68 / 102
竜人嫌いの魔族、竜人の子供を育てる
42.城
しおりを挟む
学校も夏休みに入り、ルーフとシロは夏休み恒例となった魔力の特訓のためにドグライアス城跡地へやって来た。
荷物を下ろしたルーフは、近くの瓦礫に腰をかけ「相変わらずここはなんも変わんねぇなぁ」とぼやいた。
シロはそんなルーフを横目にニヤニヤしながら「そうだね。でも今年はちょっと違うかもよ」と笑った。
「あ?何が?」
ルーフが怪訝な顔すると、すっかり闇魔力をコントロール出来るようになったシロは、2人で過ごす家を魔法であっという間に建てた。
それは家、というより城。
昔のドグライアス城と全く同じ姿の城が、ルーフの目の前に現れたのだ。
「…すげぇ」
ルーフは城を見上げながら呟いた。
シロは腕を組んで自慢げに笑った。
「昔の文献や図鑑で前のドグライアス城について調べてたんだ。再現度も高いでしょ!俺の魔力も成長したと思わない?」
「ああ、すごいよ。…本当に昔のままだ」
石造りの巨大なドグライアス城は、窓の数や城壁の彫刻まで細部まで完全に再現されている。
「へへっ、やった。ルーフに褒められた。よし、じゃあ荷解きしよう。建物の中も再現出来てると思うよ。後で城内を探検しようよ」
褒められてご機嫌になったシロは、荷物を持って城の中へ入っていった。
しかしルーフは、城を見上げまま動けず息を呑んだ。
(いや、すごいなんてもんじゃない…。これだけの建物を建てて、維持するなんて相当の魔力が必要だ。シロは自分の魔力を完全に使いこなせている)
「…ははっ、もう魔力の特訓なんて必要ないな」
シロの成長に嬉しさと、ほんの少しの寂しさを感じていると、パチンっと音と共に体が浮き、気付けばシロの腕の中にいた。
シロが瞬間移動の魔法を使い、ルーフを引き寄せたのだ。
「もー!遅いよ、ルーフっ!」
「へ?って、うわ!お前、勝手に人を移動させんな」
「だって全然来ないんだもん。あ、もしかしてお城気に入らなかった?普通の建物にする?」
「いや、そういうわけじゃねぇけどさ。あー、でも俺たち2人が過ごすのには広すぎないか?」
「大丈夫、安心して!最上階にある俺たちの部屋は、ミール王国の家と同じ造りにしてあるから!」
なぜか自信満々に答えるシロが可笑しくて、ルーフは「いや、そこは広くていいんだよ」とツッコミながらシロの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
夕方になると2人は城下町にあるレストランへ向かった。毎年、夏休みはドグライアスで過ごしていただけあって、シロもすっかり顔馴染みになっている。
最初の頃は、竜人のシロを疎ましそうに見てくる魔族もいたが、今では街を歩けば、気さくに声を掛けられるほどだ。
「よう、ルーフとシロじゃねぇか。久しぶりだなぁ」
レストランに入ると店主のスーが出迎えてくれた。
タヌキ魔族のスーは、ずんぐりむっくりした人の姿をしていて、目の周りはタヌキのように黒く、お尻からは太い尻尾が生えている。料理の際に何度も尻尾を焦がしているらしく、毛は黒く縮れてボサボサで所々ハゲている。
「お久しぶりです、スーさん。また尻尾が焦げてますよ」
シロは治癒魔法をかけて、スーの尻尾を元通りに治した。
「うひゃひゃっ、くすぐってぇー!お、尻尾が治ってる!むむっ、前より毛並みが良くなってるな。シロ、おめぇ随分と魔法が上手くなったじゃねぇか!
そういや昼間にドグライアス城を建てたのもシロだろ?もうお前が魔王になっちまえよ。竜人でもシロなら俺は支持するぜ」
スーは自分の尻尾を掴んで、嬉しそうに頬ずりをした。
「おい、スー。尻尾と遊ぶのは後にしろよ。俺たち腹減ってんだ。先に飯を作ってくれ」
すでに席に着いたルーフは呆れながらスーを急かした。
「へいへい。ルーフは相変わらず人使いが荒いな。まあ、でも尻尾の礼にサービスしてやるよ。ちょっと待ってな」
そう言ってスーは、フサフサになった尻尾を振りながら厨房の方へ入って行った。
スーの後ろ姿を見送りながらシロは、ルーフの向かいに座った。
「ふふ、スーさんも相変わらずだね。元気そうで良かった」
「まあな。でもあいつの尻尾なんて治す必要ねぇよ。どうせすぐ焦がすぞ」
ルーフは頬杖をついて、窓から見えるドグライアス城を眺めながら言った。
ルーフの予想通り、料理を運んできたスーの尻尾はまた焦げて黒く縮れていた。
荷物を下ろしたルーフは、近くの瓦礫に腰をかけ「相変わらずここはなんも変わんねぇなぁ」とぼやいた。
シロはそんなルーフを横目にニヤニヤしながら「そうだね。でも今年はちょっと違うかもよ」と笑った。
「あ?何が?」
ルーフが怪訝な顔すると、すっかり闇魔力をコントロール出来るようになったシロは、2人で過ごす家を魔法であっという間に建てた。
それは家、というより城。
昔のドグライアス城と全く同じ姿の城が、ルーフの目の前に現れたのだ。
「…すげぇ」
ルーフは城を見上げながら呟いた。
シロは腕を組んで自慢げに笑った。
「昔の文献や図鑑で前のドグライアス城について調べてたんだ。再現度も高いでしょ!俺の魔力も成長したと思わない?」
「ああ、すごいよ。…本当に昔のままだ」
石造りの巨大なドグライアス城は、窓の数や城壁の彫刻まで細部まで完全に再現されている。
「へへっ、やった。ルーフに褒められた。よし、じゃあ荷解きしよう。建物の中も再現出来てると思うよ。後で城内を探検しようよ」
褒められてご機嫌になったシロは、荷物を持って城の中へ入っていった。
しかしルーフは、城を見上げまま動けず息を呑んだ。
(いや、すごいなんてもんじゃない…。これだけの建物を建てて、維持するなんて相当の魔力が必要だ。シロは自分の魔力を完全に使いこなせている)
「…ははっ、もう魔力の特訓なんて必要ないな」
シロの成長に嬉しさと、ほんの少しの寂しさを感じていると、パチンっと音と共に体が浮き、気付けばシロの腕の中にいた。
シロが瞬間移動の魔法を使い、ルーフを引き寄せたのだ。
「もー!遅いよ、ルーフっ!」
「へ?って、うわ!お前、勝手に人を移動させんな」
「だって全然来ないんだもん。あ、もしかしてお城気に入らなかった?普通の建物にする?」
「いや、そういうわけじゃねぇけどさ。あー、でも俺たち2人が過ごすのには広すぎないか?」
「大丈夫、安心して!最上階にある俺たちの部屋は、ミール王国の家と同じ造りにしてあるから!」
なぜか自信満々に答えるシロが可笑しくて、ルーフは「いや、そこは広くていいんだよ」とツッコミながらシロの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
夕方になると2人は城下町にあるレストランへ向かった。毎年、夏休みはドグライアスで過ごしていただけあって、シロもすっかり顔馴染みになっている。
最初の頃は、竜人のシロを疎ましそうに見てくる魔族もいたが、今では街を歩けば、気さくに声を掛けられるほどだ。
「よう、ルーフとシロじゃねぇか。久しぶりだなぁ」
レストランに入ると店主のスーが出迎えてくれた。
タヌキ魔族のスーは、ずんぐりむっくりした人の姿をしていて、目の周りはタヌキのように黒く、お尻からは太い尻尾が生えている。料理の際に何度も尻尾を焦がしているらしく、毛は黒く縮れてボサボサで所々ハゲている。
「お久しぶりです、スーさん。また尻尾が焦げてますよ」
シロは治癒魔法をかけて、スーの尻尾を元通りに治した。
「うひゃひゃっ、くすぐってぇー!お、尻尾が治ってる!むむっ、前より毛並みが良くなってるな。シロ、おめぇ随分と魔法が上手くなったじゃねぇか!
そういや昼間にドグライアス城を建てたのもシロだろ?もうお前が魔王になっちまえよ。竜人でもシロなら俺は支持するぜ」
スーは自分の尻尾を掴んで、嬉しそうに頬ずりをした。
「おい、スー。尻尾と遊ぶのは後にしろよ。俺たち腹減ってんだ。先に飯を作ってくれ」
すでに席に着いたルーフは呆れながらスーを急かした。
「へいへい。ルーフは相変わらず人使いが荒いな。まあ、でも尻尾の礼にサービスしてやるよ。ちょっと待ってな」
そう言ってスーは、フサフサになった尻尾を振りながら厨房の方へ入って行った。
スーの後ろ姿を見送りながらシロは、ルーフの向かいに座った。
「ふふ、スーさんも相変わらずだね。元気そうで良かった」
「まあな。でもあいつの尻尾なんて治す必要ねぇよ。どうせすぐ焦がすぞ」
ルーフは頬杖をついて、窓から見えるドグライアス城を眺めながら言った。
ルーフの予想通り、料理を運んできたスーの尻尾はまた焦げて黒く縮れていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
281
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる