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「う、嘘よ!ちょっとよろけて紅茶がかかったのを大げさに言っているだけよ」
「そうよ。庶民の娘にマナーを教えていただけだわ」
「だいたい、ヴァイオレッタとアイリーンの姉妹は仲が悪いっていう話でしょ?私たちを陥れるために嘘を言ってるんだわ!」
「そうよ!私たちがやったって証拠なんてどこにもないでしょ!」
 ヴァイオレッタとアイリーンの仲が悪いという噂は皆も知っていたようで、突然妹のための行動を起こす不自然さを感じたみたいだ。集まった人たちが、令嬢たちの言葉に納得し始めた頃に私の味方の声が上がった。
「証拠が必要なら私が証人となりましょう」
「ジョアン様!」
 人込みの間からジョアン様が現れた。
「先日の私のお茶会で、アイリーンはドレスを血で汚しておりましたわ。背中です。自分でわざと怪我をすることができないような場所でしょう。部屋を貸して、侍女に着替えさせましたわ。必要でしたら侍女にも証言させましょうか?」
 その言葉に令嬢たちが口を閉じた。
 背中の傷は針のせいで、犯人は彼女たちではないと分かっているのに、ジョアン様はいったい何を言い出すのだろう……。
「先ほどハルーシュ様がおっしゃっていたように、下位貴族だとか上位貴族だとか関係なく、貴族を傷つけることは重罪です。犯人を捜す必要があるでしょう。その際一人ずつ聞き取り調査をする必要が出てきますが……やってないと主張している方が、他の人の証言でやっていたということが発覚すれば偽証罪に問われますけれど」
 ジョアン様がぐるりと会場にいる人たちを見回した。
「わ、私は本当にやっていないっ。お茶をかけたことはあるけれど……そ、それだけ、本当にそれだけよ!」
「私だって同じように悪口を言わなければ、今度は私が標的になってしまうから仕方なく」
「か、彼女たちがアイリーンの肩を押したりして傷つけようとしているのを見たわ!」
「そうだ、あいつは腕をつかんで引っ張りまわしてたぞ」
「それを言うなら、お前だって婚約者を突き飛ばしてたじゃないか!」
 激しく罵り合う人たちが後を絶たない。
 壁際で事の成り行きを傍観している人たちは、加担したことも被害に遭ったこともなかった人たちなのか。それとも、今ここで何が起きているのか理解できていないのか。
「ええい、黙れ!見苦しいぞ!」
 ひときわ大きな声が聞こえた。
 皆が声の方へと目を向けると、一斉に頭を下げる。



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ふふふ、今度はジョアン様が助けに来た!
おーい、ルーノさんや……君は何をしておるのかね……。
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