24 / 77
可愛い人造人間はお好きですか!
しおりを挟む
それは城の中で一番重要な研究をしていた場所、【第一錬金塔】。
「さぁ出来た、立ち上がってごらん。」
そのヒトのカタチしたモノがゆっくりベットから起き上がった。
「どうだい、どこかおかしな所は無いかな?」
フルフル!
首を左右に振る、つまりおかしな所は無いと言う事だ。
「そうか、どうやら壊れた部分は元通りに直った様だな。」
亡くなった娘を模した容姿、王国から制作費を毟り取る為に最強の戦闘力を組み込んだ人工生体。
人工頭脳は娘の【遺髪】から培養した【クローン細胞】を利用している。
戦闘力を計測する為にと、王の命で【勇者リョーコ】と闘わされて、あちこち壊されてしまった。
「うむ、問題は無さそうだね。」
勝負は…
引き分けだった。
優しいこの子が【殺人】などするはずがないのだ。
そう見える様に加減したに過ぎない。
フッ、ソレはそうだろう!
この子を倒せる者など、今この世界には居ない…
「ヨシ、お前はコレから【聖地ガルライド】に向かいなさい。
お前ならあのダンジョンを攻略出来るだろう。
【教会】でお前を案内してくれる様に、弟子の一人が待っている、お前もよく知っている【キサラギ】君だ。」
キサラギ…彼女の【名付け親】は私だ、故郷の言葉をあえて付けさせてもらった。
キョトンしている人造人間?
「王国には一応完成品の設計図を提出する。
但し、私以外の【錬金術師】が同じ物を造れるとは思えない。」
【錬金術師】
割とポピュラーな職業らしいが、元の世界の科学に置き換えると、全く小学校の理科の実験レベルで、ソレを僅かに使える【魔法】で力押ししている様なものだ。
そんな低レベルの【錬金術】を飛躍的に向上させたのは、自分に他ならない。
「いいかい、お前はコレから別の世界に行き、その力で平和のために尽くしなさい。
あの子もそんな子だった。」
コクコク、理解したと、笑みを浮かべうなづく人工少女⁈
「うむ、その笑顔だ。
さあ、お別れの時た。
アチラに着いたら【ヒノ アスカ】と言う男を探して頼りなさい。
きっと、チカラになってくれるからな。」
…ぶんぶん⁈
お別れと言う言葉は許容出来ない!
「コレももっていけ、コレを見せればアイツもお前が私の娘だと直ぐに分かるだろう。」
いや、この子の容姿なら【妹】にも似てるから、可愛がってもらえるかもしれない。
その人物が自分の創造物に渡したのは、古くて動かなくなってしまった【懐中時計】だった。
人工少女が無事にコチラの世界に来れた時、その懐中時計を見せるべき人はもういなかった。
【日野 飛鳥】
この俺【日野 暁人】の亡くなった祖父である。
「…昔から【神隠し】と呼ばれていた失踪事件があってな、
しかし、大体は【子供】がいなくなるのがほとんどで、大学生が
突然いなくなるのは、ちょっとちがうのだがな…」
父さんも同じ【懐中時計】を取り出した…?
「コレは爺さんの形見だ、仏壇の奥にずっとしまってあったモノだ。」
父さんが自分の父親から聞いていた話しでは、ある日突然前触れもなく、親友がいなくなったそうだ。
青年団で山狩もしたし、警察も一応捜索してくれた。
頭の良い学生だったので、何か理由があって、自ら失踪したのではとも考えられていた。
その人には妹さんがいて、兄妹二人きりの【家族】だったそうだ。
あの懐中時計は妹さんが兄には進学の、もう一つは就職祝いとして兄の親友にプレゼントしたそうだ。
兄が姿を消して悲しむ妹さんを支えた祖父…
つまりその妹さんが俺の祖母なんだって。
二人とも、俺が産まれた時は、
「アイツに似てるな。」
「そうね、目元とかそっくり。」
と言って、喜んでくれたそうだが、俺が物心ついた頃には亡くなっていた。
「その人はアチラで結婚し、子供もいたそうだ。」
「…いた…」
過去形だけど、ソレってつまり俺たちのご親戚だよね?
「また、フランちゃんの世話になってしまった様だ。」
何でもその人は話す事が出来ないらしく、【人工声帯】を取り付けたとか?
「さしずめ【フランケンシュタインの花嫁】だな?
明日、我孫子道さんが連れてきてくださるそうだ。」
ウチの親戚らしいという事が、その女性が持っていた所持品から分かったそうだ。
「アチラとコチラの時間の流れ方が今一つ規則性が無い。
父さんはアチラで叔父さんに会う事は出来なかった、会って話す事が出来たのなら… 。」
「パパさ~ん、お客様がお見えになりましたよ~。」
来た、ついに来た!
