9 / 52
第8話 浮ついた気持ちになる
しおりを挟む
雑に哲平に紹介されたお兄さんは私に微笑して言う。
「弟がお世話になります。申し訳ございませんが、少しだけ彼と会話させていただいても良いでしょうか?」
「もちろんです」
頷くと、哲平のお兄さんは軽く私に頭を下げた後、哲平に顔を向けて、引きつった笑みを浮かべる。
「テツ、言葉遣いをなおしなさい、と何度も言いましたが、何度言ったらわかってもらえるんですか?」
「えーと、こちらはラス兄さんです。中身がお前ってわかったから来てもらった」
「言葉遣いが悪いままです。やり直し」
「紹介します。こちらが兄のラスです。キュレル子爵令嬢に会っていただきたくて呼びました」
紺色のセミロングの髪を紫色のリボンで後ろに一つにまとめたイケメンを哲平が紹介しなおしてくれた。
それにしても、このイケメンがお兄さん?!
羨ましい!
毎日、こんなイケメンを拝めるなんて!!
雑誌で特集を組まれたりするイケメン投票に、この人がエントリーいたら間違いなく投票している。
と、断言できるくらいにイケメンだった。
私は長髪の男性は好みのタイプじゃないんだけど、ラス様なら長髪でも私の好みの異性に入るわ…。
ああ、でも、この国は貴族社会なんだから、ちゃんと挨拶をしないと駄目よね。
哲平だって注意されてだけど、ちゃんとしてるんだから。
「お目にかかれて光栄です。アリス・キュレルと申します」
立ち上がってカーテシーをする。
この動作に関してはアリスが何度もやっていたようで、体が覚えているから自然と出来てしまう。
「ラス・イッシュバルドです。テツから先程、連絡を受けたのですが、あなたも別の世界から来た方なのですね」
「はい。本当のアリスは……」
言葉を濁すと、ラス様は事情をわかってくれたらしく、悲しげな笑みを見せる。
「キュレル子爵令嬢の事はあまり詳しくは存じ上げないのですが、こんな事になり残念です」
「ありがとうございます」
何て言葉を返したら良いのかわからなかったので、そう返すと、ラス様は微笑んで話題を変える。
「あなたの話はテツから聞いていますよ。とてもお世話になっていたようで」
「ちげぇよ。いや・・・、違います。お世話してやってたんです?」
「……敬語の使い方を学び直したほうが良さそうですね」
ラス様がぐりぐりとテツのこめかみに拳を押し付ける。
「いででで!!」
「申し訳ないですが、アリスさん。彼から大体の話は聞いているんですが、あなたからもお話を聞かせていただいてもよろしいですか?」
「あ、はい」
ラス様は私とテツの間の椅子に座ると、立っていた私に座り直すように声をかけてくれてから、話を促してくれた。
どうやら、哲平はラス様に色々と話をしているみたいね。
信用できる人なんだろうと、哲平を信じて、私は今までの出来事を改めて、ラス様に話した。
「婚約破棄といじめ、ですか…。しかも毒とは物騒ですね」
私が話し終えると、ラス様は重い表情で呟いてから、私を見て聞いてきた。
「アリスさんはどうしたいんです?」
「どうしたい…とは?」
「このまま、学校を辞めて静かに暮らすのがお望みですか?」
「それはないです。やられた分はやり返したいんです。彼女が受けた苦痛の分だけでも」
出来れば婚約破棄してきた男の顔を一発ぶん殴ってやりたいというのもある。
といっても、その男は違う学校に通ってるんだけど。
それに、そいつにひっかかった女の顔も見てみたいし、アリスをいじめてきた令嬢達には同じような苦痛を味あわせてやりたい。
あと、彼女に小瓶を渡した本当の黒幕も知りたいところね。
直接渡してきた相手の名前は、アリスの日記に書かれていたけど、本当に悪い奴は別にいるような気がする。
人にそこまでやった以上、一度くらい辛い思いはするべきよ。
そう思って、私が強い口調で答えると、ラス様は今度は哲平の方を見て尋ねる。
「テツ、あなたはどうしたいんです?」
「正直、死んだ子が可哀想だし、ありすを手伝いたい、のですが駄目でしょうか…?」
「……良いでしょう。それから、あなた達だけでは心許ないので私も手を貸します」
「はい?」
ラス様からの思いもよらない申し出に、私は思わず聞き返した。
「弟がお世話になります。申し訳ございませんが、少しだけ彼と会話させていただいても良いでしょうか?」
「もちろんです」
頷くと、哲平のお兄さんは軽く私に頭を下げた後、哲平に顔を向けて、引きつった笑みを浮かべる。
「テツ、言葉遣いをなおしなさい、と何度も言いましたが、何度言ったらわかってもらえるんですか?」
「えーと、こちらはラス兄さんです。中身がお前ってわかったから来てもらった」
「言葉遣いが悪いままです。やり直し」
「紹介します。こちらが兄のラスです。キュレル子爵令嬢に会っていただきたくて呼びました」
紺色のセミロングの髪を紫色のリボンで後ろに一つにまとめたイケメンを哲平が紹介しなおしてくれた。
それにしても、このイケメンがお兄さん?!
