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オルトロス=ランドクルース。彼は王子様っぽい堂々とした容姿とは裏腹に、戦い方は相手の裏をかくような陰湿なものだった。
初撃で、スタートの合図もなく攻撃してきたところからも分かるが、正々堂々と戦うタイプではないようだ。使う武器も剣――かと思いきや、振りかざされた瞬間に遠距離まで伸びて鞭のようにしなってこちらを攻撃してくる。ウィップソードと呼ばれるものだった。
遠距離戦では投げナイフ。これは刺さった地面が溶けたことから、何かしらの毒が塗り込まれていると分かる。
中距離では私が魔法を使うこともあって同格。遠距離ですら向こうのナイフの精度が高いが、弓という武器を私が使う故に、向こうが魔法と組み合わせて戦ったとしても、私の方が若干有利と言ったところか。
多分だが、距離の取り方から見ても、彼は中遠距離が得意なタイプだ。私と同じと言えるだろう。それを考えると、近距離戦には持ち込んでこない。少し有難かった。
しかし見た事がない、変わった戦い方をしてくるせいで、正直やりにくい。フェイントがとにかく多いのだ。そしてフェイントだと思った魔法が実体だったりする。
確かに、私やカインを次回では追い越していると言うだけの実力はあることが分かった。それに、彼の戦い方は非常に興味深い。基本的に正面から戦う私や、カインが使う事のないような戦法ばかりを打ってくるのだ。
「遠距離では君が有利、中距離では同格か。じゃあ、近距離はどうかなっ!?」
予想が外れた。
近付いてこないと思っていた相手が急に近距離戦を仕掛けてくると、反応が遅れるものだ。ウィップソードが変形して巨大な鎌に変わる。それで右手が切り付けられそうになったところを自身の腕に氷塊をまとわりつかせることで、なんとかその斬撃をいなした。
「腕、切れたらどうしてくれるんですか!?」
「この学院の保険医は優秀だ。腕の1つや2つくらいくっつけられる。それに俺の切り口は綺麗だと評判だから、問題ない」
問題しかない。
ヴォルフクリンゲの連中はイカれているという話は、ルナフルールでよく聞いていたが、ここまでやばいやつがいるとは思っても見なかった。でも確かに、カインも最初、私の足を焼き切ろうとしていた。この思考がここでは普通なのかもしれない。
どうしよう、急にここでやっていける自信がなくなってきた。でも今まで誰とも仲良くなっていなくて賢明だったのかもしれない。この人、戦闘狂すぎる。
次々に飛んでくる鎌とナイフの攻撃を、氷魔法で守ったり、槍で弾いたりして大きな傷になるのを避ける。それと同時に、使っている槍に少しずつ魔術式を流すことで、込め続けていた。
「ほら、守ってるだけじゃ、勝てないぞ。まあ、近距離戦が苦手みたいだから仕方ないか」
「苦手?誰がそんなこと言ったんですか?」
槍を大きく斜めに裂くように振るって、人一人分程の距離をオルトロスに取らせたと同時に、氷製の槍を地面に突き刺す。
これで私を中心に直径10メートルほどの魔法陣が地面から浮き出た。
「くっそ、なんかやってると思ったら、槍に――」
「これで!終わり!!氷刃!!」
魔法陣の上に絶え間ない氷の刃の雨が降り続ける。
鋭利なソレは、私に触れた瞬間に掻き消えるが、地面は全て抉れている。どうせ向こうも私の事を殺す勢いで来ていたのだ。さて、大口を叩いていたオルトロスはどうなったのか――とそちらを見ると、目の前にオルトロスはいなかった。
いたのは……魔法陣の外で横になる巨大な犬――否、狼だった
初撃で、スタートの合図もなく攻撃してきたところからも分かるが、正々堂々と戦うタイプではないようだ。使う武器も剣――かと思いきや、振りかざされた瞬間に遠距離まで伸びて鞭のようにしなってこちらを攻撃してくる。ウィップソードと呼ばれるものだった。
遠距離戦では投げナイフ。これは刺さった地面が溶けたことから、何かしらの毒が塗り込まれていると分かる。
中距離では私が魔法を使うこともあって同格。遠距離ですら向こうのナイフの精度が高いが、弓という武器を私が使う故に、向こうが魔法と組み合わせて戦ったとしても、私の方が若干有利と言ったところか。
多分だが、距離の取り方から見ても、彼は中遠距離が得意なタイプだ。私と同じと言えるだろう。それを考えると、近距離戦には持ち込んでこない。少し有難かった。
しかし見た事がない、変わった戦い方をしてくるせいで、正直やりにくい。フェイントがとにかく多いのだ。そしてフェイントだと思った魔法が実体だったりする。
確かに、私やカインを次回では追い越していると言うだけの実力はあることが分かった。それに、彼の戦い方は非常に興味深い。基本的に正面から戦う私や、カインが使う事のないような戦法ばかりを打ってくるのだ。
「遠距離では君が有利、中距離では同格か。じゃあ、近距離はどうかなっ!?」
予想が外れた。
近付いてこないと思っていた相手が急に近距離戦を仕掛けてくると、反応が遅れるものだ。ウィップソードが変形して巨大な鎌に変わる。それで右手が切り付けられそうになったところを自身の腕に氷塊をまとわりつかせることで、なんとかその斬撃をいなした。
「腕、切れたらどうしてくれるんですか!?」
「この学院の保険医は優秀だ。腕の1つや2つくらいくっつけられる。それに俺の切り口は綺麗だと評判だから、問題ない」
問題しかない。
ヴォルフクリンゲの連中はイカれているという話は、ルナフルールでよく聞いていたが、ここまでやばいやつがいるとは思っても見なかった。でも確かに、カインも最初、私の足を焼き切ろうとしていた。この思考がここでは普通なのかもしれない。
どうしよう、急にここでやっていける自信がなくなってきた。でも今まで誰とも仲良くなっていなくて賢明だったのかもしれない。この人、戦闘狂すぎる。
次々に飛んでくる鎌とナイフの攻撃を、氷魔法で守ったり、槍で弾いたりして大きな傷になるのを避ける。それと同時に、使っている槍に少しずつ魔術式を流すことで、込め続けていた。
「ほら、守ってるだけじゃ、勝てないぞ。まあ、近距離戦が苦手みたいだから仕方ないか」
「苦手?誰がそんなこと言ったんですか?」
槍を大きく斜めに裂くように振るって、人一人分程の距離をオルトロスに取らせたと同時に、氷製の槍を地面に突き刺す。
これで私を中心に直径10メートルほどの魔法陣が地面から浮き出た。
「くっそ、なんかやってると思ったら、槍に――」
「これで!終わり!!氷刃!!」
魔法陣の上に絶え間ない氷の刃の雨が降り続ける。
鋭利なソレは、私に触れた瞬間に掻き消えるが、地面は全て抉れている。どうせ向こうも私の事を殺す勢いで来ていたのだ。さて、大口を叩いていたオルトロスはどうなったのか――とそちらを見ると、目の前にオルトロスはいなかった。
いたのは……魔法陣の外で横になる巨大な犬――否、狼だった
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