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「あの……汚れなら、髪で隠れますし……原因となるものを取り除いていただけば大丈夫ですので」
これ以上迷惑をかけるわけにもいかないと声をかけると、慌てて侍女がドレスを手に取った。
「あ、あの、侯爵夫人に相談してきますので、お待ちください」
「え?大丈夫ですから」
「いえ。これをそのまま見過ごすような薄情な方ではありません」
侍女が急いではいるけれども上品な速足で私の着ていたドレスを持って部屋を出て行った。
ガウンを羽織り、椅子に座って待つようにと、別の侍女はお茶を入れてくれる。
場違いだと馬鹿にした目を向けた貴族たちの顔を思い出す。
子爵令嬢だというのに、丁寧に扱ってくれる侍女たちや、侯爵夫人に感謝しかない。
ルーノ様のおかげなのかもしれない。
そういえば、頼んで招待状を私に出してもらったと言っていたけれど……。ルーノ様の家名を聞いていない。
公爵家の親族だったとしても、侯爵様に頼みごとができるものだろうか?
ルーノ様自身も高位貴族なのでは……?
「お待たせいたしました」
侍女がドレスを手に戻ってきた。
そのドレスに、目が釘付けになってしまう。
「侯爵夫人ジョアン様より、一度袖を通したドレスで申し訳ないけれど、これをと」
「わ、私に?そんな、勿体ない……」
侍女がドレスを広げて見せる。
「普段着ないようなデザインでしょうが、体形が違っても着られるドレスが他になくてごめんなさいねとジョアン様から言葉を預かっております」
気を使ってもらって、嫌だなんて言えるはずもない。
とても良い生地を使った高そうなドレスだ。
袖を通すととても肌触りが良くてびっくりする。
「こちらのドレスはウエストをリボンで締めて体に合わせるタイプなのでウエストが違っても問題ありません」
ふんわりと柔らかく広がるスカートに、パフスリーブ。胸元はあきすぎずにフリルが付いていて、かわいらしいデザインのドレスだ。
形はかわいらしいけれど、色は大人っぽい。
まるで……。
着替え終わり、隣の部屋へと案内される。
ルーノ様が、立ち上がって目を見開いた。
「そのドレスは……」
擦れた声でつぶやかれる。
ルード様の胸に挿したヒヤシンスの花のような色のドレス。
「侯爵夫人のジョアン様が気を使って……貸してくださいました……」
私の言葉を侍女が訂正する。
「いえ、お貸しするのではなく、差し上げると」
えっと驚く。
「似合っている」
その言葉に、部屋にあった鏡に映る姿を見た。私とルード様が並んでいるのが映っている。
「まるで、俺の婚約者のようだ」
ルード様がつぶやいた。
「冗談でも……そんなこと……」
言うべきではないと。
確かに、婚約者の瞳の色のドレスを着ることはある。男性がドレスの色に合わせたハンカチや花をチーフポケットに入れることもある。
これ以上迷惑をかけるわけにもいかないと声をかけると、慌てて侍女がドレスを手に取った。
「あ、あの、侯爵夫人に相談してきますので、お待ちください」
「え?大丈夫ですから」
「いえ。これをそのまま見過ごすような薄情な方ではありません」
侍女が急いではいるけれども上品な速足で私の着ていたドレスを持って部屋を出て行った。
ガウンを羽織り、椅子に座って待つようにと、別の侍女はお茶を入れてくれる。
場違いだと馬鹿にした目を向けた貴族たちの顔を思い出す。
子爵令嬢だというのに、丁寧に扱ってくれる侍女たちや、侯爵夫人に感謝しかない。
ルーノ様のおかげなのかもしれない。
そういえば、頼んで招待状を私に出してもらったと言っていたけれど……。ルーノ様の家名を聞いていない。
公爵家の親族だったとしても、侯爵様に頼みごとができるものだろうか?
ルーノ様自身も高位貴族なのでは……?
「お待たせいたしました」
侍女がドレスを手に戻ってきた。
そのドレスに、目が釘付けになってしまう。
「侯爵夫人ジョアン様より、一度袖を通したドレスで申し訳ないけれど、これをと」
「わ、私に?そんな、勿体ない……」
侍女がドレスを広げて見せる。
「普段着ないようなデザインでしょうが、体形が違っても着られるドレスが他になくてごめんなさいねとジョアン様から言葉を預かっております」
気を使ってもらって、嫌だなんて言えるはずもない。
とても良い生地を使った高そうなドレスだ。
袖を通すととても肌触りが良くてびっくりする。
「こちらのドレスはウエストをリボンで締めて体に合わせるタイプなのでウエストが違っても問題ありません」
ふんわりと柔らかく広がるスカートに、パフスリーブ。胸元はあきすぎずにフリルが付いていて、かわいらしいデザインのドレスだ。
形はかわいらしいけれど、色は大人っぽい。
まるで……。
着替え終わり、隣の部屋へと案内される。
ルーノ様が、立ち上がって目を見開いた。
「そのドレスは……」
擦れた声でつぶやかれる。
ルード様の胸に挿したヒヤシンスの花のような色のドレス。
「侯爵夫人のジョアン様が気を使って……貸してくださいました……」
私の言葉を侍女が訂正する。
「いえ、お貸しするのではなく、差し上げると」
えっと驚く。
「似合っている」
その言葉に、部屋にあった鏡に映る姿を見た。私とルード様が並んでいるのが映っている。
「まるで、俺の婚約者のようだ」
ルード様がつぶやいた。
「冗談でも……そんなこと……」
言うべきではないと。
確かに、婚約者の瞳の色のドレスを着ることはある。男性がドレスの色に合わせたハンカチや花をチーフポケットに入れることもある。
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