羨ましい!
毎日、こんなイケメンを拝めるなんて!!
雑誌で特集を組まれたりするイケメン投票に、この人がエントリーいたら間違いなく投票している。
と、断言できるくらいにイケメンだった。
私は長髪の男性は好みのタイプじゃないんだけど、ラス様なら長髪でも私の好みの異性に入るわ…。
ああ、でも、この国は貴族社会なんだから、ちゃんと挨拶をしないと駄目よね。
哲平だって注意されてだけど、ちゃんとしてるんだから。
「お目にかかれて光栄です。アリス・キュレルと申します」
立ち上がってカーテシーをする。
この動作に関してはアリスが何度もやっていたようで、体が覚えているから自然と出来てしまう。
「ラス・イッシュバルドです。テツから先程、連絡を受けたのですが、あなたも別の世界から来た方なのですね」
「はい。本当のアリスは……」
言葉を濁すと、ラス様は事情をわかってくれたらしく、悲しげな笑みを見せる。
「キュレル子爵令嬢の事はあまり詳しくは存じ上げないのですが、こんな事になり残念です」
「ありがとうございます」
何て言葉を返したら良いのかわからなかったので、そう返すと、ラス様は微笑んで話題を変える。
「あなたの話はテツから聞いていますよ。とてもお世話になっていたようで」
「ちげぇよ。いや・・・、違います。お世話してやってたんです?」
「……敬語の使い方を学び直したほうが良さそうですね」
ラス様がぐりぐりとテツのこめかみに拳を押し付ける。
「いででで!!」
「申し訳ないですが、アリスさん。彼から大体の話は聞いているんですが、あなたからもお話を聞かせていただいてもよろしいですか?」
「あ、はい」
ラス様は私とテツの間の椅子に座ると、立っていた私に座り直すように声をかけてくれてから、話を促してくれた。
どうやら、哲平はラス様に色々と話をしているみたいね。
信用できる人なんだろうと、哲平を信じて、私は今までの出来事を改めて、ラス様に話した。
「婚約破棄といじめ、ですか…。しかも毒とは物騒ですね」
私が話し終えると、ラス様は重い表情で呟いてから、私を見て聞いてきた。
「アリスさんはどうしたいんです?」
「どうしたい…とは?」
「このまま、学校を辞めて静かに暮らすのがお望みですか?」
「それはないです。やられた分はやり返したいんです。彼女が受けた苦痛の分だけでも」
出来れば婚約破棄してきた男の顔を一発ぶん殴ってやりたいというのもある。
といっても、その男は違う学校に通ってるんだけど。
それに、そいつにひっかかった女の顔も見てみたいし、アリスをいじめてきた令嬢達には同じような苦痛を味あわせてやりたい。
あと、彼女に小瓶を渡した本当の黒幕も知りたいところね。
直接渡してきた相手の名前は、アリスの日記に書かれていたけど、本当に悪い奴は別にいるような気がする。
人にそこまでやった以上、一度くらい辛い思いはするべきよ。
そう思って、私が強い口調で答えると、ラス様は今度は哲平の方を見て尋ねる。
「テツ、あなたはどうしたいんです?」
「正直、死んだ子が可哀想だし、ありすを手伝いたい、のですが駄目でしょうか…?」
「……良いでしょう。それから、あなた達だけでは心許ないので私も手を貸します」
「はい?」
ラス様からの思いもよらない申し出に、私は思わず聞き返した。
376
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
婚約者の命令で外れない仮面を着けた私は婚約破棄を受けたから、仮面を外すことにしました
天宮有
恋愛
婚約者バルターに魔法が上達すると言われて、伯爵令嬢の私シエルは顔の半分が隠れる仮面を着けることとなっていた。
魔法は上達するけど仮面は外れず、私達は魔法学園に入学する。
仮面のせいで周囲から恐れられていた私は、バルターから婚約破棄を受けてしまう。
その後、私を恐れていなかった伯爵令息のロランが、仮面の外し方を教えてくれる。
仮面を外しても魔法の実力はそのままで、私の評判が大きく変わることとなっていた。
婚約破棄された私。大嫌いなアイツと婚約することに。大嫌い!だったはずなのに……。
さくしゃ
恋愛
「婚約破棄だ!」
素直であるが故に嘘と見栄で塗り固められた貴族社会で嫌われ孤立していた"主人公「セシル」"は、そんな自分を初めて受け入れてくれた婚約者から捨てられた。
唯一自分を照らしてくれた光を失い絶望感に苛まれるセシルだったが、家の繁栄のためには次の婚約相手を見つけなければならず……しかし断られ続ける日々。
そんなある日、ようやく縁談が決まり乗り気ではなかったが指定されたレストランへ行くとそこには、、、
「れ、レント!」
「せ、セシル!」
大嫌いなアイツがいた。抵抗するが半ば強制的に婚約することになってしまい不服だった。不服だったのに……この気持ちはなんなの?
大嫌いから始まるかなり笑いが入っている不器用なヒロインと王子による恋物語。
15歳という子供から大人へ変わり始める時期は素直になりたいけど大人に見られたいが故に背伸びをして強がったりして素直になれないものーーそんな感じの物語です^_^
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる