転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

文字サイズ
特大
222 / 296
第13章 懐かしい旅路

第12話 ジジの休日⑤

応接室に案内されたジジは色々と考えていた。
テンマのことを凄い人と分かっていたが、ロンダの町での反応にジジは驚いてた。いつも一緒にいることで、テンマの凄さに慣れていたのである。

ジジはドロテアのこともいつの間にか同様に考えていた。暴走気味で困った所もあるが、母や姉のような身近な存在だと考えていたのだ。

特にロンダの町でドロテアは国の英雄で町の誇りでもあったのだ。ジジは改めてそのことを思い出し、迂闊にドロテアの名前を出したことを反省していたのだった。

「ジジちゃん、ドロテア様が戻ったというのは本当なの!?」

ギルマスのカリアーナはノックもせずに扉を開けて入ってきて、ジジに肉薄すると真剣な表情で尋ねた。

「ひゃい、ドロテア様と昨日戻ってきました。町に戻ってからは別行動で、ドロテア様はお屋敷に戻っているはずです」

カリアーナの剣幕にジジは怯えながら答えた。

「キイィーーー! 人に仕事を押し付けて町を出ていったのに、町に戻ってきたのに連絡もくれないなんて信じられないわ!」

カリアーナはハンカチの端を噛み、悔しそうに叫んだ。ジジは余計なことを言ったのではないかと焦った。

「き、昨日の午後に戻ったばかりで、ドロテア様も屋敷のことを心配していました。そちらが落ち着いてから、こちらに連絡するつもりだったのでは……」

何の確証もない話で、話しているジジは段々と声が小さくなってしまった。

「そ、そう……、でも、ドロテア様と色々と約束していたのに、何年も連絡がなかったのよ。私はドロテア様に裏切られたのかと……、グスッ、女の幸せを捨てて頑張ってきたのにぃ~。え~ん!」

カリアーナは戸惑ったように話していたが、最後には子供のように泣き始めてしまった。

ジジは予想外の展開に焦ってしまい、カリアーナを慰めるしかできなかった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


しばらくしてカリアーナは落ち着くとジジに尋ねた。

「テンマ様は一緒じゃないの?」

(カリアーナさんまでテンマ様を様付で呼んでいるのね)

ジジはそんなことを考えながら答えた。

「テンマ様は開拓村に行ってます。たぶん数日後にはロンダの町で合流する予定です」

「そうなのね。テンマ様には色々と聞きたいこともあるのよ。テックス様の登録した内容で理解できないこともあってね。できればお会いして話をしてみたいわ」

「わ、わかりました。テンマ様にお会いしたら、そのことを伝えておきます」

ジジはテンマに話さないといけないことが増えてしまい内心では焦っていた。

カリアーナはそんなジジの気持ちなど知らない。笑顔でジジの返事を聞いて、世間話を始めた。

「ジジちゃんは綺麗になったわねぇ。ピピちゃんは……、あ、相変わらず可愛いわ」

カリアーナもピピが成長していないことに驚いたようだ。
ジジはカリアーナが孤児院の院長と同じ反応をしたので吹き出しそうになった。それを我慢して本来の目的であるお土産を渡すことにする。

「これは私の作ったお菓子です。ギルドのみなさんでお食べください」

クッキーの詰め合わせの袋を十個ほどテーブルの上に出した。

「あらぁ、本当にジジちゃんはテンマ様とそっくりねぇ。テンマ様もいつもお土産を持ってきてくれたわぁ。お礼に昼食は私がご馳走するわ!」

「あっ、それなら私に任せてください! 旅先で覚えた料理を作って収納しています。昨晩の食事会にカリアーナ様は来られなかったので、ご馳走させてください!」

ジジはそれならと笑顔で提案した。しかし、ジジの話を聞いたカリアーナは少し目を細めて尋ねてきた。

「食事会をしたのね。誰を招待したのかしら?」

ジジはカリアーナの雰囲気に気付かず普通に話す。

「子供のころからお世話になっていたルカさん、あっ、今は冒険者ギルドのギルマスであるルカさん、あと冒険者ギルドの職員が数名です。それにドロテア様が屋敷の使用人を連れてきてくれました。昔にお世話になったので楽しかったです! あっ!」

ジジは普通に答えながら前日のことを思い出して笑顔になっていた。しかし、答え終わってカリアーナの顔を見て、声が出てしまった。

ジジにはカリアーナの後ろに吹雪が吹き荒れているように見えていたのだ。

「私は誘ってくれなかったのね……」

「ち、違います! ルカさんと昔から知っている冒険者ギルドの職員の人達だけの食事会だったんです。そしたらドロテア様が屋敷の人達を呼んでいて、私も驚いたんです!」

ジジは必死に事情を説明した。しかし、カリアーナの後ろの吹雪は治まる気配はなかった。

「分かっているわ。ジジちゃんは本当にいい娘《こ》だもの。私を仲間外れにするつもりなら、こうやって挨拶やお土産を持ってきてはくれないでしょ。でもドロテア様は使用人に声をかけても、私には声をかけてはくれないみたいねぇ」

