20 / 103
20
しおりを挟む
「見せたいものがあると言っただろ?ほら、こっちだ」
ルーノ様に手を引かれ、生垣でできた迷路を進み、抜けた先には。
「綺麗……」
「だろう?」
一面に広がる花の絨毯。
それも、濃淡の違う紫色の花で模様が描かれている。
紫の花の絨毯が広がっている。
優しい春風に、さわさわと揺れる様子もとても可愛い。
しばらく無言で美しい景色を見ていた。
「アイリーンに見せたかったんだ。この花、ヒヤシンスって言うんだ。本当は、黄色やピンクや白や赤、いろいろな色を咲かせるらしんだけど、あえて紫だけを植えてるんらしい」
ポカーンとした顔で思わずルーノ様を見てしまった。
「詳しいんですね……」
この間は薔薇くらいしか知らないと言っていたのに……。
「あはは。実は事前に教えてもらったんだ。花言葉も知っているぞ?紫の花ことばは『許してください』と『初恋のひたむきさ』だそうだ。なんでも神話がもとになった花言葉だそうだ」
しゃがんで、ヒヤシンスの花をじっくりと眺めた。
濃い紫色は、ルーノ様の瞳の色に似ている。
室内では濃紺に見えたルーノ様の瞳は、太陽の元では動きによっては少し紫っぽく見えることもある。
許してください……。
「庭師には積んでいいと許可をもらっているよ」
私の隣にしゃがむルーノ様。
「花言葉を、もう一度教えて」
横を向けば、ルーノ様の顔がすぐ近くにある。肩と肩が触れ合う。
「許してください」
ルーノ様の口がゆっくりと花言葉を口にする。
ルーノ様の瞳の色に一番近い濃い色のヒヤシンスを1つ摘む。
5つほどの可憐な花のついたヒヤシンスを二人の前に差し出した。
「許してください……それから」
ルーノ様が口にした花言葉を繰り返す。
「初恋の……ひたむきさ」
ルーノ様がもう一つの花言葉を口にした。
ルーノ様の瞳色をしたヒヤシンスを、チーフポケットに刺した。
「初恋のひたむきさ……」
熱に浮かされたように、ルーノ様の言葉を繰り返す。
チーフポケットにヒヤシンスを刺した手をルーノ様が握った。
「許してください……」
ルーノ様から出た言葉に、続けた。
「許してください」
誰に、何を許しを乞うのか。
アイリーンのフリをして騙していること?
それとも……ルーノ様を好きになってしまったこと?
ルーノ様が私の手を口もとに持っていき、そっと指先に唇を押し当てる。
「許して、ください」
好きですと言う言葉の代わりに、まるで呪文のように……口をついて出る言葉。
ああ、紫のヒヤシンスは、どうしてそんな花言葉を持ったの?
私のように……許されない恋をしてしまったの?
ルーノ様が尚も、私の指先に唇を押し当てる。
「許してくれ……」
ルーノ様は何に対して許しを請うというのか。
「俺には、君に何も与えることはできない……弟の愚かな罪の責任を取らなければならないのだ」
弟の罪?
「私は……ルーノ様に何かをいただこうとは思っていません。宝石もドレスも……それから将来の約束も」
ああと、ルーノ様が小さく頷いた。
ルーノ様に手を引かれ、生垣でできた迷路を進み、抜けた先には。
「綺麗……」
「だろう?」
一面に広がる花の絨毯。
それも、濃淡の違う紫色の花で模様が描かれている。
紫の花の絨毯が広がっている。
優しい春風に、さわさわと揺れる様子もとても可愛い。
しばらく無言で美しい景色を見ていた。
「アイリーンに見せたかったんだ。この花、ヒヤシンスって言うんだ。本当は、黄色やピンクや白や赤、いろいろな色を咲かせるらしんだけど、あえて紫だけを植えてるんらしい」
ポカーンとした顔で思わずルーノ様を見てしまった。
「詳しいんですね……」
この間は薔薇くらいしか知らないと言っていたのに……。
「あはは。実は事前に教えてもらったんだ。花言葉も知っているぞ?紫の花ことばは『許してください』と『初恋のひたむきさ』だそうだ。なんでも神話がもとになった花言葉だそうだ」
しゃがんで、ヒヤシンスの花をじっくりと眺めた。
濃い紫色は、ルーノ様の瞳の色に似ている。
室内では濃紺に見えたルーノ様の瞳は、太陽の元では動きによっては少し紫っぽく見えることもある。
許してください……。
「庭師には積んでいいと許可をもらっているよ」
私の隣にしゃがむルーノ様。
「花言葉を、もう一度教えて」
横を向けば、ルーノ様の顔がすぐ近くにある。肩と肩が触れ合う。
「許してください」
ルーノ様の口がゆっくりと花言葉を口にする。
ルーノ様の瞳の色に一番近い濃い色のヒヤシンスを1つ摘む。
5つほどの可憐な花のついたヒヤシンスを二人の前に差し出した。
「許してください……それから」
ルーノ様が口にした花言葉を繰り返す。
「初恋の……ひたむきさ」
ルーノ様がもう一つの花言葉を口にした。
ルーノ様の瞳色をしたヒヤシンスを、チーフポケットに刺した。
「初恋のひたむきさ……」
熱に浮かされたように、ルーノ様の言葉を繰り返す。
チーフポケットにヒヤシンスを刺した手をルーノ様が握った。
「許してください……」
ルーノ様から出た言葉に、続けた。
「許してください」
誰に、何を許しを乞うのか。
アイリーンのフリをして騙していること?
それとも……ルーノ様を好きになってしまったこと?
ルーノ様が私の手を口もとに持っていき、そっと指先に唇を押し当てる。
「許して、ください」
好きですと言う言葉の代わりに、まるで呪文のように……口をついて出る言葉。
ああ、紫のヒヤシンスは、どうしてそんな花言葉を持ったの?
私のように……許されない恋をしてしまったの?
ルーノ様が尚も、私の指先に唇を押し当てる。
「許してくれ……」
ルーノ様は何に対して許しを請うというのか。
「俺には、君に何も与えることはできない……弟の愚かな罪の責任を取らなければならないのだ」
弟の罪?
「私は……ルーノ様に何かをいただこうとは思っていません。宝石もドレスも……それから将来の約束も」
ああと、ルーノ様が小さく頷いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,829
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる