転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

文字サイズ
特大
213 / 296
第13章 懐かしい旅路

第3話 あれからの開拓村

村の奥から走ってくる彼女は、ミーシャとお揃いの服を着ていた。彼女は走った勢いのまま俺に抱きついてきた。

「お兄ちゃんお帰り。グスッ」

「ただいまメイ」

ケモミミをピクピクさせながら、俺の胸に顔を押し付けてきたのはメイである。サーシャさんの娘で、この世界で最初の妹ともいえる存在である。

メイに会うのは三年振りで、今もモフっている艶々の尻尾も大きくなっていた。メイは五歳だったから、今は八歳のはずだ。

忘れずにいてくれたことも嬉しいが、「お兄ちゃん」とまだ呼んでくれたことが凄く嬉しかった。

「メイにはたくさんのお土産があるからね!」

ケモミミを撫でながら話した。メイは顔を上げて嬉しそうに尋ねる。

「お兄ちゃん、本当!」

くぅ~、可愛すぎる!

キラキラした目でメイに言われると、なんでもプレゼントしたくなる。

「色々あるよぉ。服やここでは食べられないような料理もあるよ!」

「それは私の分もあるのかしら?」

「お姉ちゃん!」

いつの間にかサーシャさんも来ていたようだ。ミーシャはサーシャさんに抱き着いていた。

サーシャさんは色気が増しただけでなく、貫禄もついた気がする。服装も前より洗練されていた。

「も、もちろんサーシャさんの分もありますよぉ」

食べ物は大丈夫だが、服はサーシャさん用には用意していない。新しいデザインの服を作る度にメイの分も作っていたが、さすがにサーシャさんの分は作っていない。

頭の中で何かないか並列思考を使いながら必死で考えながら答えた。

後でアンナに用意してもらおう!

「ふふふっ、テンマ君のことは信じているわ。子供ができたのなら、本当の家族だからヨロシクね!」

サーシャさんと家族になるのは危険な気がするぅ!

「こ、子供のことは間違いですよ!」

まずはその誤解を解いておかないと、問題が大きくなりそうだ。

サーシャさんは一緒にいるエアルを見てすぐに気付いたようだ。

「そうみたいね。いくら何でも三年でこんな大きな子供はできないわよねぇ」

サーシャさんの反応にホッとする。他の村人たちも気付いたようで少し残念そうな顔をしている。

「俺の孫はどこだぁーーー!」

すでにこの場では誤解が解けていたが、遅れてミーシャの父親が走ってきた。

ミーシャの父親はすぐにエアルに気付いて一直線にエアルに向かっていく。

「なんと愛らしい!」

ゴンッ!

えっ、障壁!?

「不用意に近づくのではないのじゃ!」

ミーシャの父親はエアルに抱きつこうとしたが、あと少しというところで結界に阻まれてしまった。頭から鈍い音がして父親は倒れてしまった。

おうふ、気を失ったようだ!

ミーシャは父親のことを気にした様子もなく、驚いているサーシャに説明する。

「エアルちゃんは可愛いけど凄い人。伝説の英雄エクス様の娘!」

ミーシャの説明でサーシャさんも村人も混乱している。

まあ、エアルのあの見た目で、伝説の英雄の娘だと言われても混乱するよね。

「そ、そうなの……。細かい話は家で話しましょう!」

さすがサーシャさん、すぐに持ち直して家に行こうと提案してきた。

ミーシャも同意して、遅れて合流した母親と楽しそうに話しながらミーシャ家に向かい始める。

俺は気絶して倒れるミーシャの父親が気になったが、ミーシャの兄が介抱を始めたので、軽く会釈してからミーシャ達を追いかけるのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


ミーシャはサーシャさんと楽しそうに話しながら歩いている。メイはシルに抱きついたりモフったりしながらエアルと仲良く話をしているみたいだ。

メイはエアルを同年代の友達だと思っているみたいだなぁ……。

そんなことを考えながら歩いていると、前から懐かしい人が歩いてきた。

「村長、お久しぶりです! 少しの間、村に滞在させてもらいます」

声をかけたのは、ホロホロ鳥村長だ。村に滞在するのだから挨拶する。

「おおっ、テンマ君ではないか。元気なようで何よりじゃ! それより儂はもう村長じゃないぞ。もう数年前から村長はサーシャがしておる。聞いてないのか?」

なんですとぉ、ついにサーシャさんが裏も表も仕切り始めているのかぁ!

「そのことも含めて、ゆっくりと話そうと家に向かっているところよ」

サーシャさんが村長に笑顔で答えた。村長は笑顔で頷くと俺に話しかけてきた。

「テンマ君、村にいる間に儂にもホロホロ鳥を食べさせてもらいたいのぉ~。老い先短い老人の頼みと思って頼むぞ!」

いやいや、村長をやめて前より元気そうだよ!

村長は顔色もよく、前より元気そうだ。

サーシャさん達が歩き始めたので、村長に頭を下げて追いかける。

歩き始めて気が付く、以前のサーシャ家の場所はすでに通り過ぎていた。それでもサーシャさんは村の奥に進んで行く。そして一番奥ともいえる場所に着くと言った。

「ここが新しいお家よ。テンマ君達が泊る部屋も用意するわ」

サーシャさんがそう言って教えてくれた家は、前村長の家よりも何倍も大きく、家というより屋敷だった。

サーシャさん、何か悪いことしていない?

俺はサーシャさんが悪いことをしていないのか心配になったのである。


   ◇   ◇   ◇   ◇


サーシャ屋敷の応接室で、見たことのない若い女性がお茶を用意してくれた。さすがにメイド服は着ていないが、使用人なのかお茶の準備を終えると部屋を出ていった。

「ロンダから職人を呼んでこの家を建てたのよ。完成したのは一年前くらいかしら」

造りもしっかりしており、村人の協力で建てる家とは別物である。

ミーシャは嬉しそうに家の中を眺め、メイはエアルと一緒にシルをモフっている。

それからサーシャさんは俺達が村を出てからのことを話してくれた。

サーシャさんが中心となり村の女性とハーブ販売が上手くいったようだ。すぐに村でハーブ類の栽培を始めて開拓村の生活は安定したようだ。
それにロンダの町も発展して、近くにダンジョンができたことも村の景気をさらに良くしたらしい。

最初は景気が良くなっただけだったが、ダンジョンの影響で開拓村にも冒険者も訪れるようになり、問題を起こすようになった。そんな冒険者達をランガやジート、ズラタンが力でねじ伏せてたようだ。すぐにランガ達は冒険者の間で有名になり、家族持ちの冒険者が村に移住するようになった。

移住した冒険者達をランガ達が面倒を見て鍛え、一緒にダンジョンに行くようになった。サーシャさんは冒険者の家族の面倒を見て実質的な村長になった。そんな状況もあり前村長がサーシャを村長に指名して、名実ともにサーシャさんが村長になったのだ。

ランガは冒険者達のリーダーになり、彼らとダンジョンにも行くようになると、稼ぎの良い冒険者軍団となったのである。

まさかランガが冒険者のリーダー……。調子に乗ってそうだなぁ。

稼ぎの良い冒険者が開拓村に住み、ダンジョンやロンダとは三日に一度は馬車が往復するようになったようだ。

このサーシャ屋敷もランガの稼ぎで建てたようで、先ほどの女性はランガ達と活動する冒険者の家族らしい。

冒険者達は交代でダンジョン探索と開拓村の門番など村の警備も担っているらしい。

だから門番の男の人はサーシャさんを畏れているような雰囲気だったのだろう。冒険者のリーダーであるランガの妻で、ランガが絶対に逆らえない存在だから恐れられているのだろう。

あれっ、そういえばランガを見ていない!

「ランガはどこに?」

「今はダンジョンに行っているわ。明日にはジートとズラタンと一緒に戻ってくるはずよ!」

ちょうどランガ達がダンジョンに行っているタイミングで俺達が来たようだ。

「ランガ達は強くなった?」

ミーシャが尋ねた。

「ふふふっ、強くなったわよぉ。先月にはジート達と一緒にB級冒険者になったわ」

おおっ、本当に頑張っているようだ。

「それなら一緒に訓練する!」

ミーシャちゃんや、彼らの自信がなくなりそうだから手加減しろよ!

ミーシャはA級冒険者だし、先輩でもあるジュビロ達より強くなっているのだ。本気を出したら可哀想だ。

まあ、ピピにやられるよりはましだと思うけど……。



感想 441

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略 表紙

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

祝 書籍化決定!! あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ファンタジー 連載中 長編
文字数:413,497
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます 表紙

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。
ファンタジー 完結 長編
文字数:609,294
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました 表紙

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
恋愛 完結 短編
文字数:52,731
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~ 表紙

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋愛 完結 ショートショート
文字数:9,943
貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし 表紙

貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし

【祝・書籍化】第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 2026年7月発売です。4万字以上エピソード追加しました。 感想もありがとうございます! なかなか返信できておりませんが、全て拝読させていただいております。 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元宮廷魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ファンタジー 連載中 長編
文字数:210,794
元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜 表紙

元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜

平凡な大学生だった俺は、ある日突然、神のミスによって命を落としてしまう。 そのお詫びとして異世界へ転生することになったのだが、なぜか二度目の神のミスまで重なり、世界中の神々から"ありえない数の加護"を授かってしまった。 転生先は、辺境伯家の少年・アッシュ。 六歳で加護を授かるこの世界で、俺は規格外すぎる力を手に入れることになる。 しかし、その力はあまりにも危険だった。 だからこそ俺は、ステータスを偽装し、「少し優秀な六歳児」を演じながら、平穏な辺境伯ライフを送ることを決意する。 ……そのはずだった。 王都への旅、個性豊かな仲間との出会い、次々と巻き込まれる騒動。 そして、この世界の裏で静かに動き始める、誰も知らない大きな脅威。 目立ちたくない最強少年が、知らぬ間に世界の運命へと巻き込まれていく――。 これは、最強なのに平穏を望む少年・アッシュが紡ぐ、爽快異世界ファンタジー。
ファンタジー 連載中 長編
文字数:394,256
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた 表紙

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
ファンタジー 完結 短編
文字数:9,553
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~ 表紙

真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~

皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。 だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。 しかし彼女は知らなかった。 帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。 これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
ファンタジー 完結 短編
文字数:22,384