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17 たくさんの味方①
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「むむっ! なんと! 最低な野郎じゃ! ここはわれがちょっと怒ってくる!」
チワー様が私の腕から抜け出そうとするので、抱きしめ直して止める。
「駄目ですよ、チワー様。他の人間の前では言葉を話してはいけないとロディ様にも言われたはずです」
「……むう。そうじゃったな。わかった! 喋らないようにする! だから、わしに行かせてくれ!」
「精霊様を危険にさらすわけにはいきません! 私のことを言っているのですから、私が行きます! それにチワー様が行っても可愛いだけで終わってしまいます!」
「なぬ!? われは聖獣じゃぞ!?」
小声で言い合っている間も、ドードー様たちの会話は続く。
「まあ、顔も可愛いほうだし男爵令嬢だっけ? 平民じゃないなら、僕に落ちたあとは、そのまま結婚してやっても良いし?」
「おい、そういうのやめとけよ。人として最低だよ」
ドードー様と話している彼の同僚は笑っているから、本気で止めているようには聞こえなかった。
どちらも譲らないため、私とチワー様は一緒に小屋の中に入ることにした。
こんなことで天罰を下すのは神様の無駄遣いのような気がするからできない。
それに、これくらいなら私で対処できるはずよ。
「綺麗事を言うなよ! お前は彼女の母親の身体をジロジロと見てるの知ってるんだぞ!」
「やめろ! 大きな声で言うなよ! 動物たちに聞かれたらどうするんだ!」
「おっと、そうだったな」
同僚に注意されたドードー様は、慌てて窓を閉めた。
でも、もう遅いわ。
しっかり聞いたもの。
「よし、これで大丈夫だろ? 心配するなって、ミーア嬢はヒース殿下に呼ばれてるんだ。もしかしたら、今頃良いことを2人でしてるかもしれないぞ」
木の扉は薄いため、窓を閉めてもあまり意味がなかった。
「良いことってどんなことなのでしょうか」
小屋の扉を片手で開き、真正面にある木のテーブルの椅子に座っていた、ドードー様に冷たい声で尋ねた。
「え? あ、え? ミーアさん? どうしたのいきなり。そんな怖い顔して」
ドードー様は焦った顔をして椅子から立ち上がると、苦笑して言う。
「もうお話は終わったんだね。僕たちもちょうど休憩を終わろうと思っていたところなんだ」
「そうそう。じゃあ、お先に!」
ドードー様と話をしていた同僚のほうは、逃げるように私の横を素早く通り過ぎて小屋から出ていく。
あの人に関しては今は逃がしてあげるけれど、あとからヒース様に報告しよう。
それから、あんな話をしていたということをウムオさんたちに頼んで、使用人たちに噂を流してもらうようにしましょう。
そうすれば女性陣は彼に警戒するようになるでしょうし、気の弱そうな男性だから手を出すこともできないでしょう。
もちろん、動物たちには彼が王城の敷地内にいる間は見張ってもらうようにしないといけないわ。
今は、あの人のことはおいておいて、目の前にいるこの人を片付けないといけないわ。
魔法を使ってもいいのだけれど、この小屋が壊れちゃう可能性があるし、外へ連れ出したほうが良いかしら?
