転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

文字サイズ
特大
136 / 296
ダークエルフの島

第2話 王国最後の村

森を抜けた場所で休憩にする。
 心の広い俺は討伐を頑張ったことを評価してプリンをおやつとして提供してやった。
 決してピピを褒めるために嫌々ハル達にもプリンを提供したわけではない!

 残念ながらハルが痩せなかったが、さすがに疲れたのかソファでごろごろとしている。

 いつも通りだけどな!

 ピピもプリンを食べ終えるとピョン吉に抱き着いて、今にも寝てしまいそうだ。
 目的の村までそれほど時間はかからないので、到着までどこでも自宅で休ませるかな。

 俺が御者をして念のためにバルドーさんが馬車の中にいて移動を再開する。するとすぐに道の先に二、三十人ほどの馬に乗った兵士が見えた。向こうもこちらに気付いたのか集団から五人程が先行してこちらに向かってくる。

「おい、そこの馬車止まれ!」

まるで検問のように前を塞ぎ馬車を止められた。

何かあったのだろうか? またトラブルか!

不安に思いながらも馬車を止める。

「お前達はこの道を来たのか。何者だ?」

「俺達は旅人です!」

うん、また言ってみたかった!

「そんなのは見たらわかる! 商人なのか?」

残念だ! 旅人と言ってみたが軽く流され、少し怒らせたようだな。

「いえ冒険者です」

「冒険者? それなら中に護衛対象が居るのか?」

「いえ、仲間の冒険者がいるだけです」

兵士の目つきが厳しくなった気がする。冒険者だけで旅をするのは珍しいのかもしれない。

「おい、馬車の中の者に出てくるように言え!」

いやいや、それは構わないけど、剣や槍を構えるのはなぜだよ!

警戒度の高い兵士たちに驚きながらも、仕方ないのでバルドーさんに声を掛けようとした。しかし、その前に馬車からバルドーさんが出てくる。

「何事ですか? 我々に敵対するつもりはありません。まずはその物騒な武器を下ろしてください」

笑顔でお願いしているけど、目が笑っていない。

また騒動になりそうで俺が恐いよぉ~。

「それ以上動くな! 身分証は持っているか?」

執事姿のバルドーさんは武器など持っていないのに、兵士たちはバルドーさんを見てから警戒度が上がった感じがする。バルドーさんもそれに気付いたのか顔から笑顔が消えた。

「冒険者のギルドカードはありますがねぇ。そこまで武器を向けられては、身元確認をする振りして襲撃する盗賊かと警戒してしまいますねぇ」

「なんだと! いいからギルドカードを持っているなら見せろ!」

うん、まずい展開だぁ!

