13 / 45
8
しおりを挟む
ショー様の裏が見えたのは、あの時だけの一瞬で、その後、学園内を案内している間は、あの時見せた様な黒い感じは一切見せなかった。
案内しながらお互いの事を話し、あの一言以外は、とても好青年だった。
わたしと出会えて嬉しいだとか、可愛いねだとか、歯が浮くようなセリフばかりだったから、逆に胡散臭さを感じたのは、私の性格が悪いのかもしれない。
(でも、ウザいだとか、あんな事を言うって事は絶対に何かあるわよね…。とにかく、トーリ様ともお話してみなくちゃ)
次の日、わたしは早速、朝から、トーリ様に話しかけてみる事にした。
「おはようございます、トーリ様」
「おはよう」
トーリ様はキョロキョロと教室内を見渡した後、特に問題がなかったのか話しかけてくる。
「どうかしたのか?」
昨日の内にお互いの挨拶は終わっているから、早速、誘ってみる事にする。
「昨日、ショー様に学園を案内したんですが、ご迷惑でなければ、トーリ様も…」
断られるのは覚悟で聞いてみたところ、トーリ様は前髪をかきあげた後、全く、感情の見えない表情で聞いてくる。
「……ショーと2人で?」
「あ…、はい。ごめんなさい。もう、トーリ様はいらっしゃらなくて…」
気分を害してしまったのかと思って謝ると、トーリ様は言う。
「有り難いが、学園の案内は他の人にしてもらう。けど、君と話はしたい。出来れば、ショーに知られない様に」
トーリ様は小さな声で言うと、もう一度、教室内と出入口の扉の方を見たあと、ノートに素早く走り書きをしたかと思うと、そのページを破って、わたしに他の人に見られにくい様にか、小さく折りたたんでから差し出してきた。
「とにかく、ここから離れてくれ。ショーに見られたら面倒な事になる」
慌てて、周りを見回し、ショー様がいない事を確認してから席に戻り、教科書を机の上に立てて、他の人にも見られない様にしてから紙を開く。
そこにはこう書かれていた。
『ショーは俺の気に入ったものを奪うのが趣味だ。俺が君に興味を示さないふりをしないと君が狙われる。どういう事かこれだけじゃわかりにくいだろうから、詳しい話をしたい。今日の放課後、一度、帰るふりをした後、教室に戻れるか?』
その内容を読んで呆然とした。
(まさに、関係性がわたしとお姉様と同じじゃないの! もしかして、トーリ様が無表情なのは、ショー様に感情を悟らせないため…? だから、皆に対して素っ気ない態度なの?)
詳しいことは聞いてみないとわからない為、確実とは言えないけれど、その可能性が高いので、ショー様が教室内にいない事を、再度確認してから、もらった紙を自分のカバンの中にしまい、後ろの方の席のトーリ様の方を見ると、トーリ様は前を見るふりをして、目だけ私の方を向けたので、首を大きく縦に振ると、トーリ様は軽く手をあげた。
案内しながらお互いの事を話し、あの一言以外は、とても好青年だった。
わたしと出会えて嬉しいだとか、可愛いねだとか、歯が浮くようなセリフばかりだったから、逆に胡散臭さを感じたのは、私の性格が悪いのかもしれない。
(でも、ウザいだとか、あんな事を言うって事は絶対に何かあるわよね…。とにかく、トーリ様ともお話してみなくちゃ)
次の日、わたしは早速、朝から、トーリ様に話しかけてみる事にした。
「おはようございます、トーリ様」
「おはよう」
トーリ様はキョロキョロと教室内を見渡した後、特に問題がなかったのか話しかけてくる。
「どうかしたのか?」
昨日の内にお互いの挨拶は終わっているから、早速、誘ってみる事にする。
「昨日、ショー様に学園を案内したんですが、ご迷惑でなければ、トーリ様も…」
断られるのは覚悟で聞いてみたところ、トーリ様は前髪をかきあげた後、全く、感情の見えない表情で聞いてくる。
「……ショーと2人で?」
「あ…、はい。ごめんなさい。もう、トーリ様はいらっしゃらなくて…」
気分を害してしまったのかと思って謝ると、トーリ様は言う。
「有り難いが、学園の案内は他の人にしてもらう。けど、君と話はしたい。出来れば、ショーに知られない様に」
トーリ様は小さな声で言うと、もう一度、教室内と出入口の扉の方を見たあと、ノートに素早く走り書きをしたかと思うと、そのページを破って、わたしに他の人に見られにくい様にか、小さく折りたたんでから差し出してきた。
「とにかく、ここから離れてくれ。ショーに見られたら面倒な事になる」
慌てて、周りを見回し、ショー様がいない事を確認してから席に戻り、教科書を机の上に立てて、他の人にも見られない様にしてから紙を開く。
そこにはこう書かれていた。
『ショーは俺の気に入ったものを奪うのが趣味だ。俺が君に興味を示さないふりをしないと君が狙われる。どういう事かこれだけじゃわかりにくいだろうから、詳しい話をしたい。今日の放課後、一度、帰るふりをした後、教室に戻れるか?』
その内容を読んで呆然とした。
(まさに、関係性がわたしとお姉様と同じじゃないの! もしかして、トーリ様が無表情なのは、ショー様に感情を悟らせないため…? だから、皆に対して素っ気ない態度なの?)
詳しいことは聞いてみないとわからない為、確実とは言えないけれど、その可能性が高いので、ショー様が教室内にいない事を、再度確認してから、もらった紙を自分のカバンの中にしまい、後ろの方の席のトーリ様の方を見ると、トーリ様は前を見るふりをして、目だけ私の方を向けたので、首を大きく縦に振ると、トーリ様は軽く手をあげた。
99
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
【完結】王妃を廃した、その後は……
かずきりり
恋愛
私にはもう何もない。何もかもなくなってしまった。
地位や名誉……権力でさえ。
否、最初からそんなものを欲していたわけではないのに……。
望んだものは、ただ一つ。
――あの人からの愛。
ただ、それだけだったというのに……。
「ラウラ! お前を廃妃とする!」
国王陛下であるホセに、いきなり告げられた言葉。
隣には妹のパウラ。
お腹には子どもが居ると言う。
何一つ持たず王城から追い出された私は……
静かな海へと身を沈める。
唯一愛したパウラを王妃の座に座らせたホセは……
そしてパウラは……
最期に笑うのは……?
それとも……救いは誰の手にもないのか
***************************
こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
婚約解消の理由はあなた
彩柚月
恋愛
王女のレセプタントのオリヴィア。結婚の約束をしていた相手から解消の申し出を受けた理由は、王弟の息子に気に入られているから。
私の人生を壊したのはあなた。
許されると思わないでください。
全18話です。
最後まで書き終わって投稿予約済みです。
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる