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《232》3人の夫

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ボタンが解かれ、シャツを乱されてゆく。
熱い手がノワを放縦にまさぐる。声を殺していると、ため息のような笑い声が聞こえた。


「肌が吸い付くようだ」

「·····っ」


ノワは全身が熱くなるようだった。
身体中はしっとりと汗ばんでいた。


「ノワ」


オレンジの明かりが、フィアンの横顔に影を作る。


「お前が欲しい」


普段凛然としている声は、間近で囁かれると、驚くほど甘い。
何度も囁かれた告白だ。
返答に困っていると、シャツを捲り揚げられ、彼の前で裸の上半身が晒された。


「·····はぅ·····っ」


慌てて口をつぐむ。
鎖骨に吸い付いた唇が、啄むような口付けをしながら、少しずつ下へずれてゆく。
そっと彼を見下ろす。薄明かりに照らされた舌が、見せびらかすようにして、胸の突起の前に差し出された。


「あ·······」


触れられていないのに、そこは期待のせいでピンと存在を主張している。
それを見下ろしたフィアンが、続いてノワの顔をあおぎみた。


「お前の身体は、今すぐにでも俺を望んでいるようだが」


まるで、神が丹精込めた芸術品のような顔が、悪戯に微笑む。


皇帝であるフィアン、ユージーン公爵、そして、イアード大公。契約上の3人の夫だ。


その中でもフィアンは積極的だった。
ノワが目を覚ましてすぐ、自ら結婚を申し出たのだ。
ユージーンからの贈物も後を絶たない。二人がノワを取り合い火花を散らしているという噂は、帝国中の噂だった。
実際は、噂のようにロマンチックなものは何も無い。

自分が"聖女"だから。ただそれだけの理由で、彼らはこの身体を欲しがる。
それはとても虚しく、2人にとっても申し訳ない事だった。


「見ないでください·····」


想いとは裏腹に、身体は熱く火照る。
突如、扉が叩かれた。


「陛下」


扉の向こうから、聞き馴染みのある声がした。
最悪のタイミングだ。
ノワは縋るような視線でフィアンを見上げる。彼は美しい流し目を宙で遊ばせた。


「丁度いい所に来た。入れ」


「!?」


引き留めようとした頃には遅かった。
扉が開き、涼しい髪色の若者が姿を現す。数秒の沈黙の後、相手が息を着く気配がした。


「今宵は陛下の元に来ていたんだね」


蜜を含んだような声が、意味深な言葉を紡ぐ。


「昨日は、俺の腕の中であんなに乱れていたというのに·····」


新たな重みが加わり、ベットが歪む。
背後から腰を引き寄せられ、背は硬い温もりに支えられた。


「そうだろう?俺の聖徒様」








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