「あのミーアさん、どうかしたの?」
私が黙り込んでいるからか、ドードー様は引きつった笑みを浮かべて話しかけてきた。
どうにかして誤魔化そうとしているみたいだけれど、そんなことはさせないわ。
「どうもこうも何も、私を落とすとかどうとか言っておられましたが、どう落とすおつもりなんでしょうか?」
「ど、どうって? え? そんな話をしていたかな?」
しらばっくれようとするので、腕の中のチワー様が唸り始める。
「わぁ、可愛い犬だね。その子は新入りさんかな?」
無遠慮に手を伸ばしてはいけないとわかっているはずなのに、動揺しているのかドードー様はチワー様に向かって手を伸ばしてきた。
すると、容赦なくチワー様はがぶりとドードー様の指に噛み付いた。
「いった! あはは。可愛い顔して凶暴なんだね」
ドードー様は苦笑しながら手を引っ込める。
噛まれた彼の指からは血が流れはじめた。
チワー様がもぞもぞ動いているなと思ったら、必死になって私の服の袖で自分の口を拭いていらっしゃる。
チワー様のお口はたとえ綺麗になったとしても、私の服が汚れるだけなのですが……。
心の中でそう思いつつ、このまま話が流れていかないようにドードー様に笑顔で話しかける。
「自分で言っておられたことをお忘れのようですから、私からお話させていただきますね」
「え? 何の話かな?」
「黙ってお聞きください」
強い口調で言うと、ドードー様は苦笑したまま黙った。
そこで彼が言っていたことをそのまま伝えると、ドードー様は悲しげに首を横に振る。
「僕がそんな酷いことを言うわけないじゃないか! もちろん、君の話をしていたことは確かだけど、そんな邪な話じゃない。仲間だと思っていた君にそんなことを言われるだなんてショックだよ」
「よくもそんなことが言えますね! 今回の件はヒース様に報告させてもらいます。聞き取り調査があると思いますので、その時はちゃんとお話してくださいませ」
背中を向けたら何をされるかわからないので、ドードー様を睨みつけたまま後ろに下がる。
室内では魔法を使えないので扉を開けておいた。
だからか、小屋の中に動物が入ってきてしまったようで、後退る私の足に何かがぶつかった。
振り返ると、私頭から首にかけて綺麗なオレンジ色の斑紋を持つ、私の腰くらいまである大きなペンギンが私を見上げていた。
「キペンギオさん!」
『キペンギオです。どうぞよろしく』と書かれた札を首にかけたキペンギオさんは私とチワー様をジッと見つめてくる。
首に掛けている札は誰からもらったのか聞きたい。
まあ、十中八九ヒース様でしょうけど。
「ペ」
チワー様が話そうとしたので慌てて口を押さえた。
「ん? 今、その犬話さなかったかな?」
ドードー様に尋ねられて、どう誤魔化すか考えた時だった。
キペンギオさんが後ろを振り返って、羽を動かして何かの合図をした。
少しして小屋の中に入ってきたのは、最近になってヒョウのヒョオさんと区別がつくようになってきたジャガーのジャガオさんだった。
※オーランドたちのざまぁは、こちらが落ち着いて?から、改めてありますのでお待ちくださいませ。
チワー様が私の腕から抜け出そうとするので、抱きしめ直して止める。
「駄目ですよ、チワー様。他の人間の前では言葉を話してはいけないとロディ様にも言われたはずです」
「……むう。そうじゃったな。わかった! 喋らないようにする! だから、わしに行かせてくれ!」
「精霊様を危険にさらすわけにはいきません! 私のことを言っているのですから、私が行きます! それにチワー様が行っても可愛いだけで終わってしまいます!」
「なぬ!? われは聖獣じゃぞ!?」
小声で言い合っている間も、ドードー様たちの会話は続く。
「まあ、顔も可愛いほうだし男爵令嬢だっけ? 平民じゃないなら、僕に落ちたあとは、そのまま結婚してやっても良いし?」
「おい、そういうのやめとけよ。人として最低だよ」
ドードー様と話している彼の同僚は笑っているから、本気で止めているようには聞こえなかった。
どちらも譲らないため、私とチワー様は一緒に小屋の中に入ることにした。
こんなことで天罰を下すのは神様の無駄遣いのような気がするからできない。
それに、これくらいなら私で対処できるはずよ。
「綺麗事を言うなよ! お前は彼女の母親の身体をジロジロと見てるの知ってるんだぞ!」
「やめろ! 大きな声で言うなよ! 動物たちに聞かれたらどうするんだ!」
「おっと、そうだったな」
同僚に注意されたドードー様は、慌てて窓を閉めた。
でも、もう遅いわ。
しっかり聞いたもの。
「よし、これで大丈夫だろ? 心配するなって、ミーア嬢はヒース殿下に呼ばれてるんだ。もしかしたら、今頃良いことを2人でしてるかもしれないぞ」
木の扉は薄いため、窓を閉めてもあまり意味がなかった。
「良いことってどんなことなのでしょうか」
小屋の扉を片手で開き、真正面にある木のテーブルの椅子に座っていた、ドードー様に冷たい声で尋ねた。
「え? あ、え? ミーアさん? どうしたのいきなり。そんな怖い顔して」
ドードー様は焦った顔をして椅子から立ち上がると、苦笑して言う。
「もうお話は終わったんだね。僕たちもちょうど休憩を終わろうと思っていたところなんだ」
「そうそう。じゃあ、お先に!」
ドードー様と話をしていた同僚のほうは、逃げるように私の横を素早く通り過ぎて小屋から出ていく。
あの人に関しては今は逃がしてあげるけれど、あとからヒース様に報告しよう。
それから、あんな話をしていたということをウムオさんたちに頼んで、使用人たちに噂を流してもらうようにしましょう。
そうすれば女性陣は彼に警戒するようになるでしょうし、気の弱そうな男性だから手を出すこともできないでしょう。
もちろん、動物たちには彼が王城の敷地内にいる間は見張ってもらうようにしないといけないわ。
今は、あの人のことはおいておいて、目の前にいるこの人を片付けないといけないわ。
魔法を使ってもいいのだけれど、この小屋が壊れちゃう可能性があるし、外へ連れ出したほうが良いかしら?
