【完結】君の隣で息を吸う

かんな

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十話 沙織視点③

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そして数日が経つ。
その間、私は龍馬とキスしたり、デートをしたりしていた。……だけど、やっぱりどこかでモヤモヤしている。この気持ちの正体が分からない。龍馬には申し訳ないけど、杏奈のことをずっと考えていた。


だから、龍馬が〝愛してる〟と言われると、笑顔で応えられる。だけど心の中ではモヤモヤしていて……まるで、嘘をついているような感じだった。


こんな気持ちのまま付き合うのは良くない。でも、この人を離れたら、私はまた独りぼっちになってしまう。それが怖くて離れられない。きっとこの人と離れたら、私は何もかも失う気がする。


だから離れることが出来ない。否、離れたくない、と思っている……ような気がする。自分にもハッキリとした答えが出せずにいた。そんなある日――。


「杏奈ー、帰ろー!」


声が聞こえてきた。振り返ると、そこには杏奈と……


「(………確か、鈴木春香?)」


鈴木春香。みんなと仲が良くて、クラスの人気者。いつも笑顔を絶やさない女子、という印象がある。誰にでも優しく、気配りが出来る。そんな女の子だ。……いい意味で杏奈や私とは、正反対の性格をしている。


「わ……、ちょっと春香。引っ張らないでよ……」


そう言って笑顔で微笑む杏奈。その表情からは、春香に対する好意を感じることが出来る。……いいことじゃない、別に。
でもなんだろう?胸の奥から黒い感情が出てくる。触れないで、近づかないで……だって杏奈は……


――私の……


「ああ………そっか」


今更、気づいてしまった気持ち。どうして今まで分からなかったんだろう……いや、無意識に考えないようにしていただけなのかもしれない。


だって――。


「私…………杏奈のこと………」


――恋していたんだ。



今更、そんなことを気づいてしまった。どうしようもないくらい好きになっていたんだ。
気づいた時にはもう遅い。杏奈はもう私以外の友達が出来ている。


「(こっち、見てよ……)」


そう思っても、振り向いてくれない。……杏奈は私のことをきっと友達としか思っていない。
だから、私がどんなに想っても届かない。……なら、この想いを伝えることはなく、このまま胸にしまっておこうと思った。


だってどうせ、叶うわけがない。断られて今の関係壊すなんて嫌だし……なら、この関係を維持したい。
だから私は自分の気持ちを押し殺すことにした。だってそうしないと、私の心が……壊れてしまいそうだから……。


「(きっと……これでいいのよね?)」


と、自分で言い聞かせながら……
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