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「へいへいへーい!俺結局、お前からまだ感謝の言葉をなんも貰ってないんだけど、俺の提案した計画は結局どうなったんだ?」
「私の疲労度合いを見て分かりませんか?大失敗ですよ」

あれから2か月ほど。結局謎の責任を取らせるというデートは既に終わっていた。そして今日はまたしてもカインとのデートの日。私は完全に気落ちしていた。
実のところ、前回のデートは物凄く楽しかった。しかしそれが問題なのだ。私の素が出た状態で受け入れられている上に、一緒にいて楽しいというのは甘美な毒すぎた。
まあ簡単に言えば、ちょっと絆されかけて来ていることに対して、私は危機感を感じている。何が天啓だ。このオッサンの言うことをホイホイと聞いた私がバカだった。

「ふーん。まあでも、カミングアウトする前よりは楽そうに見えるけどな」
「目、腐ってるんじゃないですか?」
「腐ってねえよ!だって前回帰ってきた時、明らかにウキウキしてたじゃねえか!!」
「ウキウキしているのが問題なんですよ!!」

そう言うと、叔父さんは、何故それが問題なのか分からないという顔をした。そりゃそうだ。本来、婚約する……かもしれない人間同士であれば、一緒にいて楽しいというのは非常に良い事だ。しかし、私はカインと婚約する気など一切ない。

「このまま、婚約したいくらいに、また好きになっちゃったらどうするんですか」

机に頭を突っ伏す。
今迄の私は、カインとなんて婚約したくない、自分を殺した相手だぞと認識出来ていた筈なのに、今は以前のような……否、それ以上の深い愛おしさのような感情が芽生えかけている。
私と、この国が生き延びるための絶対条件は、カインと婚約しないことだ。婚約さえしなければ、あの惨劇は起きない筈なのだから。

「ええ……うっわ、乙女だ」
「はあ。引きたければ、勝手に引いてください。私は心が弱いからこそ、これ以上カインを好きになりたくないんです」
「難儀なこったな。お前の人生だ、俺は別にあの王子の手を取って見ても良いと思うんだが。俺から見ても、そんな悪いやつには見えねえし、これから起こる未来についても、なんか見逃してる部分があるんじゃねえの?」
「叔父さんだって、結局母様の手を離したじゃない」

無言の空間。
私は酷い人間だ。これを言ってしまえば、叔父さんが押し黙る事を分かっていて言った。折角、叔父さんが珍しく私に気を遣っていたというのに。
そしてそんな空間を切り裂くように響く、ベルの音。その後に続いた、以前よりも男らしく低くなった声に、私は溜息を吐いた。

「迎えに来たよ、俺のナーシャ
「……カイン、私は貴方のものではありません。あと、次に姫呼びをしたら顔にこのフライパンをめり込ませます」
「ハハッ、怖いな。じゃあ、早速出掛けようか」

気安くなった会話、お互いの呼び方。
私は来たる日に、きちんとこの関係を、そして気持ちを断ち切れるのだろうか。未来への恐怖は募るばかりだ。
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