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第10話 一足早く着いたソータたち
しおりを挟む時は数日前に遡る。
「ほ、本当に帰ってこれた」
俺はもう見ることができないかと思っていた街の景色に感動していた。
俺は傷を負うことなく、なんとか街に帰ってくることができたのだ。
崖の下に落とされたときはどうなるかと思ったけど、まさかあそこから生還することができるなんて……。
道中は少し遠かったけど、『魔力探知』で魔物の少ない道を選んで進んだかいあって、安全委返ってくることができた。
それに、距離があるにしては思ったよりも時間はかからなかった。
パーティにいたときは、オリバたちのわがままを聞きながらだったから、非効率だったんだよなぁ。
そんなことを考えながら、ここまで一緒に来てくれた相棒をちらっと見る。
「ここがソータの住んでいる街か。ふむ、中々良い所じゃないか」
「まぁ、住みやすいかもね。とりあえず、冒険者ギルドに行って俺が死んでないことを報告しないと」
一刻も早くしなければならないことは、殉職の撤回だ。
殉職扱いになると、当然冒険者として活動ができなくなる。
そうなると、色々と複雑な手続きをしないとだろうし、少しでも早くオリバたちが出したであろう俺の殉職届が嘘だったことを報告しないと。
それに、殺されかけたことも報告しておかないとな。
パーティの追放だけならまだしも、さすがに殺されかけたことは許せない。
そう考えた俺は、一息つく間もなく冒険者ギルドに向かったのだった。
「あ、ソータくん、お疲れ様です」
「お疲れ様です、エリさん」
冒険者ギルドに向かうと、カウンターにいたギルド職員のエリさんが俺に声をかけてくれた。
いつもオリバたちが受ける依頼の手続きとかをやっていく中で、エリさんとはすっかり顔なじみになっていた。
「あれ? 『黒龍の牙』って、今依頼中でしたよね? ソータくんだけ先に帰って来たんですか?」
「え? 俺だけ? 他のメンバーたちってまだ帰って来てないんですか?」
俺は崖の下から帰って来たから少し時間がかかったけど、本来なら一日で帰ってこられる距離のはず。
それなのに、なんで俺の方が先に帰ってこれたんだろ?
「ふんっ……やはり、こうなったか」
ケルは力強い鼻息を吐いてから、そんなことを隣で呟いた。
ケルからしたら想定内だったのだろうか? あまり驚いているようには見えない。
「あらっ、可愛い子じゃないですか! 一緒にいるってことはソータくんの使い魔ですか? というか、今の声って……」
「ええ、使い魔のケルです。人間の言葉を話せるんですよ、変わってますよね」
エリさんがケルに興味を持ったみたいだったので、俺はケルを抱きかかえてエリさんに見せることにした。
エリさんはキャッと声を出してケルの可愛さに悶絶して、断りを入れてからケルの頭を撫でて癒されているようだった。
いちおう、ケルはケルベロスなんだけどなと思いながら、撫でられて心地よさそうにしているケルを見て俺は小さく笑う。
「あ、そうでした。それで、なんでソータくんだけ早く帰って来たんですか?」
エリさんは思い出したようにそう言うと、首を傾げる。
色々とあったし、長くなっても報告しないとだよな。
「えっと、実はパーティを追放されて、そのまま殉職にみせかけて殺されそうになりまして」
「……はい?」
エリさんは素っ頓狂な声を上げてから、少し長くなった俺の話をきちんと聞いてくれた。
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