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13.ロイの経緯③
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アリアと離れて6年目。
このままではロイが死ぬのではないかと心配すると同時に彼の執着心に呆れ果てたクレティアが『そんなに気になるなら見に行ってこい!』と提案した……もとい、ギルドから放り出したのが切っ掛けでロイはアリアの様子を見に行くことになる。
しかし問題はここからだった。
そこでアリアが立派な公爵家の女性として幸せに過ごしていたのならロイも諦めがついただろうに、彼女の公爵家での状態は”最悪”だったのだ。
変装して忍び込んだ夜会で第三王子と共にいたアリアの瞳は濁り、ただひたすらに苦しさを隠すようで……昔の光り輝いていた瞳の面影など欠片もない。
調べてみると、アリアは常人では考えられない程に厳しく躾けられ、少しでも失敗したら精神的にも肉体的にも厳しい罰を。完璧な令嬢となれるように教育され、両親はアリアに対して、一つのミスも許さない。それなのに自分たちそんなアリアによてもたらされた恩恵で私腹を肥やす。……彼女が置かれている状況はとにかく酷かった。
そしてそこでロイは決めたのだ。アリアをあの地獄から解放することを。
だからそれからはずっと暇な時は公爵領であの領主の地位をひっくり返してやるための裏工作を進めた。
しかしどれだけ準備を重ねたとしても、敵は腐っても公爵家。ロイ一人だけでの力だけでは、公爵家を潰すには足り得ない事は明白。だから彼は同時並行で最終手段であるクレティアの手を借りるために奔走した。
その甲斐あってか、ここ最近になってやっと少しだけ協力の兆しが見えて来たクレティアによってとある条件を突き付けられる。
ずっと放置されていたアルカード傭兵ギルドの超高難易度任務の達成――。
この任務はギルドの長たるクレティアすらも行ったら、五体満足では帰ってこれまいと放置していたものだった。
そんなものを条件に出す程に……それほどまでに貴族の家を一つ潰すという事はリスクが高い。
だからクレティアは最初はロイを諦めさせるために送り出したのだが、ロイは丁度今日そのクエストを全て達成してきたのだそうだ。
だから今日中にクレティアに協力を取り付け、近々アリアを救出しに行く……はずだったのだが、帰ってきてみるとギルドにアリアがいた。
だからその事実に驚いて、現実だとは思えなくて抱き着いてしまったのだとロイは説明してくれた。
***
ロイはアリアがいなかった期間、自分がどれだけ苦しかったかや昔の出来事――恥ずかしい思い出とでもいうべきか――をいくつも例に出してくるのもあり、終始アリアは赤面していた。
クレティアもエルカもいるというのにそんなことを気にも留めずに語り続けるロイ。その内容は殆どがまるで子煩悩の親の惚気のようにしか聞こえないアリアに対する感情、そして悪気なく行われる過去の暴露……。
恥ずかしかった。でもそれ以上に――。
「あの……ありがとう、ロイ」
「え……?」
「私は確かにずっとあそこにいて苦しかった。誰も助けてくれないって嘆いてもいた。でもあの時の私は今、貴方がずっと私を助けようとしてくれていたっていう事を聞いて救われたの……嬉しかった。だから、ありがとう」
「っ身に余る光栄です――」
そう。嬉しかったのだ。あそこでは永遠に誰も救ってくれることはないと思い込んでいた自分を気に掛けて、同時に助けようと奔走してくれている人がいた。
それだけで……それを知れただけで自分は独りじゃなかったんだと、心配してくれる人がいたんだと心がポカポカと温かくなっていく。そして今、ここでロイと再会できた。だからあの苦しみをずっと耐え続けてきた日々も無意味ではなかったのだと思えるような気がした。
このままではロイが死ぬのではないかと心配すると同時に彼の執着心に呆れ果てたクレティアが『そんなに気になるなら見に行ってこい!』と提案した……もとい、ギルドから放り出したのが切っ掛けでロイはアリアの様子を見に行くことになる。
しかし問題はここからだった。
そこでアリアが立派な公爵家の女性として幸せに過ごしていたのならロイも諦めがついただろうに、彼女の公爵家での状態は”最悪”だったのだ。
変装して忍び込んだ夜会で第三王子と共にいたアリアの瞳は濁り、ただひたすらに苦しさを隠すようで……昔の光り輝いていた瞳の面影など欠片もない。
調べてみると、アリアは常人では考えられない程に厳しく躾けられ、少しでも失敗したら精神的にも肉体的にも厳しい罰を。完璧な令嬢となれるように教育され、両親はアリアに対して、一つのミスも許さない。それなのに自分たちそんなアリアによてもたらされた恩恵で私腹を肥やす。……彼女が置かれている状況はとにかく酷かった。
そしてそこでロイは決めたのだ。アリアをあの地獄から解放することを。
だからそれからはずっと暇な時は公爵領であの領主の地位をひっくり返してやるための裏工作を進めた。
しかしどれだけ準備を重ねたとしても、敵は腐っても公爵家。ロイ一人だけでの力だけでは、公爵家を潰すには足り得ない事は明白。だから彼は同時並行で最終手段であるクレティアの手を借りるために奔走した。
その甲斐あってか、ここ最近になってやっと少しだけ協力の兆しが見えて来たクレティアによってとある条件を突き付けられる。
ずっと放置されていたアルカード傭兵ギルドの超高難易度任務の達成――。
この任務はギルドの長たるクレティアすらも行ったら、五体満足では帰ってこれまいと放置していたものだった。
そんなものを条件に出す程に……それほどまでに貴族の家を一つ潰すという事はリスクが高い。
だからクレティアは最初はロイを諦めさせるために送り出したのだが、ロイは丁度今日そのクエストを全て達成してきたのだそうだ。
だから今日中にクレティアに協力を取り付け、近々アリアを救出しに行く……はずだったのだが、帰ってきてみるとギルドにアリアがいた。
だからその事実に驚いて、現実だとは思えなくて抱き着いてしまったのだとロイは説明してくれた。
***
ロイはアリアがいなかった期間、自分がどれだけ苦しかったかや昔の出来事――恥ずかしい思い出とでもいうべきか――をいくつも例に出してくるのもあり、終始アリアは赤面していた。
クレティアもエルカもいるというのにそんなことを気にも留めずに語り続けるロイ。その内容は殆どがまるで子煩悩の親の惚気のようにしか聞こえないアリアに対する感情、そして悪気なく行われる過去の暴露……。
恥ずかしかった。でもそれ以上に――。
「あの……ありがとう、ロイ」
「え……?」
「私は確かにずっとあそこにいて苦しかった。誰も助けてくれないって嘆いてもいた。でもあの時の私は今、貴方がずっと私を助けようとしてくれていたっていう事を聞いて救われたの……嬉しかった。だから、ありがとう」
「っ身に余る光栄です――」
そう。嬉しかったのだ。あそこでは永遠に誰も救ってくれることはないと思い込んでいた自分を気に掛けて、同時に助けようと奔走してくれている人がいた。
それだけで……それを知れただけで自分は独りじゃなかったんだと、心配してくれる人がいたんだと心がポカポカと温かくなっていく。そして今、ここでロイと再会できた。だからあの苦しみをずっと耐え続けてきた日々も無意味ではなかったのだと思えるような気がした。
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