我孫子道さんが連れてきたのは三人だった。
ちなみに今回、フランさんともう一人、【施設】の女性職員の方が付き添いで同行されていた。
「コチラの皆さん、日野サンと縁の有る方々だそうなので、ご一緒にお連れしました。」
女性職員の方が簡単に説明してくれた。
そこに居たのは、獣人らしきケモ耳とフサフサ尻尾のあるお姉さんと、異世界の修道女みたいな服を着たお姉さん…
そして、銀色でカッコいい強そうな【ヘッドギア】を付けているお姉さん?
多分、この人が…
「…ん、君は?」
父さんが修道女さんを見て驚いている?
「…お久しぶりです、テツジンさん!」
「シスターじゃないか?
どうして君がココに?」
「オイラが連れて来たからさ、オッチャン!」
「そ、その声はお前…ライガか?
お前、女の子だったのか?」
「うん、人化するまでオイラも知らなかったぞ?
…で、オッチャンオウガは何処だい?」
何か急にほのぼのし始めたな?
「…オジ様、…皆さんの…検疫は終わり…ましたわ。」
「フランちゃん、ありがとう。
随分と世話になっなようだね?
喋れない子の為に、また何か作ってくれたそうだね?」
「…オジ様、その~……、ソレ必要なかった…デスの。」
「ん、何か有ったのかい?」
するとフランさんの代わりに女性職員の方が答えた。
「コチラのお嬢さんがお話し出来なかったのには訳があって、どうやら【秘密保持】の為に、幾つかの【プロテクト】がされていた様です。」
「…プロテクトですか、ソレで喋れない… それで解除できたのですか?」
「…ソレなのですが…」
すると、
「…お…さん…?」
「ん? 今、何か?」
「お父さ~んっ!」
ヘッドギアが外れて、隠れていた素顔が見えた?
何処となく、葉月や睦月に似てなくも無くは無い?
いや、その前に俺にかけ寄り抱きついて来たお姉さん?
「く、くるし…」
「お父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さん!」
「お、落ち着いて、サリー!
その人はアナタのお父さんじゃないわ!」
何なんだ?
今度はお兄ちゃんでなく【お父さん】なん?
「さぁ出来た、立ち上がってごらん。」
そのヒトのカタチしたモノがゆっくりベットから起き上がった。
「どうだい、どこかおかしな所は無いかな?」
フルフル!
首を左右に振る、つまりおかしな所は無いと言う事だ。
「そうか、どうやら壊れた部分は元通りに直った様だな。」
亡くなった娘を模した容姿、王国から制作費を毟り取る為に最強の戦闘力を組み込んだ人工生体。
人工頭脳は娘の【遺髪】から培養した【クローン細胞】を利用している。
戦闘力を計測する為にと、王の命で【勇者リョーコ】と闘わされて、あちこち壊されてしまった。
「うむ、問題は無さそうだね。」
勝負は…
引き分けだった。
優しいこの子が【殺人】などするはずがないのだ。
そう見える様に加減したに過ぎない。
フッ、ソレはそうだろう!
この子を倒せる者など、今この世界には居ない…
「ヨシ、お前はコレから【聖地ガルライド】に向かいなさい。
お前ならあのダンジョンを攻略出来るだろう。
【教会】でお前を案内してくれる様に、弟子の一人が待っている、お前もよく知っている【キサラギ】君だ。」
キサラギ…彼女の【名付け親】は私だ、故郷の言葉をあえて付けさせてもらった。
キョトンしている人造人間?
「王国には一応完成品の設計図を提出する。
但し、私以外の【錬金術師】が同じ物を造れるとは思えない。」
【錬金術師】
割とポピュラーな職業らしいが、元の世界の科学に置き換えると、全く小学校の理科の実験レベルで、ソレを僅かに使える【魔法】で力押ししている様なものだ。
そんな低レベルの【錬金術】を飛躍的に向上させたのは、自分に他ならない。
「いいかい、お前はコレから別の世界に行き、その力で平和のために尽くしなさい。
あの子もそんな子だった。」
コクコク、理解したと、笑みを浮かべうなづく人工少女⁈
「うむ、その笑顔だ。
さあ、お別れの時た。
アチラに着いたら【ヒノ アスカ】と言う男を探して頼りなさい。
きっと、チカラになってくれるからな。」
…ぶんぶん⁈
お別れと言う言葉は許容出来ない!
