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第46話 オリバの敗北
しおりを挟む「おかえりなさい、ソータくん。あ、あれ?」
無事ダンジョンから帰還して冒険ギルドに向かうと、エリさんが安心したような笑みで迎えてくれた。
隣にいるギルドマスターのハンスさんも、腕を組んで安堵の表情をしている。
しかし、俺とサラさんの後ろにいるオリバたちを見て、エリさんは見間違いでもしたかのような声を漏らした。
「えっと、みなさんで帰って来たんですか? ていうか、その手枷は一体……」
エリさんはロード、リリス、ナナを見てから、最後にオリバの手元を見て首を傾げる。
オリバの手元には、ダンジョンでなぜかあった古びた手枷をさせていた。
それは、ダンジョンからの帰り道、俺たちの後ろをついてくるときに付けさせたのだった。
布も何もかけていない状態なので、街の人たちがオリバを見る目は犯罪者を見る目をしていた。
「まぁ、色々ありまして」
どこから説明しようかと俺が考えていると、ちょこちょこっとケルがカウンターに近づいて、軽くカウンターの上に跳び乗った。
ケルはヘッヘッヘッと子犬のような息遣いをしながら、エリさんを見上げる。
「この愚かな人間がまたソータを殺そうとしてな。手枷をしておいた」
「え⁉ ま、またですか⁉ 何考えているんですか、オリバさん!!」
エリさんはそう言うと、カウンターを乗り出してオリバを睨む。
「なんでそんなに馬鹿なんだ、おまえは」
ハンスさんは呆れるように大きなため息を漏らして、オリバに見下すような視線を向けている。
「……っ」
さすがに反論する言葉もなかったのか、オリバはギリッと歯ぎしりをして俯いてしまった。
「なるほど。それで、危害を加えないように手枷をさせたんですね。何するか分かりませんもんね」
ケルはエリさんの言葉に小さく首を振り、ニパッと笑みを浮かべて、尻尾をぶんぶんと振る。
「それもあるが、手枷をつけて歩かせることで、この愚かな人間が犯罪者であることを周知させようと思ってな。見てみろ、街の人たちから見下されて、良い表情になったぞ!」
エリさんとハンスさんはケルの言葉に目をぱちくりさせてから、オリバの顔を覗き込む。
それから、納得したように『ああ、なるほど』とか『ふむ』とか言って頷いていた。
ケルが言う通り、今まで街で大きな顔をしていたオリバにとって、自分が見下される目で見られるのはかなり堪えているみたいだ。
急にオリバに手枷をつけていこうと言われたときは、そこまでしないでいいと思ったけど、効果は絶大みたいだ。
「どうやら、どちらが先にダンジョンのボスを倒したかは聞くまでもなさそうだな」
ハンスさんロード、リリス、ナナが青い顔をしていることにも気づいたようで、ロードたちを鼻で笑う。
俺は一歩前に出て、荷物を床に置いてガサゴソと目的の物を取り出した。
「はい、ダンジョンのボスは俺達が倒しました。ワイバーンがボスだったので、その素材がこれです」
順々にカウンターにワイバーンから採取した素材を並べていくと、ハンスさんは大きく頷く。
「ふむ、勝負はソータたちの勝利ということだな」
ハンスさんがじろっとオリバと見ると、オリバは何も言わずに肩を震わせていた。
「なんだオリバ。何か反論でもあるのか?」
「…………なにもねぇよ」
オリバは怒りで震える声で何とかそう言った。
ようやく、オリバは負けを認めたらしい。
こうして、俺とオリバの勝負は俺の勝利で幕を閉じることになったのだった。
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