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35、幽閉となりました
しおりを挟む兄上の今後に関することを話し合う議会は無事開かれ、兄上の処分……もとい処遇については、この王宮の北側にある塔に幽閉となった。
呆れたことに、この件が発覚して臨時議会が開かれるとなった途端、被害を申し出る者が多数いたのだ。
正直、被害にあった女性を呼び出し話しをさせることはしたくなかったが、個別に対処せざる終えない事も出てきそうだったので、被害女性への補償等々はとりあえず面談後に考える事にしてた。そんなわけで、兄上は誰の反対もなく幽閉となった。
国政に口を出せなくなった王妃は、王族なのだからそのぐらいよかろうになどと言っていたらしいが、侍女や使用人にそっぽを向かれる結果となり、最終的には口を噤んだ。
ちなみに、兄上の継承権剥奪はかねてからの予定通りで、それに加え王族としての地位も剥奪されることになった。これは被害にあった女性が、訴えてきた人数以上いるのではないかと思われた為の防御策だ。
これを機に国から金をせしめよう……と言う輩は普通にいるだろうが…厄介なのは、数年後に後継者争いに利用されかねないということだった。いくら法整備したとしても、やる奴はやる。余計なやる気だけは素晴らしい貴族も多いのだ。
なので兄上の王族としての身分を剥奪し、今後兄上の子供だと名乗りがあったとしても、多少の保証はするがそれ以外は対処しない事を明確にしておかなければいけない。
男爵令嬢だけの話しであれば、幽閉ではなく領地転換した上での領地での永久謹慎で済んだかもしれないけれど、ここまで大きくなるとどうにもならない。どちらかと言うと『王族で良かったね』の方が強いかも知れない案件だ。
それに別塔とは言え王宮だ。
とりあえずの衣食住は、最低限ではあるかと思うが保障され、父や俺ほどではないにしろ、むざむざ殺されるような警備は勿論しない。
市井に放逐や国外追放などの安易な罰であれば、恨みを抱いて殺される場合だってある。
この世界では女性の地位があまり高くないし重要視されない…かと言って大人しいわけではないのだ。
なので『誰もやらないなら私が殺る』と思い詰める女性もいるだろう。
まぁもし兄上が、北側の塔に幽閉に異を唱えるのであれば、お触れを出しての市井放逐も考えないでもない。性格を考えると今後幽閉が嫌だと駄々を捏ねることもあるだろうから、その時はこれを利用して脅すことも必要になるだろう。
こうして厄介な兄上の案件も一段落し、思いもよらぬ…というか、あまり歓迎しない王太子の身分が俺に転がってきた。あとは、適当な婚約者を付けられぬ内に、ミレーユとの仲をどうにかしなければいけない…というかしたい。ちなみに、兄上との婚約発表の後は一度も顔を見ていないし、手紙もミレーユからの手紙一通のみ。
なるべくなら、彼女の意に沿うようにしたいし、できれば俺は彼女と一緒にいたい。
なら頑張るしかないんだろうな……と思う。
前世の身ならいざ知らず…今の王太子としての身分を考えるとなりふり構わずと言うのも難しい。
悩みは一つ解決すればまた一つ湧いてくる。
悩んだ末に禿げないように…禿げる前に彼女と結婚できるように……とりあえず『次長』に願っておくことにした。
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