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本編
見事に変身し、成功と幸せを掴んだ二人
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三年後。
この日はラ・レーヌ学園の卒業式だ。理事長である女大公ルナやその夫で大公配シャルルだけでなく、来賓として国王ガブリエル、王妃ナタリー、王太女ディアーヌといった王族も出席している厳かな式である。学園を卒業する者達は、皆六年間の学生生活を慈しみ、将来への期待と不安が混じった表情をしている。もちろん、ミラベルやナゼール達もそうである。
紡績機を電池で動くように改良したナゼール。それにより、絹や綿の紡績効率が従来の五倍良くなった。その功績は国王ガブリエルも認めており、ナゼールはガブリエル直々に勲章を賜ったのだ。更に、第二王子ミカエルが主催するサロン『薔薇の会』にも招待され、次期科学卿に内定している。
ミラベルが調香した香水は王妃ナタリーが気に入ったことにより国内で大ヒットした。そしてミラベルは学園卒業後は調香の研究をする為に王立研究所への就職が決まっている。
ナゼールとミラベルは卒業後に結婚予定である。
ちなみに、オレリアンも卒業後はミラベルとは部署が違うが、王立研究所に就職が決まっている。また、ヌムール公爵家が所有する子爵位を継ぐそうだ。
ラファエルも王立研究所や他の機関から声がかかっていたが、彼はヴァンティエール侯爵家の騎士団に入ることにした。婚約者のサラを支える為だそうだ。卒業後ガーメニー王国に一時帰国してからの入団予定である。サラとの結婚の準備も進めている、
飛び級によりミラベル達より二年早く卒業しているサラは、ヴァンティエール侯爵家次期当主として領地経営に携わる傍ら王立研究所でも研究をしている。現在はラファエルとの結婚の準備に忙しそうである。
リリーは卒業後、ネンガルド王国に戻り婚約者と結婚するそうだ。しかしそれだけでなく、彼女はネンガルド王国の王立植物園で植物研究をする予定である。リリーはそそっかしいところはあるが、研究者としての能力は高い。
ちなみに、卒業式にはミラベルとナゼールを馬鹿にしていたダゴーベールやバスティエンヌ達六人の姿はなかった。全員退学になったのだ。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
卒業式が終わり、ミラベルはナゼールと話している。
「もう卒業なのでございますね、ナゼール様」
「早いですね、ミラベル嬢」
「ナゼール様と出会うまでは、あまり学園が楽しいとは思えませんでした。ですが、貴方と出会ってからは、学園生活がとても楽しくなりましたわ。打ち込めることも見つけましたし。本当にありがとうございます」
ミラベルはこれまでの学園生活を慈しむかのように微笑んだ。
「僕もです。ミラベル嬢が隣にいてくれたからこそ、自分に自信が持てるようになり、僕はここまで来ることが出来ました。お礼を言うのは僕の方ですよ。ミラベル嬢、本当にありがとうございます」
ナゼールは感慨深く、そして優しげに微笑んだ。
「ミラベル嬢、まだ少し早いですが、これからは僕の妻としてよろしくお願いします」
ナゼールはヘーゼルの目を真っ直ぐミラベルに向けていた。穏やかに微笑み手を差し出す。
「こちらこそ、不束者でございますが、どうぞよろしくお願いしますわ」
ミラベルはムーンストーンの目を嬉しそうに細めてナゼールの手を取った。
二人の間には穏やかな時間が流れている。
その時、溌剌とした女性の声が聞こえる。
「ミラベルお義姉様!」
ナゼールの妹アンナである。アンナは学園の生徒ではないが、モンカルム侯爵家の迎えの馬車に乗っており、ミラベルとナゼールを見つけると駆け寄って来たのだ。
「ミラベルお義姉様、ご卒業おめでとうございます。それと、これからミラベルお義姉様と家族になれることがとても楽しみでございますわ。まあ三年後私はアリティー王国に行ってしまうのですが……」
アンナは最後少ししゅんとした。
「アンナ様、ありがとうございます、アンナ様がマントヴァ侯爵家に嫁がれた後も、お手紙を書きますわ」
ミラベルは優しく微笑んだ。
「ありがとうございます! 楽しみにしていますわ!」
アンナの表情はパアッと明るくなった。
アンナはミラベルにとても懐いている。ナゼールがミラベルを家族に紹介した際に、アンナはこう言ったのだ。
