか二度目の神のミスまで重なり、世界中の神々から"ありえない数の加護"を授かってしまった。 転生先は、辺境伯家の少年・アッシュ。 六歳で加護を授かるこの世界で、俺は規格外すぎる力を手に入れることになる。 しかし、その力はあまりにも危険だった。 だからこそ俺は、ステータスを偽装し、「少し優秀な六歳児」を演じながら、平穏な辺境伯ライフを送ることを決意する。 ……そのはずだった。 王都への旅、個性豊かな仲間との出会い、次々と巻き込まれる騒動。 そして、この世界の裏で静かに動き始める、誰も知らない大きな脅威。 目立ちたくない最強少年が、知らぬ間に世界の運命へと巻き込まれていく――。 これは、最強なのに平穏を望む少年・アッシュが紡ぐ、爽快異世界ファンタジー。
ファンタジー 連載中 長編
文字数:394,256
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた 表紙

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
ファンタジー 完結 短編
文字数:9,553
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~ 表紙

真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~

皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。 だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。 しかし彼女は知らなかった。 帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。 これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
ファンタジー 完結 短編
文字数:22,384