「あのミーアさん、どうかしたの?」
私が黙り込んでいるからか、ドードー様は引きつった笑みを浮かべて話しかけてきた。
どうにかして誤魔化そうとしているみたいだけれど、そんなことはさせないわ。
「どうもこうも何も、私を落とすとかどうとか言っておられましたが、どう落とすおつもりなんでしょうか?」
「ど、どうって? え? そんな話をしていたかな?」
しらばっくれようとするので、腕の中のチワー様が唸り始める。
「わぁ、可愛い犬だね。その子は新入りさんかな?」
無遠慮に手を伸ばしてはいけないとわかっているはずなのに、動揺しているのかドードー様はチワー様に向かって手を伸ばしてきた。
すると、容赦なくチワー様はがぶりとドードー様の指に噛み付いた。
「いった! あはは。可愛い顔して凶暴なんだね」
ドードー様は苦笑しながら手を引っ込める。
噛まれた彼の指からは血が流れはじめた。
チワー様がもぞもぞ動いているなと思ったら、必死になって私の服の袖で自分の口を拭いていらっしゃる。
チワー様のお口はたとえ綺麗になったとしても、私の服が汚れるだけなのですが……。
心の中でそう思いつつ、このまま話が流れていかないようにドードー様に笑顔で話しかける。
「自分で言っておられたことをお忘れのようですから、私からお話させていただきますね」
「え? 何の話かな?」
「黙ってお聞きください」
強い口調で言うと、ドードー様は苦笑したまま黙った。
そこで彼が言っていたことをそのまま伝えると、ドードー様は悲しげに首を横に振る。
「僕がそんな酷いことを言うわけないじゃないか! もちろん、君の話をしていたことは確かだけど、そんな邪な話じゃない。仲間だと思っていた君にそんなことを言われるだなんてショックだよ」
「よくもそんなことが言えますね! 今回の件はヒース様に報告させてもらいます。聞き取り調査があると思いますので、その時はちゃんとお話してくださいませ」
背中を向けたら何をされるかわからないので、ドードー様を睨みつけたまま後ろに下がる。
室内では魔法を使えないので扉を開けておいた。
だからか、小屋の中に動物が入ってきてしまったようで、後退る私の足に何かがぶつかった。
振り返ると、私頭から首にかけて綺麗なオレンジ色の斑紋を持つ、私の腰くらいまである大きなペンギンが私を見上げていた。
「キペンギオさん!」
『キペンギオです。どうぞよろしく』と書かれた札を首にかけたキペンギオさんは私とチワー様をジッと見つめてくる。
首に掛けている札は誰からもらったのか聞きたい。
まあ、十中八九ヒース様でしょうけど。
「ペ」
チワー様が話そうとしたので慌てて口を押さえた。
「ん? 今、その犬話さなかったかな?」
ドードー様に尋ねられて、どう誤魔化すか考えた時だった。
キペンギオさんが後ろを振り返って、羽を動かして何かの合図をした。
少しして小屋の中に入ってきたのは、最近になってヒョウのヒョオさんと区別がつくようになってきたジャガーのジャガオさんだった。
※オーランドたちのざまぁは、こちらが落ち着いて?から、改めてありますのでお待ちくださいませ。
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