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第八章 やるべきこと

第15話 先史文明の人達

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「なるほど確かにそれなら神に近付けるかも知れないわね……ん? シーナ、どうしたの?」
「あ、今思ったんですけど……私達を作った人はどこに行ったのでしょう」
「何? 急に哲学語り出して」
「別に哲学とかじゃなくて、私達を作れる程の人達が今はどこにいるのか、どうしているのか不思議に思いませんか?」
「あ、私もそれ思った!」
「うん、確かに。シーナやあの施設を作った程のいわゆる先史文明が今は何故衰退したのか、その人達はどこへ行ったのか……なあ、シルヴァ達は何か知っているんじゃないの?」
「そんな急に言われても」
「そもそもシルヴァに聞くのが間違いなのよ。って言う私も覚えていないというか知らないわ……ごめんなさい」

 地脈レイラインを管理する施設にシーナみたいな人造人間ホムンクルスを作れる程の技術にソルトの頭の中にシーナを宿す技術など……今も存在するのであれば、世界の様相はソルト達が知っている日本どころではないだろうと思う。

 ならば創世記から存在すると言われる龍の夫妻ならば、何か知っているかもと話を振ってみるが、シルヴァもブランカも知らないと言われてしまう。

 まあ、龍からしてみれば地べたで這いずる人間達のことなど微塵も考えたことなどないのだろうとソルトは考える。

 だが、それでも考えずにいられなかったシーナは「あ!」と声を上げる。

「私、思い出しました!」
「「「え?」」」

 シーナの思い出しました発言に皆が注目する。

「シーナ、急にどうした?」
「私、思い出しました。あ、でも思い出したというか、知識メモリの中に残っていたんですよ!」
「そんなのはいいから、早く教えてくれ! どこに行ったんだ」
「ソルトさん、なんでそんなに必死になっているんですか?」
「いや、別にそういう訳じゃなくて……」
「ふふふ、シーナ。よく考えてみて。そんな素晴らしい技術を持っている人なら、レイ達を還すことの手助けになる何かが分かるかもしれないし、ルーの身体だってソルトの理想通りに作れるかもしれないじゃない。ねぇソルト」
「ああ、ブランカの言う通りだ。だから、教えてくれシーナ頼む!」

 先史文明を作った人に会えれば、その人達の技術の何かしらを感じ取ることが出来れば、今の自分達の状況を少しでも変えることが出来るかも知れないとソルトが必死になるのを見てシーナが気の毒そうにしている。

「……もう、そんなに必死になられると答難いじゃないですか」
「と、いうことはもしかして……」
「はい、既に存在しません」
「あぁ~やっぱり……」
「ほらぁ~だから言いたくなかったんですよぉ。もう、そんなに気落ちしないで下さいよ。それに私達の作り方なら施設のどこかにあると思いますから。で、どうします?」
「ん? 何がだ?」

 どうやらシーナの知識の中では、既に先史文明を作った人達は滅んでいるらしいが、技術としては管理施設のどこかに残されているかも知れないと話す。

 そして、その中には当然、人造人間ホムンクルスに関する技術もあるだろうからルーの身体を作るのも問題ないだろうと言うとソルトの反応を伺う。

「ですから、人造人間ホムンクルスの作り方が分かったとしてですよ。ルーさんの身体をどういう風にデザインするんですか? ボンキュッボンですか? それとも私みたいな超スレンダータイプでしょうか? それとも思い切って幼児体型までいきますか? それともそれとも妖艶な熟女タイプですか? サクラさんとかブランカさんみたいな……アイタッ!」
「「熟女って言うな!」」

 ルーの身体を作るとしてシーナはソルトにどんな体型にするのかと揶揄うように尋ねながらサクラやブランカみたいな熟女タイプはどうかと言った所で頭に衝撃を覚えその場に蹲る。

「私は長く生きているだけなの! 決して熟女なんかじゃないから!」
「うん、私もまだ純潔の乙女だから同じく熟女ではない!」
「いやいやいや、歳「あ!」……すみません。なんでもないです」
「「うん!」」

 サクラやブランカが自分達は熟女ではないといろいろ言い始めるが、レイがそれでも歳が歳だからと言おうとして二人に睨まれてしまい口籠もる。

「まあ、ルーの身体のことはルーに任せるから。俺の意見が反映されることはない……と、思うよ」
「あぁ! なんでそこでハッキリ言い切らないの? なんか怪しい……」
「うっ……」
「ふふふ、レイさん。ルーさんはソルトさんの頭の中にいるんですよ。ソルトさんの好みくらいイヤでも熟知してしまっているでしょう」
『……』

 ルーの身体を作る時には、その造形についてはルーに任せると言ったソルトだったが、語尾を濁したことでレイが怪しいと言いだせば、シーナがソルトの態度について補足するとルーもソルトの頭の中で絶句する。

「ちょ、シーナ! 分かっていてもそう言うことは言わないで!」
「ふふふ、すみません。でも、そうなると心の奥底には理想とする体型ヒトがいるってことですね。あぁ~こんなことなら、さっき全部見ておけばよかったぁ~あぁ~一生の不覚です! あ、そうだ! もう一回、入れ替わってもいいですか?」
「ちょ、ちょっと落ち着こうか。ね」
「やっぱり、ダメですか。ちぇっ」

 ソルトは理想の体型について考えないようにすればするほど、頭の中では浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返すばかりだ。

 そしてシーナは自分のミスに気付きもう一度ルート入れ替わらせて欲しいと願うが、さすがに記憶の奥底深くまでサルベージされると分かっているのに到底受け入れることは出来ないとソルトはやんわりと断る。

「ねえ、話を戻すけどさ。その先史文明を作った人達はどうやって滅亡したの? だって、それだけn技術や文明があれば大抵の天変地異なら予防するなりして防ぐことが出来ると思うんだけど」
「ええ。ですから、それすら敵わない存在からの一方的な攻撃を受けました」
「「「は?」」」

 レイの質問に対しシーナはあっさりとを仄めかす。

 つまりは先史文明の人達はヒトならざる高位の存在からの一方的な攻撃を受け壊滅したと話す。

 そしてシーナが何故それを知っているかと言えば、施設の中のデータバンクに情報として記録されているモノだと言う。

「じゃあ、ルーが言うように……」
「ええ、間違いなく存在するかと……」
「でもさ、そもそもなんだけど先史文明の人達の何が気に障って壊滅させられたの? 何をしたら一人二人じゃなくて先史文明の人達全員を壊滅させるまでになったの?」
「……そこまでは記憶に残されていません。申し訳ありません」

 レイの質問内容はソルトも感じていたことだったが、そもそもの理由までは分からないと言われてしまう。

「と、なるとソルトが神に近付くと、同じ様に狙われる可能性がある……そういうことも考えておくべきよね。で、どうする?」
「どうするって……」
「ま、あなたのことだから少しでも可能性があるのなら、やるんでしょうね」
「……すまない。だから「ちょっと待って」……ブランカ」
「その先は今は言わないでいいから」
「いや、でも……」

 シーナから話を聞きブランカに今後どうするのかと問われるが、ソルトの気持ちとしては固まっている。

 そしてブランカもソルトの気持ちは分かっていた様で特に驚くこともない。

 だが、ソルトはその決心とは別にあることを口に出そうとしてブランカに止められてしまう。

「ふふふ、どうせ危ない目に遭うのが分かっているのならソルトから離れるなり、ソルトが離れるってことを言いたいんでしょ」
「……」
「あら、図星みたいね。でも、それは無理みたいよ」
「え?」
「ほら、見てご覧なさい」
「……どうして」
「どうしてって、また皆に聞いてみるつもり? 止めておきなさい。そんな分かりきっていることを何度も聞かされる私達の身にもなってよ。ってことでいいわね。皆も」
「「「はい!」」」
『私はどこまで一緒ですからね』

 ブランカの言う通り、ソルトは危険な目に遭うなら自分だけでいいと考えており、皆の為にも離れるのが一番いい方法だと思っていたが、ブランカだけでなく皆はソルトから離れることなど考えていないようでソルトも思わずウルッとしてしまう。
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