カリアーナが話しているのを聞いていたジジは、吹雪に雹が混じり始めたと思って恐くなった。

「珍しい食材や料理もたくさんあります。昼食をご馳走させてください!」

ジジは涙目でカリアーナに頼み込んだ。そもそもカリアーナに連絡をしなかったドロテアが悪いのだが、ドロテアに迷惑を掛けるとジジは思ったのだ。

「ジジちゃんが気にすることはないわ。でも料理のことは気になるから、ご馳走してもらおうかしら?」

「はい、お任せください!」

ジジはホッとしていた。料理を食べればカリアーナの機嫌も少しでも良くなるのではと思ったのだ。そして、昼食の間に念話でドロテアに知らせようと考えていた。


   ◇   ◇   ◇   ◇


昼食はカリアーナだけでなく、ドロテアから教えを直接受けていた六人も参加した。

カリアーナはかつてのドロテアと同じように、錬金術師ギルドと魔術師ギルドのギルドマスターを兼任していて、参加した六人はそれぞれのギルドと研修施設を管理していたのである。

「ふぅ~、素晴らしい料理だったわ」

すでにジジの用意した昼食を食べ終わり、お茶とデザートであるプリンを食べていた。

「喜んでもらえて私も嬉しいです」

ジジが用意したのは昼食ということで、軽くカツサンドとシーフードサンドであった。それだけでは海の食材が少ないので、エビやイカ、カニなどのてんぷらを添えて出した。

てんぷらは食材の形が分かるので、カリアーナ達は食べるのに戸惑っていた。しかし、ピピがあっと言う間に食べつくし、おかわりを要求したのを見て食べ始めた。そしてピピと同じようにカリアーナ達もおかわりを要求したのであった。

「本当にジジちゃんは優しいわねぇ。ドロテア様と大違いよ!」

カリアーナの発言に他の六人も大きく頷いていた。他の六人もドロテアが町に戻ってきたのに、連絡のないことに腹を立てていたのである。

「あっ、そのことですが、ドロテア様がみなさんを今晩の夕食に招待したいと連絡がありました。昨日は屋敷の使用人を労ったようですが、今日は皆様を招待して労う予定だったみたいです」

実はジジが慌ててドロテアに念話で連絡すると、ドロテアは完全に忘れていた。焦ったドロテアは何も考えられず、ジジが提案して裏で話を進めたのである。

「まあ、ドロテア様は私達のことを忘れていたわけではないのね!」

「そうだと思います。屋敷の留守を任せていた使用人に、たまたま昨晩の夕食のことを聞いて労っただけで、皆様を先に招待するつもりだったようです」

ジジの話を聞いてカリアーナさんは涙ぐみ、他の六人も嬉しそうに話をして盛り上がり始めた。

ジジは自分がギルドに来たことで、問題が大きくならないで良かったとホッとした。

それでも精神的に疲れてしまい、今日の挨拶回りは終わりにしようと考えていた。この後はドロテアに今晩の招待用の料理を届け、宿でゆっくりしようと考えていた。

その頃、宿には冒険者ギルドの職員が来ていた。職員はルカに食堂を貸し切りするように指示されたのである。

その日の夜、ジジはルカ達お姉さん軍団に根掘り葉掘り質問責めにあったのである。


感想 441

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略 表紙

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

祝 書籍化決定!! あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ファンタジー 連載中 長編
文字数:413,497
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます 表紙

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。
ファンタジー 完結 長編
文字数:609,294
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました 表紙

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
恋愛 完結 短編
文字数:52,731
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~ 表紙

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋愛 完結 ショートショート
文字数:9,943
貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし 表紙

貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし

【祝・書籍化】第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 2026年7月発売です。4万字以上エピソード追加しました。 感想もありがとうございます! なかなか返信できておりませんが、全て拝読させていただいております。 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元宮廷魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ファンタジー 連載中 長編
文字数:210,794
元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜 表紙

元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜

平凡な大学生だった俺は、ある日突然、神のミスによって命を落としてしまう。 そのお詫びとして異世界へ転生することになったのだが、なぜか二度目の神のミスまで重なり、世界中の神々から"ありえない数の加護"を授かってしまった。 転生先は、辺境伯家の少年・アッシュ。 六歳で加護を授かるこの世界で、俺は規格外すぎる力を手に入れることになる。 しかし、その力はあまりにも危険だった。 だからこそ俺は、ステータスを偽装し、「少し優秀な六歳児」を演じながら、平穏な辺境伯ライフを送ることを決意する。 ……そのはずだった。 王都への旅、個性豊かな仲間との出会い、次々と巻き込まれる騒動。 そして、この世界の裏で静かに動き始める、誰も知らない大きな脅威。 目立ちたくない最強少年が、知らぬ間に世界の運命へと巻き込まれていく――。 これは、最強なのに平穏を望む少年・アッシュが紡ぐ、爽快異世界ファンタジー。
ファンタジー 連載中 長編
文字数:394,256
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた 表紙

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
ファンタジー 完結 短編
文字数:9,553
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~ 表紙

真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~

皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。 だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。 しかし彼女は知らなかった。 帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。 これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
ファンタジー 完結 短編
文字数:22,384