2 / 36
本編
エマ・ジークリンデ・フォン・リートベルク
しおりを挟む
ガーメニー王国の社交シーズンが始まった。今年十五歳になるエマは、少し前に成人を迎えたばかりである。エマは今日も夜会に参加する為に準備をしていた。
侍女の手により、エマの真っ直ぐ伸びたストロベリーブロンドの長い髪は編み込みシニョンにアレンジされた。そして化粧も施される。鼻から頬周りにある薄いそばかすは隠さずそのままだ。エマは母親譲りのこのそばかすを気に入っている。
「エマお嬢様、髪型とお化粧はこれでいかがでございましょうか?」
「ええ、素敵だわ。ありがとう、フリーダ。貴女は昔からいつも私を素敵にしてくれるわね」
屈託のない笑みのエマ。アンバーの目からは嬉しさが滲み出ている。
「お嬢様にそう仰っていただけて、この私フリーダは大変光栄に存じております」
エマの侍女フリーダは心底嬉しそうだった。
その時、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。エマより三つ年上で今年十八歳になる姉のリーゼロッテだ。
「あらエマ、今日の髪型もお化粧もとてもよく似合っているわ。ドレスも素敵ね」
リーゼロッテはエマと同じアンバーの目を優しげに細める。髪の色もエマと同じ真っ直ぐ長いストロベリーブロンド。そして薄らとそばかすもある。
「ありがとうございます、リーゼロッテお姉様。全てはフリーダの腕がいいからですわ。このドレスに合う髪型とお化粧を施してくれましたの」
エマはふふっと笑う。エマのドレスはオレンジ色で、令嬢らしいベルラインのシルエットだ。
エマの少し後ろでフリーダは照れ臭そうにしていた。
「お姉様も、お化粧や髪型、そしてドレスもよくお似合いですわ」
「ありがとう、エマ」
リーゼロッテは嬉しそうに照れ笑いする。リーゼロッテはハーフアップに編み込みを組み合わせ、白い百合の髪飾りを着けており、Aラインの黄色のドレスだ。
「リーゼロッテお嬢様、エマお嬢様、そろそろ、出発の時間でございます」
リーゼロッテの侍女からそう言われ、二人は馬車へ向かう。
「あら、ディートリヒお兄様も今準備が終わりましたの?」
馬車へ向かう途中、エマの兄でリーゼロッテの弟であるディートリヒと合流した。ディートリヒはリートベルク家次期当主で、今年十七歳になる。
「いや、準備はもっと前に終わっていたさ。気になる本の続きを読んでいたら、こんな時間になってしまった」
ディートリヒは苦笑する。エマやリーゼロッテと同じ、ストロベリーブロンドの髪にアンバーの目。そしてやはり薄らとそばかすもある。
「ディートリヒ、もしかしてギュンター・シュミット氏が書いた小説を読んでいたの?」
「ええ、姉上、その通りです。シュミット氏の小説が面白くて、時間がないにも関わらずついついのめり込んでしまうのですよ」
ハハっとディートリヒが笑った。
「お兄様、シュミット氏は確か、リヒネットシュタイン公国の作家でしたよね?」
「ああ、その通りだよ。シュミット氏の新作を手に入れたからエマも読んでみるかい?」
「ええ、是非貸していただきたいですわ」
エマのアンバーの目は輝いた。
リヒネットシュタイン公国はガーメニー王国北東部にある小さな国だ。元は臣籍降下して公爵位を賜ったガーメニーの王子の領地である。そこが数年後に独立し、リヒネットシュタイン公国となったのだ。
エマは姉のリーゼロッテと兄のディートリヒと共に馬車に乗り、夜会へ向かった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
エマ達が会場に入ると、会場にいる者達がざわめき出す。
「リーゼロッテ嬢だ。相変わらず可憐でお美しい」
「まさに社交界の白百合だ」
「おまけにナルフェック王国のヌムール公爵領で薬学を学んでいらっしゃるだとか」
「お美しいだけでなく、勉強熱心なお方でございますわ」
リーゼロッテを見て令息や令嬢達が憧れや尊敬の眼差しを向けている。
「あら、ご覧になって。ディートリヒ卿よ」
「今日も素敵ですわ。流石は琥珀の貴公子」
「ディートリヒ卿からダンスのお誘いが来ないかしら? 是非一曲願いたいわ」
うっとりとした眼差しでディートリヒを見る婦人や令嬢達。
リーゼロッテとディートリヒは優しげで甘めの顔立ちであり、周囲が騒ぐほどの美形である。リーゼロッテは社交界の白百合、ディートリヒは琥珀の貴公子という二つ名があるのだ。
一方エマはというと……。
「リーゼロッテ様とディートリヒ卿と一緒におられる方はどなたかしら?」
「妹のエマ嬢だ」
「何というか……お二人に似ておりませんわね」
「リートベルク家のご令嬢と聞いたから、てっきりエマ嬢も美形なのかと思ったが……」
「いや、俺はああいう令嬢も好きだがね」
エマはリーゼロッテやディートリヒとは違い、美形とは言い難かった。しかし、決して醜いわけではない。愛嬌のある顔立ちだ。
(リーゼロッテお姉様もディートリヒお兄様もお母様に似て、身内贔屓だとしてもとても見目麗しい。だから妹の私を見て落胆なさるのも、分からなくはないわ。それに、まだ社交界デビューしていない弟のヨハネスも、美形で可愛らしい顔立ちだし)
エマは内心苦笑した。しかし、エマは、自分が姉、兄、弟のような美貌を持っていないことに関してはコンプレックスを感じていない。
(だけど、私はお父様に似たことを誇りに思うわ。私にはまだ未熟な部分はあるけれど、お父様、お母様、リーゼロッテお姉様、ディートリヒお兄様、弟のヨハネス、そしてリートベルク家の使用人達が、今の私を素敵だと言ってくれる。だからそう言ってくれる人達の為にも、私は前を向くわ)
エマは背筋をピンと伸ばし、堂々とする。そして、令嬢らしい品と明るさを兼ね備えた、生き生きとした笑みを浮かべる。
それは愛されて育った故の自信である。
すると、周囲の反応が変わる。
「確かにリーゼロッテ様やディートリヒ様とは似ていらっしゃらないけれど、笑顔が素敵な方ね」
「何というか、こっちまで明るい気分になる笑みだな」
エマに対して好意的な感情を抱く令嬢や令息が増えた。そしてエマはあることで決定的に令嬢や令息の心を掴むことになる。
「姉と兄は母に似て、身内贔屓でもありますが美形です。それに、まだ社交界デビューしていない弟のヨハネスは母方の祖母に似て可愛らしい顔立ちをしておりますわ。ですが私は父に似たんです。私まで母に似たら、父が疎外感を抱いてしまいますわ」
エマは茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべた。自分を卑下することなく、機知に富んだ返しだ。エマと話していた令息や令嬢達は、意表を突かれたかのように笑った。
エマ・ジークリンデ・フォン・リートベルクは姉や兄のような美貌は持っていないが、屈託のない明るい笑みと機知に富んだ会話でたちまち令嬢や令息を虜にしていったのだ。
侍女の手により、エマの真っ直ぐ伸びたストロベリーブロンドの長い髪は編み込みシニョンにアレンジされた。そして化粧も施される。鼻から頬周りにある薄いそばかすは隠さずそのままだ。エマは母親譲りのこのそばかすを気に入っている。
「エマお嬢様、髪型とお化粧はこれでいかがでございましょうか?」
「ええ、素敵だわ。ありがとう、フリーダ。貴女は昔からいつも私を素敵にしてくれるわね」
屈託のない笑みのエマ。アンバーの目からは嬉しさが滲み出ている。
「お嬢様にそう仰っていただけて、この私フリーダは大変光栄に存じております」
エマの侍女フリーダは心底嬉しそうだった。
その時、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。エマより三つ年上で今年十八歳になる姉のリーゼロッテだ。
「あらエマ、今日の髪型もお化粧もとてもよく似合っているわ。ドレスも素敵ね」
リーゼロッテはエマと同じアンバーの目を優しげに細める。髪の色もエマと同じ真っ直ぐ長いストロベリーブロンド。そして薄らとそばかすもある。
「ありがとうございます、リーゼロッテお姉様。全てはフリーダの腕がいいからですわ。このドレスに合う髪型とお化粧を施してくれましたの」
エマはふふっと笑う。エマのドレスはオレンジ色で、令嬢らしいベルラインのシルエットだ。
エマの少し後ろでフリーダは照れ臭そうにしていた。
「お姉様も、お化粧や髪型、そしてドレスもよくお似合いですわ」
「ありがとう、エマ」
リーゼロッテは嬉しそうに照れ笑いする。リーゼロッテはハーフアップに編み込みを組み合わせ、白い百合の髪飾りを着けており、Aラインの黄色のドレスだ。
「リーゼロッテお嬢様、エマお嬢様、そろそろ、出発の時間でございます」
リーゼロッテの侍女からそう言われ、二人は馬車へ向かう。
「あら、ディートリヒお兄様も今準備が終わりましたの?」
馬車へ向かう途中、エマの兄でリーゼロッテの弟であるディートリヒと合流した。ディートリヒはリートベルク家次期当主で、今年十七歳になる。
「いや、準備はもっと前に終わっていたさ。気になる本の続きを読んでいたら、こんな時間になってしまった」
ディートリヒは苦笑する。エマやリーゼロッテと同じ、ストロベリーブロンドの髪にアンバーの目。そしてやはり薄らとそばかすもある。
「ディートリヒ、もしかしてギュンター・シュミット氏が書いた小説を読んでいたの?」
「ええ、姉上、その通りです。シュミット氏の小説が面白くて、時間がないにも関わらずついついのめり込んでしまうのですよ」
ハハっとディートリヒが笑った。
「お兄様、シュミット氏は確か、リヒネットシュタイン公国の作家でしたよね?」
「ああ、その通りだよ。シュミット氏の新作を手に入れたからエマも読んでみるかい?」
「ええ、是非貸していただきたいですわ」
エマのアンバーの目は輝いた。
リヒネットシュタイン公国はガーメニー王国北東部にある小さな国だ。元は臣籍降下して公爵位を賜ったガーメニーの王子の領地である。そこが数年後に独立し、リヒネットシュタイン公国となったのだ。
エマは姉のリーゼロッテと兄のディートリヒと共に馬車に乗り、夜会へ向かった。
♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔
エマ達が会場に入ると、会場にいる者達がざわめき出す。
「リーゼロッテ嬢だ。相変わらず可憐でお美しい」
「まさに社交界の白百合だ」
「おまけにナルフェック王国のヌムール公爵領で薬学を学んでいらっしゃるだとか」
「お美しいだけでなく、勉強熱心なお方でございますわ」
リーゼロッテを見て令息や令嬢達が憧れや尊敬の眼差しを向けている。
「あら、ご覧になって。ディートリヒ卿よ」
「今日も素敵ですわ。流石は琥珀の貴公子」
「ディートリヒ卿からダンスのお誘いが来ないかしら? 是非一曲願いたいわ」
うっとりとした眼差しでディートリヒを見る婦人や令嬢達。
リーゼロッテとディートリヒは優しげで甘めの顔立ちであり、周囲が騒ぐほどの美形である。リーゼロッテは社交界の白百合、ディートリヒは琥珀の貴公子という二つ名があるのだ。
一方エマはというと……。
「リーゼロッテ様とディートリヒ卿と一緒におられる方はどなたかしら?」
「妹のエマ嬢だ」
「何というか……お二人に似ておりませんわね」
「リートベルク家のご令嬢と聞いたから、てっきりエマ嬢も美形なのかと思ったが……」
「いや、俺はああいう令嬢も好きだがね」
エマはリーゼロッテやディートリヒとは違い、美形とは言い難かった。しかし、決して醜いわけではない。愛嬌のある顔立ちだ。
(リーゼロッテお姉様もディートリヒお兄様もお母様に似て、身内贔屓だとしてもとても見目麗しい。だから妹の私を見て落胆なさるのも、分からなくはないわ。それに、まだ社交界デビューしていない弟のヨハネスも、美形で可愛らしい顔立ちだし)
エマは内心苦笑した。しかし、エマは、自分が姉、兄、弟のような美貌を持っていないことに関してはコンプレックスを感じていない。
(だけど、私はお父様に似たことを誇りに思うわ。私にはまだ未熟な部分はあるけれど、お父様、お母様、リーゼロッテお姉様、ディートリヒお兄様、弟のヨハネス、そしてリートベルク家の使用人達が、今の私を素敵だと言ってくれる。だからそう言ってくれる人達の為にも、私は前を向くわ)
エマは背筋をピンと伸ばし、堂々とする。そして、令嬢らしい品と明るさを兼ね備えた、生き生きとした笑みを浮かべる。
それは愛されて育った故の自信である。
すると、周囲の反応が変わる。
「確かにリーゼロッテ様やディートリヒ様とは似ていらっしゃらないけれど、笑顔が素敵な方ね」
「何というか、こっちまで明るい気分になる笑みだな」
エマに対して好意的な感情を抱く令嬢や令息が増えた。そしてエマはあることで決定的に令嬢や令息の心を掴むことになる。
「姉と兄は母に似て、身内贔屓でもありますが美形です。それに、まだ社交界デビューしていない弟のヨハネスは母方の祖母に似て可愛らしい顔立ちをしておりますわ。ですが私は父に似たんです。私まで母に似たら、父が疎外感を抱いてしまいますわ」
エマは茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべた。自分を卑下することなく、機知に富んだ返しだ。エマと話していた令息や令嬢達は、意表を突かれたかのように笑った。
エマ・ジークリンデ・フォン・リートベルクは姉や兄のような美貌は持っていないが、屈託のない明るい笑みと機知に富んだ会話でたちまち令嬢や令息を虜にしていったのだ。
70
あなたにおすすめの小説
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語
石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。
本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。
『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。
「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。
カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。
大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
【完結】真実の愛に気付いたと言われてしまったのですが
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済みです!!!】
かつて王国の誇りとされた名家の令嬢レティシア。王太子の婚約者として誰もが認める存在だった彼女は、ある日、突然の“婚約破棄”を言い渡される。
――理由は、「真実の愛に気づいてしまった」。
その一言と共に、王家との長年の絆は踏みにじられ、彼女の名誉は地に落ちる。だが、沈黙の奥底に宿っていたのは、誇り高き家の決意と、彼女自身の冷ややかな覚悟だった。
動揺する貴族たち、混乱する政権。やがて、ノーグレイブ家は“ある宣言”をもって王政と決別し、秩序と理念を掲げて、新たな自治の道を歩み出す。
一方、王宮では裏切りの余波が波紋を広げ、王太子は“責任”という言葉の意味と向き合わざるを得なくなる。崩れゆく信頼と、見限られる権威。
そして、動き出したノーグレイブ家の中心には、再び立ち上がったレティシアの姿があった。
※日常パートとシリアスパートを交互に挟む予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる