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94、ナカーマ、ナカーマ
しおりを挟む「ご無沙汰しております」
仕上げに口紅を差し直すだけという段階まで支度を終え客室に行くと、見知った顔の商人が深々と頭を下げられた。
「ごっ…ご無沙汰しています……っていうかなぜ……」
トーマスに自分の名前や身分を教えた記憶はなかったので、来客を告げられた時から色々考えていたけれど、結局ここに来るまで何も思い浮かばなかった。なので、なぜここにいるのか?とか、どうして分かった?とか、思うことは色々あるけれど、とりあえずは何も考えないことにした。
だって……考えたってしょうがない。面倒くさいしね。
トーマスの来訪に驚きはしたけれど、結局やっぱりどこに落ち着いてしまった……。
「お久しぶりでございます。所在の方はマルスさんに聞きましてね。近々婚約するとは聞いていたのですけれど……今日は、思いがけないものが手に入ったというのと、闇の精霊対策にどうかと思いまして……」
そう言って私の前に置いたのは一冊の本だった。
見た感じは物語に出てきそうな魔導書といった感じだった。
「これ……は?」
開いてみると中には見たことのない魔法陣が色々と書かれていた。
学院の図書館でも街の図書館でも、こんなに沢山の魔法陣が書かれた本はみたことが無かった。
それも……魔法陣に書かれた文字が日本語の……。
「古代文字なのかはたまた異国の文字なのか……私には全く発動できません。まぁたとえ発動できたとしても私にはそれを使う魔力はありませんので、発動できそうなジュリ様に引き取っていただこうと思ったのです」
そう言って本を手にする私を見てニッコリした。
……ちょっとトーマスさん………すごくない?
というか、ちょっと怖いかも。
え?この日本語の魔法陣も、私が使えると確信しているのだろうか?
恐る恐るトーマスさんを見るとニッコリされて一言……。
「読めますよね?」
は?え?おぉ???????
なんでなんで???なんでバレた?
言葉を発するのも忘れ、思わずトーマスさんを凝視していると、またしてもニッコリ笑って……
『以前も単語読んでましたよね?何気に私が書いた日本語を……』
は?え?えぇぇぇぇぇぇ―ーーっ!!
ちょっちょっと待って……思わずスルーしそうになったけど今の日本語だよね????
え?トーマスさん????日本人?ってか、転生者なのぉっっ?!
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