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12.ロイの経緯②
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ロイがアリアのお世話係を首にされた後。
自分はずっとアリアの迷惑になっていたのかもしれない、アリアを助けているつもりでいて、本当は彼女の輝かしい未来を曇らせていたのかもしれないという自己嫌悪に陥ったロイは、放浪の旅をしていた。毎日殆ど食事もとらずに、睡眠もとらず、ただ歩き、魔物が邪魔をしてくればそのまま殺す。そうして実家に帰ることもせず、ただ無意味に世界をぶらついていた。何故生きているのか分からない、日々。アリアに会う前に戻ったようだった。
暫くそんな日々を続けていたところ、ずっとロイを探していたのだというクレティアに見つかった。そして実家に連れ帰られた。憔悴しきったロイは兄や姉に支えられ、初めて彼女らに目を向けた。自身はこんなにも心配されていたのか、と。そうは言っても失ったものは大きい。落ち着いた生活に戻った後は特に、考えないようにしていても、ことある毎にアリアの事を考えてしまう。
例えば朝起きてカーテンを開ける時。
”お嬢様は朝起きるのがが苦手だ ”
”起きたくないと駄々をこねるお嬢様を起こさなくては―― ”
例えば食事をとっている時。
”お嬢様は朝食は少し硬めのスクランブルエッグとパンが好きだった ”
”この野菜はお嬢様が苦手としているものだ。どうやって食べさせよう…… ”
――そう思い出して、アリアに対して何かしらの声を掛けそうになる度に彼女がもういない事を実感するのだ。そして手がそれ以上動かなくなり、そのまま一日を終える。
元々完全な人間とは言い難かったが、戻ってきた後はまるで廃人のようになってしまった弟に対して、ロイの姉と兄が取った解決策は、かなり無理矢理なものだった。
『考える暇もないくらいに仕事を積んで、忘れさせる』
そうして姉であるクレティアが設立したばかりのギルドの副団長に任命され、書類仕事に討伐にとこき使われる日々が始まった。お世話係をしていた時期に身に着けていた様々なスキル、そして元々高かった戦闘能力のお陰で、ロイは実のところとてもクレティアの役に立っていた。
極限まで仕事をして、いつの間にか寝落ち、そしてまた仕事。思考の挟む暇のない日々が、ロイにとっては丁度良かった。
忘れるための日常を4年くらい続けた頃だろうか。そろそろ治っただろうと、クレティアは長期の休みをロイに与えた。しかしそれがいけなかった。ロイはその間に、またアリアのことを日常的に考えてしまう状態に逆戻りしてしまったのだ。兄と姉、そして誰よりもロイの想定以上に、ロイの中のアリアの存在は大きかった。
それはギルドの仕事に戻ってからも続いた。アリアの事ばかりが頭に浮かび、クレティアから任されたギルドの仕事も手につかない状態。離れている時間が長くなっている故に増していく執着の心。
それは治るどころか、誰の目から見ても目に見えて日に日に悪化しているのが分かるほどに悪化し、積み重なっていく。
クレティア曰く、その時のロイは『役立たずの腑抜けに逆戻りしていた』という。
そして極めつけはクエスト中の失敗だ。普段だったら無傷で帰ってこられるような魔物の討伐だったが、クエスト中にアリアの事を考えすぎて、大怪我を負ってしまう。
因みにこの時の魔物はコクーン系の魔物であり、”お嬢様がよく捕まえていた虫と似ているな”などと考えていた時に負った怪我だったという。その後も何度も彼は同じような経緯で怪我を負うことになる。
離れていた時期の話を聞いたアリアも呆れてしまったが、ロイはもうどんなことをしても結局、アリアの事を忘れられなかったそうだ。
自分はずっとアリアの迷惑になっていたのかもしれない、アリアを助けているつもりでいて、本当は彼女の輝かしい未来を曇らせていたのかもしれないという自己嫌悪に陥ったロイは、放浪の旅をしていた。毎日殆ど食事もとらずに、睡眠もとらず、ただ歩き、魔物が邪魔をしてくればそのまま殺す。そうして実家に帰ることもせず、ただ無意味に世界をぶらついていた。何故生きているのか分からない、日々。アリアに会う前に戻ったようだった。
暫くそんな日々を続けていたところ、ずっとロイを探していたのだというクレティアに見つかった。そして実家に連れ帰られた。憔悴しきったロイは兄や姉に支えられ、初めて彼女らに目を向けた。自身はこんなにも心配されていたのか、と。そうは言っても失ったものは大きい。落ち着いた生活に戻った後は特に、考えないようにしていても、ことある毎にアリアの事を考えてしまう。
例えば朝起きてカーテンを開ける時。
”お嬢様は朝起きるのがが苦手だ ”
”起きたくないと駄々をこねるお嬢様を起こさなくては―― ”
例えば食事をとっている時。
”お嬢様は朝食は少し硬めのスクランブルエッグとパンが好きだった ”
”この野菜はお嬢様が苦手としているものだ。どうやって食べさせよう…… ”
――そう思い出して、アリアに対して何かしらの声を掛けそうになる度に彼女がもういない事を実感するのだ。そして手がそれ以上動かなくなり、そのまま一日を終える。
元々完全な人間とは言い難かったが、戻ってきた後はまるで廃人のようになってしまった弟に対して、ロイの姉と兄が取った解決策は、かなり無理矢理なものだった。
『考える暇もないくらいに仕事を積んで、忘れさせる』
そうして姉であるクレティアが設立したばかりのギルドの副団長に任命され、書類仕事に討伐にとこき使われる日々が始まった。お世話係をしていた時期に身に着けていた様々なスキル、そして元々高かった戦闘能力のお陰で、ロイは実のところとてもクレティアの役に立っていた。
極限まで仕事をして、いつの間にか寝落ち、そしてまた仕事。思考の挟む暇のない日々が、ロイにとっては丁度良かった。
忘れるための日常を4年くらい続けた頃だろうか。そろそろ治っただろうと、クレティアは長期の休みをロイに与えた。しかしそれがいけなかった。ロイはその間に、またアリアのことを日常的に考えてしまう状態に逆戻りしてしまったのだ。兄と姉、そして誰よりもロイの想定以上に、ロイの中のアリアの存在は大きかった。
それはギルドの仕事に戻ってからも続いた。アリアの事ばかりが頭に浮かび、クレティアから任されたギルドの仕事も手につかない状態。離れている時間が長くなっている故に増していく執着の心。
それは治るどころか、誰の目から見ても目に見えて日に日に悪化しているのが分かるほどに悪化し、積み重なっていく。
クレティア曰く、その時のロイは『役立たずの腑抜けに逆戻りしていた』という。
そして極めつけはクエスト中の失敗だ。普段だったら無傷で帰ってこられるような魔物の討伐だったが、クエスト中にアリアの事を考えすぎて、大怪我を負ってしまう。
因みにこの時の魔物はコクーン系の魔物であり、”お嬢様がよく捕まえていた虫と似ているな”などと考えていた時に負った怪我だったという。その後も何度も彼は同じような経緯で怪我を負うことになる。
離れていた時期の話を聞いたアリアも呆れてしまったが、ロイはもうどんなことをしても結局、アリアの事を忘れられなかったそうだ。
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