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第五章 変わりゆく世界、変わらない世界
第12話 告げられた真実
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その後、ワーグ達が大八車に一杯の酒樽を買ってきたことで、夕食は乾杯と共にヤッシー達を歓迎する宴会へと移行するが、エリスの姿はあってもレイの姿は見えなかった。
翌日、身支度を整え食堂へ下りると、ゴルドがソルトを待っていたようで、ソファに座り茶を飲んでいた。
「ゴルドさん、どうしたんですか?」
「いやな。ソルトに礼を言いたいのと、後はアイツらの顛末だな」
「礼はいいけど、アイツらの……」
「ああ、ソルトの言う通りに若いのを宿直にして、他の連中は早く帰らせたんだ。で、今朝早く行ってみれば、若いのが居眠りしていた隙に全員が始末されていた。若いの以外はな」
そう言ってゴルドさんは拳をギュッと握りしめる。
「やっぱり……」
「レイ……大丈夫なのか?」
起きてきたばかりでいつもなら、ボ~ッとしているのに今日はちゃんと目が覚めているようだ。
「うん。ちょっと夢見は最悪だったけどね」
「悪かった……ごめん」
そう言って、レイはソルトを一瞥しソルトはレイに謝る。
「ううん、いいの。ソルトに見せられて分かったの。確かにあんなに酷いことした連中を生かして野放しにするのがどれだけ危険か。でもね、やっぱりどこかで納得出来ないの。どうしてだろうね。頭では納得しているつもりなのにね。こんなのおかしいよね」
また、泣きそうな顔になるレイに何も言えないでいるとエリスがレイの横に座り、頭を優しく撫でる。
「レイ。ほら、分かる? あれ」
「え? 何?」
エリスは外で子供と遊んでいる男……ヤッシー達を指差す。
「あの人達はレイが助けなかったら、今頃は牢屋の中で一緒に始末されていたハズよ。でも、レイが助けたいってソルトに言ったから、あの三人はああやって子供と遊んでいるのよ。それだけでもレイがしたことには意味があるの。それも無駄なことだったと思うの?」
「エリス……私……私がしたことは……」
「そうよ、ちゃんと意味があったのよ」
「エリス……うわぁぁぁん……」
「バカね。でも、これもソルトが今まで甘やかしたせいでもあるのよ。分かってる?」
「俺はレイを甘やかしたつもりはないが……」
「あれ? もしかして、無意識だったの?」
「皆はソルトが意識して甘やかしていると思っていたのよ?」
エリスとサクラにそう言われるが、ソルト自身は覚えがない。敢えて言うとすれば、同郷だからと、いつか元の世界に返すんだと思っていたことが無意識にレイを危険な目に合わせないように、殺生から離そうとしていたのだろうか。
「だけど、甘やかしたと言われてもな~」
「うん、まあね。ソルトにはそこまで期待してないわ。でも、いつかはレイ自身に選ばせなさいよ」
「私が選ぶ? 何を選ぶというの?」
レイはエリスに選べと言われるが、何を選べと言われているのかよく分からないでいる。そして、そんなレイに対し、エリスが話す。
「いい? レイ、あなたはこちらの世界で生きていく覚悟は出来ているの?」
「え? なんで? だって、いつかは帰れるんじゃないの? ソルト、違うの?」
レイがソルトに対し、帰れるんじゃないのかと問い詰めるが、ソルトはその質問に対し、黙って首を横に振る。
「え、嘘……帰れるんじゃなかったの?」
「レイ、よく聞いてくれ。ルーにも確認したんだが、現時点では帰る手段はない。レイを帰してやりたいと思っていたのは確かだが……」
「嘘! だって、ソルトだって、『送還魔法』を探すって言ってたじゃない! アレも嘘だったの?」
「あ~うん、言ってた。でも、あの時点で帰る方法はないって結論が出てたんだよ。でも、あの時にそう言ってたら、レイは納得してくれなかっただろ」
「そりゃ、そうかもだけど……今言う?」
確かにレイに真実を告げるとして、今のタイミングが最適かと言われればどうだろうとソルトは考えてしまうが、考えてもしょうがないと開き直る。
「それは、ごめん。でも、今はレイが選ぶ時が来たと思って。この世界で生きていくなら、しっかりとした覚悟を持たないとダメになるから」
「……うん、ソルトの言いたいことは分かった。でも、もう少し時間が欲しいかな」
「そうね。今じゃなくてもいいけど、でもちゃんと答えは出すのよ」
エリスがレイの頭を撫でながら、優しく言う。
「じゃ、俺はこれで帰るが、その内領主に呼ばれるだろうな」
「やっぱり、それは避けられないよね」
「そうだな。俺はギルマスに今回のことを正直に話すつもりだ。それでギルマスがなんと言うかは分からないが、俺はもう領主のことを信じることは出来ない。ったく、ソルトのせいで……」
「え~それ、俺に言いますか?」
「何言ってんだ。全部、お前発信じゃないか! くそっ、いい領主だと思っていた俺を返してくれ!」
「はいはい、分かりましたから、今日は帰りましょうね」
「あ! バカにしているだろ! どうせ、俺は領主の上っ面だけを見ていたバカだよ! くそっ! もう、酒飲みたくなってきた!」
「はいはい、ちゃんと仕事はしましょうね! その内、また魔の森にでも行こうね」
「あ~もう、分かったよ。じゃあな! ふん!」
ゴルドを見送ったソルトのお腹が盛大に『ぎゅるるる~』と鳴り出す。
「そう言えば、朝ご飯がまだだった……」
翌日、身支度を整え食堂へ下りると、ゴルドがソルトを待っていたようで、ソファに座り茶を飲んでいた。
「ゴルドさん、どうしたんですか?」
「いやな。ソルトに礼を言いたいのと、後はアイツらの顛末だな」
「礼はいいけど、アイツらの……」
「ああ、ソルトの言う通りに若いのを宿直にして、他の連中は早く帰らせたんだ。で、今朝早く行ってみれば、若いのが居眠りしていた隙に全員が始末されていた。若いの以外はな」
そう言ってゴルドさんは拳をギュッと握りしめる。
「やっぱり……」
「レイ……大丈夫なのか?」
起きてきたばかりでいつもなら、ボ~ッとしているのに今日はちゃんと目が覚めているようだ。
「うん。ちょっと夢見は最悪だったけどね」
「悪かった……ごめん」
そう言って、レイはソルトを一瞥しソルトはレイに謝る。
「ううん、いいの。ソルトに見せられて分かったの。確かにあんなに酷いことした連中を生かして野放しにするのがどれだけ危険か。でもね、やっぱりどこかで納得出来ないの。どうしてだろうね。頭では納得しているつもりなのにね。こんなのおかしいよね」
また、泣きそうな顔になるレイに何も言えないでいるとエリスがレイの横に座り、頭を優しく撫でる。
「レイ。ほら、分かる? あれ」
「え? 何?」
エリスは外で子供と遊んでいる男……ヤッシー達を指差す。
「あの人達はレイが助けなかったら、今頃は牢屋の中で一緒に始末されていたハズよ。でも、レイが助けたいってソルトに言ったから、あの三人はああやって子供と遊んでいるのよ。それだけでもレイがしたことには意味があるの。それも無駄なことだったと思うの?」
「エリス……私……私がしたことは……」
「そうよ、ちゃんと意味があったのよ」
「エリス……うわぁぁぁん……」
「バカね。でも、これもソルトが今まで甘やかしたせいでもあるのよ。分かってる?」
「俺はレイを甘やかしたつもりはないが……」
「あれ? もしかして、無意識だったの?」
「皆はソルトが意識して甘やかしていると思っていたのよ?」
エリスとサクラにそう言われるが、ソルト自身は覚えがない。敢えて言うとすれば、同郷だからと、いつか元の世界に返すんだと思っていたことが無意識にレイを危険な目に合わせないように、殺生から離そうとしていたのだろうか。
「だけど、甘やかしたと言われてもな~」
「うん、まあね。ソルトにはそこまで期待してないわ。でも、いつかはレイ自身に選ばせなさいよ」
「私が選ぶ? 何を選ぶというの?」
レイはエリスに選べと言われるが、何を選べと言われているのかよく分からないでいる。そして、そんなレイに対し、エリスが話す。
「いい? レイ、あなたはこちらの世界で生きていく覚悟は出来ているの?」
「え? なんで? だって、いつかは帰れるんじゃないの? ソルト、違うの?」
レイがソルトに対し、帰れるんじゃないのかと問い詰めるが、ソルトはその質問に対し、黙って首を横に振る。
「え、嘘……帰れるんじゃなかったの?」
「レイ、よく聞いてくれ。ルーにも確認したんだが、現時点では帰る手段はない。レイを帰してやりたいと思っていたのは確かだが……」
「嘘! だって、ソルトだって、『送還魔法』を探すって言ってたじゃない! アレも嘘だったの?」
「あ~うん、言ってた。でも、あの時点で帰る方法はないって結論が出てたんだよ。でも、あの時にそう言ってたら、レイは納得してくれなかっただろ」
「そりゃ、そうかもだけど……今言う?」
確かにレイに真実を告げるとして、今のタイミングが最適かと言われればどうだろうとソルトは考えてしまうが、考えてもしょうがないと開き直る。
「それは、ごめん。でも、今はレイが選ぶ時が来たと思って。この世界で生きていくなら、しっかりとした覚悟を持たないとダメになるから」
「……うん、ソルトの言いたいことは分かった。でも、もう少し時間が欲しいかな」
「そうね。今じゃなくてもいいけど、でもちゃんと答えは出すのよ」
エリスがレイの頭を撫でながら、優しく言う。
「じゃ、俺はこれで帰るが、その内領主に呼ばれるだろうな」
「やっぱり、それは避けられないよね」
「そうだな。俺はギルマスに今回のことを正直に話すつもりだ。それでギルマスがなんと言うかは分からないが、俺はもう領主のことを信じることは出来ない。ったく、ソルトのせいで……」
「え~それ、俺に言いますか?」
「何言ってんだ。全部、お前発信じゃないか! くそっ、いい領主だと思っていた俺を返してくれ!」
「はいはい、分かりましたから、今日は帰りましょうね」
「あ! バカにしているだろ! どうせ、俺は領主の上っ面だけを見ていたバカだよ! くそっ! もう、酒飲みたくなってきた!」
「はいはい、ちゃんと仕事はしましょうね! その内、また魔の森にでも行こうね」
「あ~もう、分かったよ。じゃあな! ふん!」
ゴルドを見送ったソルトのお腹が盛大に『ぎゅるるる~』と鳴り出す。
「そう言えば、朝ご飯がまだだった……」
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