「コレももっていけ、コレを見せればアイツもお前が私の娘だと直ぐに分かるだろう。」
いや、この子の容姿なら【妹】にも似てるから、可愛がってもらえるかもしれない。
その人物が自分の創造物に渡したのは、古くて動かなくなってしまった【懐中時計】だった。
人工少女が無事にコチラの世界に来れた時、その懐中時計を見せるべき人はもういなかった。
【日野 飛鳥】
この俺【日野 暁人】の亡くなった祖父である。
「…昔から【神隠し】と呼ばれていた失踪事件があってな、
しかし、大体は【子供】がいなくなるのがほとんどで、大学生が
突然いなくなるのは、ちょっとちがうのだがな…」
父さんも同じ【懐中時計】を取り出した…?
「コレは爺さんの形見だ、仏壇の奥にずっとしまってあったモノだ。」
父さんが自分の父親から聞いていた話しでは、ある日突然前触れもなく、親友がいなくなったそうだ。
青年団で山狩もしたし、警察も一応捜索してくれた。
頭の良い学生だったので、何か理由があって、自ら失踪したのではとも考えられていた。
その人には妹さんがいて、兄妹二人きりの【家族】だったそうだ。
あの懐中時計は妹さんが兄には進学の、もう一つは就職祝いとして兄の親友にプレゼントしたそうだ。
兄が姿を消して悲しむ妹さんを支えた祖父…
つまりその妹さんが俺の祖母なんだって。
二人とも、俺が産まれた時は、
「アイツに似てるな。」
「そうね、目元とかそっくり。」
と言って、喜んでくれたそうだが、俺が物心ついた頃には亡くなっていた。
「その人はアチラで結婚し、子供もいたそうだ。」
「…いた…」
過去形だけど、ソレってつまり俺たちのご親戚だよね?
「また、フランちゃんの世話になってしまった様だ。」
何でもその人は話す事が出来ないらしく、【人工声帯】を取り付けたとか?
「さしずめ【フランケンシュタインの花嫁】だな?
明日、我孫子道さんが連れてきてくださるそうだ。」
ウチの親戚らしいという事が、その女性が持っていた所持品から分かったそうだ。
「アチラとコチラの時間の流れ方が今一つ規則性が無い。
父さんはアチラで叔父さんに会う事は出来なかった、会って話す事が出来たのなら… 。」
「パパさ~ん、お客様がお見えになりましたよ~。」
来た、ついに来た!
我孫子道さんが連れてきたのは三人だった。
ちなみに今回、フランさんともう一人、【施設】の女性職員の方が付き添いで同行されていた。
「コチラの皆さん、日野サンと縁の有る方々だそうなので、ご一緒にお連れしました。」
女性職員の方が簡単に説明してくれた。
そこに居たのは、獣人らしきケモ耳とフサフサ尻尾のあるお姉さんと、異世界の修道女みたいな服を着たお姉さん…
そして、銀色でカッコいい強そうな【ヘッドギア】を付けているお姉さん?
多分、この人が…
「…ん、君は?」
父さんが修道女さんを見て驚いている?
「…お久しぶりです、テツジンさん!」
「シスターじゃないか?
どうして君がココに?」
「オイラが連れて来たからさ、オッチャン!」
「そ、その声はお前…ライガか?
お前、女の子だったのか?」
「うん、人化するまでオイラも知らなかったぞ?
…で、オッチャンオウガは何処だい?」
何か急にほのぼのし始めたな?
「…オジ様、…皆さんの…検疫は終わり…ましたわ。」
「フランちゃん、ありがとう。
随分と世話になっなようだね?
喋れない子の為に、また何か作ってくれたそうだね?」
「…オジ様、その~……、ソレ必要なかった…デスの。」
「ん、何か有ったのかい?」
するとフランさんの代わりに女性職員の方が答えた。
「コチラのお嬢さんがお話し出来なかったのには訳があって、どうやら【秘密保持】の為に、幾つかの【プロテクト】がされていた様です。」
「…プロテクトですか、ソレで喋れない… それで解除できたのですか?」
「…ソレなのですが…」
すると、
「…お…さん…?」
「ん? 今、何か?」
「お父さ~んっ!」
ヘッドギアが外れて、隠れていた素顔が見えた?
何処となく、葉月や睦月に似てなくも無くは無い?
いや、その前に俺にかけ寄り抱きついて来たお姉さん?
「く、くるし…」
「お父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さんお父さん!」
「お、落ち着いて、サリー!
その人はアナタのお父さんじゃないわ!」
何なんだ?
今度はお兄ちゃんでなく【お父さん】なん?
6
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる