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エドワード様は多少ふらつきながらも、先ほどよりもしっかりとした足取りで前へ前へと進んでいった。

私はそれを足手まといにならないように小走りで追いかける。

「・・・マコト・・・具合は・・・・・・・・・・・・バカなっ!!」

歩きながら誰かと念話でもしているのか、時折エドワード様の小声が聞こえてくる。

そして、最後には感情を抑えきれないような大きな叫び声を発した。

ビクッとしてエドワード様を見つめる。

エドワード様の足取りは次第にゆっくりとなり、終いにはその場に座り込んでしまった。

「エドワード様、どうしたのですか?」

エドワード様の真横に座り込み、顔を覗き込む。

「君には関係のないことだ・・・。」

関係ないと告げるエドワード様の瞳には深い悲しみの色が浮かんでいた。

「悲しいことがあったのならば、泣くといいですよ。泣くとすっきりいたしますよ。」

エドワード様は何も言わず、ただ一筋の涙だけを流した。

いったい何があったのだろうか。

でも、深い悲しみの縁にいるエドワード様には、それ以上は声をかけることもできなかった。

 

 

 

 

しばらくして、エドワード様はふらふらと立ち上がった。

その顔はまだ悲しみから抜け出せていないようであったが、しっかりと前を見据えていた。

「行かれるのですか?」

「・・・。」

エドワード様は答えずに歩き始める。

一歩一歩確実に。

私はその後を逸れないようにしっかりと追いかける。

「・・・着いてこないでくれ。一人にしてくれ。」

「!!」

しばらくエドワード様の後を追いかけて歩いていると、こちらも見ずにエドワード様はポツリと呟いた。

その声音に驚いて歩みが止まる。

エドワード様の声にはこれまでとは違い、明らかな拒絶が含まれていたから。

このままエドワード様を一人にしていいのかわからない。

だけれども、このまま無視してついて行くことも許さないような声音だった。

立ち止まって動けなくなってしまった私を気にすることもなく、エドワード様は歩いて行ってしまった。

呆然と立ち尽したまま、私はエドワード様が去っていくのをいつまでもいつまでも見つめていた。

 

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