『アンナ・マリアンヌ・ド・モンカルムでございます。あの、ミラベルお義姉様とお呼びしてもよろしいですか? 私、姉という存在に憧れておりましたの』
それ以降、ミラベルとアンナは定期的に街へ出掛ける仲になっていた。ミラベルとしても、自身に懐いてくれるアンナを可愛く思っている。
「アンナ、ミラベル嬢をあまり困らせないで欲しいね」
ナゼールは苦笑する。
「ええ、分かっておりますわ。お兄様も、ご卒業おめでとうございます。次期科学卿はこれから忙しくなりそうでございますわね。領地経営や科学卿のお仕事ばかりになってミラベルお義姉様を蔑ろにはしないでくださいね。お二人が喧嘩をなさったら、私は無条件でミラベルお義姉様の味方になりますわよ」
「ミラベル嬢は僕を選んでくれた。だから絶対大切にするさ」
ミラベルはナゼールの言葉に頬を赤く染めた。
「左様でございますか。でしたら安心ですわね」
アンナはふふっと笑った。
その時、オレリアンがミラベルとナゼールに声をかける。
「おーい、ナゼール、ミラベル嬢も、そろそろ帰って準備をしないと卒業パーティーに遅刻するよ」
オレリアンの隣には、ラファエルとリリーもいる。サラは現在王立研究所にいるそうだ。
「僕達、留学生組は寮に戻ればいいけれど、ナルフェックの王都の屋敷勢は大変そうだね」
ラファエルは周囲の学生達を見て苦笑した。
「左様でございますわね。ミラベル様、また卒業パーティーでお会いしましょう」
リリーはミラベルにそう微笑んだ。ミラベルも頷きリリーに微笑み返す。
「ミラベル嬢、また今夜の卒業パーティーの時にルテル家の王都の屋敷までお迎えに行きます」
ミラベルを真っ直ぐ見て微笑むナゼール。
「ええ、お待ちしておりますわ」
ミラベルも、ナゼールを真っ直ぐ見て微笑んだ。
相手の為に変わる決意をし、見事に変身したミラベルとナゼール。もう誰も二人のことを馬鹿には出来ない。二人の心はとても晴れやかだった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
数年後、ナゼールは科学卿として、そしてモンカルム侯爵家当主として大活躍しており、ミラベルも王立研究所の調香部門の研究員として大活躍していた。そんな二人は四人の子供に恵まれて、幸せで充実した生活を送っていた。
この日はラ・レーヌ学園の卒業式だ。理事長である女大公ルナやその夫で大公配シャルルだけでなく、来賓として国王ガブリエル、王妃ナタリー、王太女ディアーヌといった王族も出席している厳かな式である。学園を卒業する者達は、皆六年間の学生生活を慈しみ、将来への期待と不安が混じった表情をしている。もちろん、ミラベルやナゼール達もそうである。
紡績機を電池で動くように改良したナゼール。それにより、絹や綿の紡績効率が従来の五倍良くなった。その功績は国王ガブリエルも認めており、ナゼールはガブリエル直々に勲章を賜ったのだ。更に、第二王子ミカエルが主催するサロン『薔薇の会』にも招待され、次期科学卿に内定している。
ミラベルが調香した香水は王妃ナタリーが気に入ったことにより国内で大ヒットした。そしてミラベルは学園卒業後は調香の研究をする為に王立研究所への就職が決まっている。
ナゼールとミラベルは卒業後に結婚予定である。
ちなみに、オレリアンも卒業後はミラベルとは部署が違うが、王立研究所に就職が決まっている。また、ヌムール公爵家が所有する子爵位を継ぐそうだ。
ラファエルも王立研究所や他の機関から声がかかっていたが、彼はヴァンティエール侯爵家の騎士団に入ることにした。婚約者のサラを支える為だそうだ。卒業後ガーメニー王国に一時帰国してからの入団予定である。サラとの結婚の準備も進めている、
飛び級によりミラベル達より二年早く卒業しているサラは、ヴァンティエール侯爵家次期当主として領地経営に携わる傍ら王立研究所でも研究をしている。現在はラファエルとの結婚の準備に忙しそうである。
リリーは卒業後、ネンガルド王国に戻り婚約者と結婚するそうだ。しかしそれだけでなく、彼女はネンガルド王国の王立植物園で植物研究をする予定である。リリーはそそっかしいところはあるが、研究者としての能力は高い。
ちなみに、卒業式にはミラベルとナゼールを馬鹿にしていたダゴーベールやバスティエンヌ達六人の姿はなかった。全員退学になったのだ。
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卒業式が終わり、ミラベルはナゼールと話している。
