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《151》帰りの汽車
しおりを挟む「ところで、他の二人は?」
どうやら、無礼は許されたらしい。
「ええと·····すぐそこに、多分·····」
「独断行動は駄目だ。言っただろう」
まさか、一番協調性を気にしていた自分がこんな注意を受けるとは。
「ごめんなさい·····」
小さな声で謝る。歩き出したロイドに続きながら、そっとレイゲルを振り返った。
彼は唖然と、自分の手のひらを見下ろしていた。
「レイゲル先輩」
こちらを見た彼の表情は、予想よりもずっと穏やかだった。
「あの····」
「俺達も行こう」
歩き出す背が寂しい。
レイゲルが、心からロイドを憎んでいるとは思えない。
彼は認めて欲しかったのだ。
誰かの代替品やおまけではなく、自分自身を。
「レイゲル先輩がいると·····雰囲気が明るくなります」
万人に愛されるヒロインみたいに、気の利いた言葉なんて浮かばない。
「だから、今回の遠征は·····あの·····先輩と一緒で、良かったです」
「·····そう?ありがとう」
振り返ったレイゲルが笑う。
誰かを羨む必要なんてない。彼は素敵な人だ。
確かに、ヒロインでもなんでもない自分の言葉なんて、なんの意味も持たないのかもしれない。それでも、少しでも伝わるようにと、言葉をつむいだ。
「素敵な人だから·····」
レイゲルは瞬きを繰り返した。
「·····はは、いきなりどうしたんだ?可愛い後輩め」
「わっ」
レイゲルがノワの肩に腕を回す。
身長差のせいで、彼の表情を伺うことは出来なかった。
残り2日間は、集合場所へ向かいながらドゥジーヤの捜索をした。
たまに見かける生き物は、皆害がなさそうに横をすり抜けてゆくだけだ。
帰りの汽車に乗り込む頃、ノワはすっかりくたびれていた。
帝都までは、約半日。
(少し眠ろう·····)
揺れる振動が心地よい。
うとうとしていると、隣に人が座った。
デリックだろうか。
好いてくれているのはありがたいが、ずっと一緒にいるのは、少々疲れる相手だ。
起きようとすると、頭部を引き寄せられた。
「えっ」
「寝てろよ」
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