婚約者曰く、私は『誰にも必要とされない人間』らしいので、公爵令嬢をやめて好きに生きさせてもらいます

皇 翼

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17.アリアの道

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魔物を倒し、少年の傷を塞いだ時。私の心にあったのは助けられたという安心感と守り切れたという達成感、そして自分でも誰かを助けることが出来るのだと知った充足感だった。

因みに少年の傷は念のためギルドの医療担当者にも確認をとった結果、傷ついた形跡すらない程に完璧に完治している事が判明した。あんなにも酷い傷だったのにも関わらず、だ。
それに、一緒にいた妹の証言と彼の家庭環境を鑑みると、彼らは栄養失調気味だった筈だが、少年にはそんな傾向は全く見えなくなっていた。健康状態も異常なしと太鼓判を押された。

ここで判明した妖精の鉤爪の生命強化の能力……それは文字通り、魔法によって生命力を強化、活性化させることにより傷を治癒させるという途轍もなく強力な能力だった。妖精の鉤爪について少しだが記載されていた文献にも『傷を癒せる』やら『寿命を延ばせる』だのと載っていたが、読むのと実際に体験してみるのでは全く違う。


実のところ、この世界には基本的に魔法で傷を治すことが出来る人間――治癒師ヒーラー――は存在する。
だがしかし彼らに使えるのは、それこそかすり傷のようなものや軽い内部出血と言ったものを治すといった程度のものである。他人の生命力、ひいては魔力に干渉するというのはそれほどまでに困難且つ難易度の高い物なのだ。

その証拠にこのラーガレット王国で一番と言われている治癒師ヒーラーも刃物で付けられた切り傷を治せるというものだった。
私と、私が契約した妖精の鉤爪の能力はまさしく規格外のモノのようだった。
人間にとって致命傷とも言える傷を治すことの出来る能力。文献を信じるのであれば、その上寿命までもを伸ばせるかもしれない。もしこれが権力のある者に知れたならば良くて監禁、悪ければ国の魔導実験施設へ直行だろう。

事実私も、この妖精の鉤爪の真の能力を知ったクレティアとロイにその辺りの事情を説明された。だから使えるようになって早々悪いが、この能力は秘匿としておくように――と。それともうこれ以降は危険なことに首を突っ込まないようにとも釘を刺された。

全て私を想っての事だというのは分かっていた。それに関しては私は納得し、当然だと理解することが出来る。
けれど思うのだ。自分は誰かが傷ついたらきっとこの能力を使ってしまうだろう……と。そしてあの魔物を倒すことができたことも自信につながってしまった。この力があれば、今までに出来なかったことも出来ると思ってしまったのだ。

それになによりも、私は返したかった。このギルドに入ってから受けた恩を、優しさを、無償の愛情を――。自身とレオンを助けてくれたクレティアのような存在になりたいと今回、子供達を助けた時に強く思った。

これは自己満足かもしれない。それに二人には反対されるかもしれない。
それでも私は自分からやりたいと思えることに初めて出会ったのだ。

クレティアの様な傭兵になって、誰かを助けてあげたい。そして少しでもそれでクレティアの助けになれたら、と思った。
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