「もう卒業なのでございますね、ナゼール様」
「早いですね、ミラベル嬢」
「ナゼール様と出会うまでは、あまり学園が楽しいとは思えませんでした。ですが、貴方と出会ってからは、学園生活がとても楽しくなりましたわ。打ち込めることも見つけましたし。本当にありがとうございます」
ミラベルはこれまでの学園生活を慈しむかのように微笑んだ。
「僕もです。ミラベル嬢が隣にいてくれたからこそ、自分に自信が持てるようになり、僕はここまで来ることが出来ました。お礼を言うのは僕の方ですよ。ミラベル嬢、本当にありがとうございます」
ナゼールは感慨深く、そして優しげに微笑んだ。
「ミラベル嬢、まだ少し早いですが、これからは僕の妻としてよろしくお願いします」
ナゼールはヘーゼルの目を真っ直ぐミラベルに向けていた。穏やかに微笑み手を差し出す。
「こちらこそ、不束者でございますが、どうぞよろしくお願いしますわ」
ミラベルはムーンストーンの目を嬉しそうに細めてナゼールの手を取った。
二人の間には穏やかな時間が流れている。
その時、溌剌とした女性の声が聞こえる。
「ミラベルお義姉様!」
ナゼールの妹アンナである。アンナは学園の生徒ではないが、モンカルム侯爵家の迎えの馬車に乗っており、ミラベルとナゼールを見つけると駆け寄って来たのだ。
「ミラベルお義姉様、ご卒業おめでとうございます。それと、これからミラベルお義姉様と家族になれることがとても楽しみでございますわ。まあ三年後私はアリティー王国に行ってしまうのですが……」
アンナは最後少ししゅんとした。
「アンナ様、ありがとうございます、アンナ様がマントヴァ侯爵家に嫁がれた後も、お手紙を書きますわ」
ミラベルは優しく微笑んだ。
「ありがとうございます! 楽しみにしていますわ!」
アンナの表情はパアッと明るくなった。
アンナはミラベルにとても懐いている。ナゼールがミラベルを家族に紹介した際に、アンナはこう言ったのだ。
『アンナ・マリアンヌ・ド・モンカルムでございます。あの、ミラベルお義姉様とお呼びしてもよろしいですか? 私、姉という存在に憧れておりましたの』
それ以降、ミラベルとアンナは定期的に街へ出掛ける仲になっていた。ミラベルとしても、自身に懐いてくれるアンナを可愛く思っている。
「アンナ、ミラベル嬢をあまり困らせないで欲しいね」
ナゼールは苦笑する。
「ええ、分かっておりますわ。お兄様も、ご卒業おめでとうございます。次期科学卿はこれから忙しくなりそうでございますわね。領地経営や科学卿のお仕事ばかりになってミラベルお義姉様を蔑ろにはしないでくださいね。お二人が喧嘩をなさったら、私は無条件でミラベルお義姉様の味方になりますわよ」
「ミラベル嬢は僕を選んでくれた。だから絶対大切にするさ」
ミラベルはナゼールの言葉に頬を赤く染めた。
「左様でございますか。でしたら安心ですわね」
アンナはふふっと笑った。
その時、オレリアンがミラベルとナゼールに声をかける。
「おーい、ナゼール、ミラベル嬢も、そろそろ帰って準備をしないと卒業パーティーに遅刻するよ」
オレリアンの隣には、ラファエルとリリーもいる。サラは現在王立研究所にいるそうだ。
「僕達、留学生組は寮に戻ればいいけれど、ナルフェックの王都の屋敷勢は大変そうだね」
ラファエルは周囲の学生達を見て苦笑した。
「左様でございますわね。ミラベル様、また卒業パーティーでお会いしましょう」
リリーはミラベルにそう微笑んだ。ミラベルも頷きリリーに微笑み返す。
「ミラベル嬢、また今夜の卒業パーティーの時にルテル家の王都の屋敷までお迎えに行きます」
ミラベルを真っ直ぐ見て微笑むナゼール。
「ええ、お待ちしておりますわ」
ミラベルも、ナゼールを真っ直ぐ見て微笑んだ。
相手の為に変わる決意をし、見事に変身したミラベルとナゼール。もう誰も二人のことを馬鹿には出来ない。二人の心はとても晴れやかだった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
数年後、ナゼールは科学卿として、そしてモンカルム侯爵家当主として大活躍しており、ミラベルも王立研究所の調香部門の研究員として大活躍していた。そんな二人は四人の子供に恵まれて、幸せで充実した生活を送っていた。
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