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竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
11.昼下がりの事件
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シロは飛ばされた教科書を拾い、土を払った。
「あーあ、ちょっと汚れちゃった…」
ルカたちの元へ戻ろうと振り向くと、風魔法を放った魔族の1人がルカの胸ぐらを掴み拳を振り上げている。
「へ!?なんで!?」
状況が分からないシロは、慌ててルカたちの元へ戻った。
シロが教科書を拾いに行くと同時にイノシシ魔族の少年がルカの元へやって来た。
「お前、今俺のこと睨んでただろう?一年坊主のくせに生意気だなぁ」
ルカの体の3倍はありそうなイノシシ魔族の少年はルカの胸ぐらを掴み軽々と持ち上げた。
「お、お前が俺たちに向かって魔法を使ったからだろ!?」
「口答えをするなっ!」
魔族の少年は掴んでいた手にさらに力を入れ、ルカの首元を締め上げる。ルカは息が出来ず「くっ…」と苦しそうな声を上げた。
「やめてよ!ルカを離して!!」
アリスが少年の腕を掴むと「うるせぇ!」と怒鳴って手を勢いよく振り解いた。
「きゃあっ!」
その反動でアリスは地面に叩きつけられた。
「アリスに何すんだよっ!」
ルカは魔石を使って少年に水魔法を放ったが、少年の服を濡らす程度の僅かな攻撃だった。
しかし服を濡らされた少年は「本当に生意気なガキだなっ!」と言って拳を振り上げた。
ルカは殴られるのを覚悟し目を瞑ると、背筋が凍るような悍ましい闇魔力のオーラに包まれた。
シロはルカたちに向かって必死に走ったが、魔族の拳はルカに振り下ろされた。
(間に合わないっ…!!)
シロが諦めそうになった瞬間、ルーフの言葉が頭をよぎった。
ー…『人間の体は脆い。シロが本気で殴れば簡単に死ぬ。友達を殺したくなきゃ大事に扱ってやれ』
(魔族が殴ったら人間のルカは死んでしまうかもしれない。絶対止めないとっ!!)
強くそう願うと、シロの足元から闇魔力のオーラが溢れ出し、ルカと少年に向かって流れていった。そしてそのオーラはあっという間に2人を包み込んだ。
シロ自身何が起きているのか分からず、とにかくルカの元へ駆け寄ると、闇魔力のオーラからルカだけが解放された。
「ルカっ!大丈夫!?」
「げほっげほっ!…ああ、大丈夫。でもアイツが…、ひっ…!!」
少年が立っていた場所を見上げたルカの顔が強張り小さな悲鳴を上げた。シロもその視線の先を追うと、闇魔力のオーラは少年の体を締め上げていた。
まるでゲイルと戦った時のように。
「た…、たすけ…たすけてくれ…っ」
身動きの取れない少年は苦しそうに助けを求めるが、その場にいた全員が闇魔力のオーラに恐れて動けなくなっていた。
シロもどうすればいいのか分からず、少年を見上げていると「おい、シロ。この魔力ってお前のか…?」と青ざめたルカがシロの足元を指した。
「え…?」
シロが自分の足元を見ると、闇魔力のオーラはシロの影から流れ出している。
「もうアイツを解放してやれ!このままじゃ死んじまうぞ!?」
ルカが怒鳴ってシロの肩を掴んだが、シロは流れ出すオーラの止め方が分からない。魔族の少年はますます苦しそうな声を上げ、泡を吹きはじめた。
(どうしよう!?どうすればオーラは消える!?このままじゃこの少年が死んでしまうっ!)
「止まれっ!止まれっ!」
シロは自分の影を叩きながら叫んだ。しかしオーラはどんどん放出されていく。このままでは少年を殺してしまう。
焦りと恐怖で泣きそうになった時、シロの目の前に白銀の毛並みをした大きな狼が降り立ち、闇のオーラを一気に吹き消した。
「あーあ、ちょっと汚れちゃった…」
ルカたちの元へ戻ろうと振り向くと、風魔法を放った魔族の1人がルカの胸ぐらを掴み拳を振り上げている。
「へ!?なんで!?」
状況が分からないシロは、慌ててルカたちの元へ戻った。
シロが教科書を拾いに行くと同時にイノシシ魔族の少年がルカの元へやって来た。
「お前、今俺のこと睨んでただろう?一年坊主のくせに生意気だなぁ」
ルカの体の3倍はありそうなイノシシ魔族の少年はルカの胸ぐらを掴み軽々と持ち上げた。
「お、お前が俺たちに向かって魔法を使ったからだろ!?」
「口答えをするなっ!」
魔族の少年は掴んでいた手にさらに力を入れ、ルカの首元を締め上げる。ルカは息が出来ず「くっ…」と苦しそうな声を上げた。
「やめてよ!ルカを離して!!」
アリスが少年の腕を掴むと「うるせぇ!」と怒鳴って手を勢いよく振り解いた。
「きゃあっ!」
その反動でアリスは地面に叩きつけられた。
「アリスに何すんだよっ!」
ルカは魔石を使って少年に水魔法を放ったが、少年の服を濡らす程度の僅かな攻撃だった。
しかし服を濡らされた少年は「本当に生意気なガキだなっ!」と言って拳を振り上げた。
ルカは殴られるのを覚悟し目を瞑ると、背筋が凍るような悍ましい闇魔力のオーラに包まれた。
シロはルカたちに向かって必死に走ったが、魔族の拳はルカに振り下ろされた。
(間に合わないっ…!!)
シロが諦めそうになった瞬間、ルーフの言葉が頭をよぎった。
ー…『人間の体は脆い。シロが本気で殴れば簡単に死ぬ。友達を殺したくなきゃ大事に扱ってやれ』
(魔族が殴ったら人間のルカは死んでしまうかもしれない。絶対止めないとっ!!)
強くそう願うと、シロの足元から闇魔力のオーラが溢れ出し、ルカと少年に向かって流れていった。そしてそのオーラはあっという間に2人を包み込んだ。
シロ自身何が起きているのか分からず、とにかくルカの元へ駆け寄ると、闇魔力のオーラからルカだけが解放された。
「ルカっ!大丈夫!?」
「げほっげほっ!…ああ、大丈夫。でもアイツが…、ひっ…!!」
少年が立っていた場所を見上げたルカの顔が強張り小さな悲鳴を上げた。シロもその視線の先を追うと、闇魔力のオーラは少年の体を締め上げていた。
まるでゲイルと戦った時のように。
「た…、たすけ…たすけてくれ…っ」
身動きの取れない少年は苦しそうに助けを求めるが、その場にいた全員が闇魔力のオーラに恐れて動けなくなっていた。
シロもどうすればいいのか分からず、少年を見上げていると「おい、シロ。この魔力ってお前のか…?」と青ざめたルカがシロの足元を指した。
「え…?」
シロが自分の足元を見ると、闇魔力のオーラはシロの影から流れ出している。
「もうアイツを解放してやれ!このままじゃ死んじまうぞ!?」
ルカが怒鳴ってシロの肩を掴んだが、シロは流れ出すオーラの止め方が分からない。魔族の少年はますます苦しそうな声を上げ、泡を吹きはじめた。
(どうしよう!?どうすればオーラは消える!?このままじゃこの少年が死んでしまうっ!)
「止まれっ!止まれっ!」
シロは自分の影を叩きながら叫んだ。しかしオーラはどんどん放出されていく。このままでは少年を殺してしまう。
焦りと恐怖で泣きそうになった時、シロの目の前に白銀の毛並みをした大きな狼が降り立ち、闇のオーラを一気に吹き消した。
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