バルドーさんの目つきが更に鋭くなる。それに合わせて兵士たちの緊迫感も高くなっている。

「待て!」

残りの兵士が追いついたようで、その中の少し上等な装備を着た兵士が前に出てきて、会話をしていた兵士を止めた。

「んっ、なぜあなたがこんな所に?」

「これはバルドー様、大変失礼しました。私が所属する第五大隊がデンセット公爵領の治安維持に派遣されていまして。おい! お前達、武器をしまえ!」

おうふっ、彼はバルドーさんのオシリアイみたいだ。

他の兵士たちもバルドーさんの名前を聞いて顔色が悪くなっている。特にバルドーさんに上から目線で命令していた兵士は涙目になっているな。

「そういえば陛下からデンセット公爵の悪事の証拠が集まったから、デンセット公爵領に兵を派遣すると聞いていましたなぁ」

すでにバルドーさんは普通の笑顔に戻って話している。

「はい、デンセット公爵一族は捕縛して、公爵家の私兵も解体したのですが……デンセット公爵本人が見つかっておりません。それでこちらの道を探索しに来たのです」

バルドーさんは頷きながら話を聞いていた。

「それならこの道の調査は必要ありませんね。我々はベルタ伯爵領からこの道を進んできましたが、途中で誰も行き交うことは有りませんでしたから」

バルドーさんの話を聞いてオシリアイはホッとした表情を見せた。

「その情報は本当に助かります。この道は魔物がたくさん出る可能性が高いと冒険者ギルドから報告がありましたので。それよりバルドー様こそ危険はありませんでしたか?」

う~ん、危険はなかったよね。魔物はそれなりにいたけど……。

「ふむ、危険はありませんねぇ。ただそれなりの数の魔物を討伐はしましたが」

「それなりの数の魔物!」

うん、兵士の皆さんの顔色がまた悪くなった。

彼らを鑑定してみたが、兵士としてそれほど無能ではない。それでも今日討伐した魔物と戦闘になったとすれば、砦まで無事に到着できるほどではないだろう。

「ああ、それらは我々で殲滅しましたから大丈夫ですよ」

バルドーさんがそう答えると、驚いたようだがホッとしている感じだ。

「で、できましたら村に一緒に行って、詳しく報告して頂けませんか?」

まあ、彼らもバルドーさんに聞きましたじゃ仕事とはならないだろうな。

「ええ、構いませんよ。その代わり夜は一緒に食事でもそうですか?」

でたぁ~、今晩は新たな旅最初のバッチコーイですね!
心なしか兵士さんの顔が赤くなった気がするぅ。

「喜んでご一緒させていただきます!」

なんか緊張していたのが馬鹿らしいな……。


国境に近い村はそれなりに栄えており、町といっても不思議ではない規模だった。
バルドーさんのオシリアイのお陰か、村に入るのも特に調べられることもなかった。

村には兵士を多く見かけ、どこか騒然とした雰囲気がある。しかし、住人の表情は暗い感じがする。

村で一番の宿に案内してもらい、宿の入口で兵士だけでなくバルドーさんと別れる。村だからそれほど期待していなかったが、下手な町の宿より立派な宿だった。

受付の従業員にそのことを聞いてみる。

「村なのにこんな立派な宿があるんですね?」

成人したばかりの俺が尋ねても、従業員は笑顔で普通に答えてくれた。

「この村は国境に近いこともあり、商人の出入りも頻繁にございます。それが長年続いたことであらゆる面で町と同じ規模になっております。国境の村と名前すらありませんでしたが、町として正式に名前を付けようという話も出ていたのですが……」

最初は自慢気に笑顔で説明していた従業員だったが、最後は悲しげな表情になり声も小さくなっていた。

「領主一族が不正で捕まったことで町にできなくなったとか?」

「……それも少しあると思いますが、正直あまり関係ないと私は考えております。急に国から代官様が派遣されてきて、多くの兵士が駐留されていますが、それにより私たちの生活に大きな影響はほとんどありません。それよりも、暫く前に国内で塩が供給されるようになったことで、一気に隣国の商人が来なくなったことの影響が……」

ああ、それは俺が原因ともいえるなぁ。

 塩は人が生きるのに必須であり、それを国内でも政治的な思惑で利用されていた。だからたまたま見つけた岩塩をロンダに提供したのは俺だ。

 バルドーさんから聞いた話では、塩の供給先が複数になることで、ホレック公国と対等な関係で外交ができるようになり、適正な価格で塩の輸入は継続するとは聞いている。

 それほど深く考えての行動ではなかったけど、これまではそのことで良い影響ばかり目にしてきた。しかし、こうやって悪い影響を目にすると複雑な気持ちになるなぁ……。


   ◇   ◇   ◇   ◇


その日バルドーさんは戻ってくることもなく……というかいつも夜は行方不明だけどね。朝食を宿の食堂に食べに行くと合流した。

「国から派遣された代官にあの道の状況を説明しておきました。今後の予定はどうされますか?」

う~ん、島で海産物を食べるとしか考えていなかったなぁ。

「この村ですることもないし、国境を越えて目的の島を目指そうかなぁ」

「おう、それがいいぞ! ホレック公国の海岸から島までそれほど遠くなかったはずだ。島にはダンジョンがあるし、なんたってあそこの島は料理がうまい!」

 じゅる、料理が美味い……。最高の場所のような気がするぅ~。

 しかし、リディアは着ている服装で話し方が全然違うな。

 旅の最中は冒険者装備にするように指示したので、最初にあった頃と同じ俺っの話し方だ。

しかし、従魔になってアンナにメイド服を着せられたら、予想外の可愛らしい話し方になっていた。

「それは楽しみですなぁ」

なんとバルドーさんも楽しみにしている。

「あそこの食材でジジに料理してもらえば、もっとうまいはずだ!」

食いしん坊ドラゴン妹(リディア)は、完全にジジの料理に嵌まったようだ。

話を聞くと今すぐに行きたくなるなぁ。

うん、今すぐ出立しよう!


昼前には国境となっている川に着き橋を渡る。特に検問や兵士もいなかった。

夕方になるまでには余裕でホレック公国側の国境の村に到着した。そして村の入口ではしっかりした検問があった。ここが実質的な国の検問になっているのだろう。

俺は商業ギルドのカードを出した。実は冒険者だけで旅をするよりも、商人として旅をした方が怪しくないとバルドーさんに言われたからだ。

冒険者がジジやピピだけでなくアンナを連れているのは不自然だし、バルドーさんは有名すぎるので商人の執事としてホレック公国に入ることにしたのだ。

俺は大きな商会の三男で、商人として修行の旅をしているという設定にした。

検問では親の七光りだと思われたのか、馬鹿にされたような表情で笑われた。しかし、護衛にA級冒険者のリディアが居ると分かると驚かれてしまった。

う~ん、A級冒険者を専属護衛に雇うのは普通ではないよねぇ。それもメイドも連れての旅となると猶更だ。

どこが修行の旅やねん!

それでも特に問題もなく村に入ることができた。こちらの国境の村も町規模の大きさはある。しかし、こちらも雰囲気は暗い感じがするな。

感想 441

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略 表紙

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

祝 書籍化決定!! あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ファンタジー 連載中 長編
文字数:413,497
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます 表紙

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。
ファンタジー 完結 長編
文字数:609,294
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました 表紙

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
恋愛 完結 短編
文字数:52,731
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~ 表紙

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋愛 完結 ショートショート
文字数:9,943
貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし 表紙

貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし

【祝・書籍化】第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 2026年7月発売です。4万字以上エピソード追加しました。 感想もありがとうございます! なかなか返信できておりませんが、全て拝読させていただいております。 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元宮廷魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ファンタジー 連載中 長編
文字数:210,794
元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜 表紙

元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜

平凡な大学生だった俺は、ある日突然、神のミスによって命を落としてしまう。 そのお詫びとして異世界へ転生することになったのだが、なぜか二度目の神のミスまで重なり、世界中の神々から"ありえない数の加護"を授かってしまった。 転生先は、辺境伯家の少年・アッシュ。 六歳で加護を授かるこの世界で、俺は規格外すぎる力を手に入れることになる。 しかし、その力はあまりにも危険だった。 だからこそ俺は、ステータスを偽装し、「少し優秀な六歳児」を演じながら、平穏な辺境伯ライフを送ることを決意する。 ……そのはずだった。 王都への旅、個性豊かな仲間との出会い、次々と巻き込まれる騒動。 そして、この世界の裏で静かに動き始める、誰も知らない大きな脅威。 目立ちたくない最強少年が、知らぬ間に世界の運命へと巻き込まれていく――。 これは、最強なのに平穏を望む少年・アッシュが紡ぐ、爽快異世界ファンタジー。
ファンタジー 連載中 長編
文字数:394,256
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた 表紙

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
ファンタジー 完結 短編
文字数:9,553
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~ 表紙

真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~

皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。 だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。 しかし彼女は知らなかった。 帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。 これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
ファンタジー 完結 短編
文字数:22,384