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トーリ様はわたしの計画を聞いて、整った顔を歪める。
「そう思うように上手くいくとは思えないが…」
「それはわかっています。だからこそ、トーリ様にとお手伝い願いたいのです。勝手なお願いだとはわかっておりますし、わたしの演技力が必要にはなってくるのですが、ショー様と話をしている時は、昔の婚約者の事を思い出したりして、恋しているふりをしてみるつもりです」
「その言葉を信じる事にして、あと、問題なのは君の姉は上手くひっかかると思うか?」
「もちろん、姉が信じる様な演技をするつもりでいます。それくらい、わたしは姉に対して軽蔑の念を持ってますし、これ以上、わたしの人生を壊されたくないですから」
強く決意して、はっきりと言葉を返すと、トーリ様は頷いてくれた。
「協力はするが危険だぞ? それに、ショーは俺と親しい人を…。って、協力というのは、そういう事か」
トーリ様はそう言って首を縦に振る。
「まずは餌をまくんだな。一番最初に俺と君が仲良くなる」
「はい。そして、ショー様が狙いにかかってきたところで、わたしは引っかかったふりをします」
「心配な事がある」
「……なんでしょう?」
「嫌な事を聞いてもいいか?」
「……どうぞ」
何を言われるのかわからなくて、本当は嫌な事は聞かれたくないと答えたかったけれど、それでは話が進まない様な気がして頷くと、トーリ様が尋ねてくる。
「君が本当にショーに恋に落ちた場合、どうするつもりだ? 今までの女性は皆そうだった。もちろん、何度も忠告したが意味がなかったし、恋に落ちた後は、俺達の言葉なんて聞きもしなかった」
「……今のところは、その可能性は皆無なんですが」
「今は、ショーは俺が君に興味がないと思っているからだ。俺が君と仲が良いと分かれば、アピールの仕方が変わってくる。君は、自分でも言っていたが恋愛経験が少ないんだろう? 逆にショーは恋愛経験はどうだかわからないが、対人スキルは身につけてる。君が落とされる可能性が高いような気がするが…?」
(トーリ様の言っている事はあながちありえない事でもないから、言い返せないのが辛い。恋愛経験が少ない分、優しくされると舞い上がってしまう可能性はあるわ。でも、本当にショー様が最低な人だったとしたら、わかった時点で目が覚めるはず。というよりかは、もうわかっているから大丈夫なはず。何より、その時にはお姉様がショー様と上手くいっているはずだわ)
わたしが悩んでいると、トーリ様が今度は渋い顔をして続ける。
「一番嫌な事がある」
「……何でしょう?」
「君達の復讐や策略を成功させる為には、俺は君の姉に恋をしたふりをしないといけないんじゃないか?」
「……どうしてですか?」
と聞き返したところで気付いた。
ショー様はトーリ様が好意を持っている人にしか興味を示さないことに。
「あの…、やはり、ご迷惑でしょうか」
「迷惑…、迷惑だが、やらないとしょうがないわけだろう? それに、やるなら完璧にやらないと」
「わかっています。というわけで、トーリ様の出番になるのですが…」
「俺はベタベタされるのが嫌いなんだ」
「一応、姉は可愛いですよ?」
「そういう問題じゃない! それに君の姉は既婚者だろ。たとえ、夫が許しているとはいえ、フリでも嫌だし、ショーを思い出しそうで余計に嫌だ」
本当に嫌そうな顔をしているトーリ様を見ると、婚約者として選ぶなら、トーリ様の方が良いかもしれないと思った。
(だって、本当に嫌そうなのに、わたしに協力してくれるっていうんだものね。そういえば、ショー様の事について、ご両親はどう思われているのかしら?)
そう思って話を聞くと、ショー様が自分から誰かに恋をさせようと、色々な人と会わせてはいるらしいんだけれど、全く上手くいかないらしい。
(でも、お姉様が相手なら、もしかしたら…?)
「トーリ様にはご迷惑をおかけして申し訳ないのですが…」
「わかってるよ…。君が傷付かないのならかまわない」
トーリ様の言葉を聞いて、わたしを思いやってくださっているのがわかり、想像した以上に、トーリ様が普通の感覚の持ち主である事にホッとした。
「そう思うように上手くいくとは思えないが…」
「それはわかっています。だからこそ、トーリ様にとお手伝い願いたいのです。勝手なお願いだとはわかっておりますし、わたしの演技力が必要にはなってくるのですが、ショー様と話をしている時は、昔の婚約者の事を思い出したりして、恋しているふりをしてみるつもりです」
「その言葉を信じる事にして、あと、問題なのは君の姉は上手くひっかかると思うか?」
「もちろん、姉が信じる様な演技をするつもりでいます。それくらい、わたしは姉に対して軽蔑の念を持ってますし、これ以上、わたしの人生を壊されたくないですから」
強く決意して、はっきりと言葉を返すと、トーリ様は頷いてくれた。
「協力はするが危険だぞ? それに、ショーは俺と親しい人を…。って、協力というのは、そういう事か」
トーリ様はそう言って首を縦に振る。
「まずは餌をまくんだな。一番最初に俺と君が仲良くなる」
「はい。そして、ショー様が狙いにかかってきたところで、わたしは引っかかったふりをします」
「心配な事がある」
「……なんでしょう?」
「嫌な事を聞いてもいいか?」
「……どうぞ」
何を言われるのかわからなくて、本当は嫌な事は聞かれたくないと答えたかったけれど、それでは話が進まない様な気がして頷くと、トーリ様が尋ねてくる。
「君が本当にショーに恋に落ちた場合、どうするつもりだ? 今までの女性は皆そうだった。もちろん、何度も忠告したが意味がなかったし、恋に落ちた後は、俺達の言葉なんて聞きもしなかった」
「……今のところは、その可能性は皆無なんですが」
「今は、ショーは俺が君に興味がないと思っているからだ。俺が君と仲が良いと分かれば、アピールの仕方が変わってくる。君は、自分でも言っていたが恋愛経験が少ないんだろう? 逆にショーは恋愛経験はどうだかわからないが、対人スキルは身につけてる。君が落とされる可能性が高いような気がするが…?」
(トーリ様の言っている事はあながちありえない事でもないから、言い返せないのが辛い。恋愛経験が少ない分、優しくされると舞い上がってしまう可能性はあるわ。でも、本当にショー様が最低な人だったとしたら、わかった時点で目が覚めるはず。というよりかは、もうわかっているから大丈夫なはず。何より、その時にはお姉様がショー様と上手くいっているはずだわ)
わたしが悩んでいると、トーリ様が今度は渋い顔をして続ける。
「一番嫌な事がある」
「……何でしょう?」
「君達の復讐や策略を成功させる為には、俺は君の姉に恋をしたふりをしないといけないんじゃないか?」
「……どうしてですか?」
と聞き返したところで気付いた。
ショー様はトーリ様が好意を持っている人にしか興味を示さないことに。
「あの…、やはり、ご迷惑でしょうか」
「迷惑…、迷惑だが、やらないとしょうがないわけだろう? それに、やるなら完璧にやらないと」
「わかっています。というわけで、トーリ様の出番になるのですが…」
「俺はベタベタされるのが嫌いなんだ」
「一応、姉は可愛いですよ?」
「そういう問題じゃない! それに君の姉は既婚者だろ。たとえ、夫が許しているとはいえ、フリでも嫌だし、ショーを思い出しそうで余計に嫌だ」
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(だって、本当に嫌そうなのに、わたしに協力してくれるっていうんだものね。そういえば、ショー様の事について、ご両親はどう思われているのかしら?)
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「わかってるよ…。君が傷付かないのならかまわない」
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