残りの時間は花火のように美しく

雨宮 瑞樹

文字の大きさ
19 / 34

揺れる心

しおりを挟む
 美羽はの体調はなかなか復調せず、しばらく布団の上で寝たり目覚めたりを繰り返してようやく普通に過ごせるようになったのはあれから十日も経ってからのことだった。スマホに怜から何度か連絡も来た。『体調はどうだ?』というシンプルな内容のものだったが、それに対して『全然平気。念のため休んでいるだけ』と何度か返して終わっている。

 久々に美羽がリビングで大学へ出かける準備を進めていると「もう少し学校休んだら?」という母の声が飛んでくる。
 その顔の中央に皺が寄っていた。そんな顔はさせたくないけれど、どうしてもさせてしまう自分がどうしようもなく憎たらしい。
 それを見て思い返す。この病気を発症したのは、中学生の時。その頃の母は実年齢よりもずっと若く見えて、娘の目線からでも、かわいらしく、少女のようで、自慢だった。だけど、自分が体調を崩す度に目立つことのなかった母の皺は深くなっていき、若く見えていたはずの母は、どんどん実年齢の顔になっていき、無数の皺があちこちに刻まれてしまっていった。ゆっくり動いていたはずの母の時間が、早送りされたようだった。
 そうさせてしまったのは、自分のせいだ。そう思うのは何度目だろう。
 どんどん後ろ向きになっていく思考を美羽は首を振って止めて、代わりに口を動かしていた。

「今日一時間だけだからさ。このまま休み続けたら単位落としちゃうよ。今日は必修科目だし代返できないの」
 休んでいる間は、美羽は文乃に代返やノートを頼んでおいた。
 『そんなのお安い御用』と、気持ちのいい返事にありがたいと思う。でも、いつまでも頼りきりはやっぱりよくないと思うし、自分自身も嫌だった。

「大隈くんは?」
 なぜ、急にその名が出てくるのか美羽は一瞬分からなかった。
 だけど、倒れた時に運んでくれたのは誰でもない怜で。母と一緒に私をここに運んでくれたのだ。ならば、大隈という名前が出てきても不思議ではないと思いなおす。それに、今日はゼミはない。となれば、四年生の授業と被ることはほとんどないだろう。たとえ重なっていたとしても、見つからないように気配を消すつもりだ。もしも、 言葉を交わしたら、最後。懸命に呪文を唱え、眠りから覚めさせないようにしていた封印が解けてしまう。そんなことは、絶対にあってはならないのだから。傷つけるのは、父と母だけで十分だ。
 
 ふと窓を見るとシトシト雨が降っていた。窓の隙間から入り込む梅雨のようなじめじめした空気が重たい。そこに、やけに軽い声が響いた。
「今日は授業一緒じゃないの?」
 母の執拗な詮索。美羽の心に大きな水溜まりが出来上がり始める。
 母の目を凝視しようとすると、母は心を読み取られまいとしたのか素早く目を逸らし後ろを向いてしまった。

「どうして、そんなこと聞くの?」
 刺ついた声で、母の背中を狙いこちらを向かせようとしたが母は頑なに後ろを向いたままだった。
 母はただでさえ嘘が下手だ。そこに自分の力が加われば、自分の心を見ているのではと思えるほど、何もかも明け透けに理解できてしまう。
 だから、母は絶対に心を読み取られたくないときは、サングラスまでかけることがある。今日はそれは出てこないようだったが、それに相当するほどの慌てようだ。
「彼がいてくれたら美羽が具合悪くなっても、安心だなぁって思って。うちの場所も知ってるし……」
 軽くそういう母だが、こういうときが尚更後ろめたい隠し事をしていることを美羽は知っている。
 母の正面に回り込もうとしたが「美羽! 見て、時間よ! 遅刻、遅刻!」叫び、美羽の黒いバッグを持って、背中に回り込んでいた。美羽の背中を玄関の方にぐいぐい押して、スニーカーと鞄を胸に押し付けると「じゃ、いってらっしゃーい」と明るい声だけ響かせて、玄関の外に追いやられていた。
 パタリとしまった玄関のドアに、ガチャリと容赦のない鍵のかかる音。

「休めって言ったり、行けって言ったり……どっちなのよ」
 ぶつぶつ言いながら美羽は、学校へと向かった。

――――――――
「美羽!」
 教室に入ると、文乃の溌剌とした声が響いた。その名前を聞いて、会話に興じていた学生たちが一瞬息を止めて美羽に視線が集まる。
 雨に濡れたピンク色の傘が床に少しだけ水たまりを作り、濡れた手が少し冷えていた。痛いくらいの視線たちに驚きながら合間を潜り抜けるように美羽は文乃の元へと急ぎ足で向かい、あらかじめ確保してくれていた隣の席に座った。
 座るとほぼ同時に、視線が散り、どこか張り詰めたような空気が和らいだ。ホッ吐息をつきながら、美羽は横にいる文乃にここ数日間の礼を述べた。

「文乃。ごめんね。色々頼んじゃって。とっても助かったわ」
「ううん。そんなこと全然いいんだけど、それより大丈夫なの?」
 明るい顔に被さる雲を吹き飛ばすように、美羽はふふっと笑った。
「うん。ほら、この通り」
 多少の怠さはあった。今朝起きて鏡を見た時の自分の顔は血色がいいとは言えなかった。
 だけど、それに気づかれないために今日は念入りに化粧をしてきた。チークも多めにのせたし、淡いピンクの口紅も塗った。大学に入って身に着けた技術は、そっとやちょっとじゃ破られない自信がある。気づかれることはない満を持しての今日だ。
 空元気だと気づかれないことのないように明るさを何倍も上乗せ手言い放つと、文乃はそのまま受け取ってくれたようだった。

「もう、本当に心配したんだから。一週間以上休むなんてただ事じゃないと思ってさ。三年男子達は大騒ぎよ。私何度も聞かれたもの。美羽ちゃんどうしたの?って。でも、体調がよくないとしか聞かされてないから困っちゃった。
 だからね、私、大隈先輩に聞いたの」

 大隈という名が耳の奥に響いて、美羽の心臓が跳ねて、唾をごくりと飲み込む。
 自分でもどうしてこんな大袈裟に体が反応するのかわからない。だけど、条件反射のようになってしまっている自分の体をどうすることもできず、膝にのせてあったバッグに目を落とした。
 すると、そこには入れた覚えのない母の好きな和菓子屋の紙袋が入っているのを見つけた。考える間もなく、母が怜から借りていたジャケットを忍ばせたんだと理解する。「余計なことを……」と心中で悪態をつくと、母のいたずらっぽい顔がハッキリと浮かんでいた。
 密かにその顔を睨み付けているのに気付くことなく文乃は続ける。

「そしたら『大丈夫だろ』の一言。相変わらずの無口で不愛想なんだけど、いつも以上にピリピリしてるような雰囲気を醸し出してさ。私って割とそういう雰囲気も気にせずにズカズカいかれるタイプなのに、さすがにそれ以上聞けなかったわ」
「……そう」と美羽はバッグの中にちらりと除く紙袋に視線を落としチクリと胸に棘が刺さるのを感じながら、ぼんやりと答えた。
「ねぇ、喧嘩とかしたの?」
「……心配かけちゃったんだと思う」

 その問いにどうこたえるべきか、美羽は悩んでいると歯切れの悪い声が出ていた。
 そんな美羽の答えにうんうんと頷きながら、文乃はスマホをいじっていた。
 そんな様子の文乃にこれじゃごまかすどころか、不信感を抱かせる結果になると美羽はふと思った。せっかく信頼できる友人を見つけたのに、その元から崩れてしまう。
 すべてを隠しきれるわけじゃないとたかをくくって、美羽は怜については真実を打ち明けるべきだと判断し、あの日の記憶を少しだけ手繰り寄せて背筋を伸ばして文乃の方へ体を向けると、文乃はいじっていたスマホを机に置いて美羽に視線を移した。

「私、貧血持ちなのね。それで、彼の前で具合悪くなっちゃって」
 そういうと、また文乃のスマホが震えていた。ほんの少しだけ操作するとスマホを鞄に放り込んで、訝し気な目をよこしてきた。
「でも、ただの貧血でしょ? それで、あんな雰囲気醸し出すかな? これ以上ズカズカテリトリーに入ったら感電死するんじゃないかっていうくらい凄かったんだから」
「ほら、女の子の間では当たり前なのかもしれないけど、男の人ってそういうの少ないじゃない? だから、結構衝撃的だったんじゃないかな? それに、結構私心配されちゃって、それが嫌で何度か帰ってって言っちゃったりしたもんだから……それで……かな?」
「そんなに酷かったの?」
「よく学校の朝礼体育館でやると貧血起こす子いなかった?」
「いたいた、そういう子」と納得した文乃は大きく頷いていた。
「あんな感じ。私って、血の気が少ないみたい」

 そう付け足せば、文乃はさらに大きく首を縦に振っていた。
 これがお手本のようなごくありふれた普通の反応だと思う。道を歩いていたら、道端に時々転がっている帽子や手袋くらい出くわして少しだけ珍しいなと思うくらい。ありふれたものだ。
 なのに、怜はそうじゃないと文乃は言う。
 なぜだろう?
 確かにあの日は、ここ最近ないくらい酷かった。あそこまで酷くなるとは、自分でも驚くほどに。自分自身でもそう感じるのだから、怜はそれ以上の衝撃だったのかもしれないとは思う。だけど。どこか腑に落ちない。
 倒れ込んだ後の記憶は、全部曖昧だ。背中を優しく撫でてくれる感触と背中にかけてくれた怜のジャケットの温かさだけは、鮮明に肌に焼き付いている。でも、映像はすべてぼんやりしていて、どんな顔をしていたのかもよくわからない。あんなに介抱してくれたのに、ずいぶん冷たいものだと美羽は思う。

「確かにね。性格もそうだけど、肌の色も陶器みたいに真っ白だもんね。でも、か弱い少女みたいで、いいよね。そういうの私は憧れるよ。ほら私って骨太でしょ? その分肉もついてるけどさ。健康優良児ってあだ名までついちゃうくらいよ」

 あははと、文乃はよく通る声で笑った。外は雨でじめじめしてて、気持ちが悪いのに文乃の笑い声はカラッと乾ききっていた。
 そういわれても、ちっとも気分が悪くならない。それどころか、つられてこちらまで口元が緩んでしまう。そんな文乃が単純に羨ましくもあり、好きだった。

「健康が一番だよ」
 どうしても、その一言を付け加えてしまう自分がやけに湿っぽくて、陰気だなと美羽は思う。
 少しでもいいから、文乃の明るさを分けたらいいなと思う。そうしたら、文乃が言っていた感電死するほど殺気立った雰囲気を怜に背負わせることはなかったのかもしれない。
美羽は肺の奥から、重たい空気を吐き出したところに文乃の声が被る。
「今日、大隈先輩来てるよ」
 破壊力抜群の言葉を平然と放ってくる文乃に、美羽は一瞬息を吸うのを忘れて危うく酸欠になりそうになる。美羽は慌てて息を吸い込んだ。
 文乃は「みて」と自慢げに、メモの切れ端を美羽に見せつけてくる。美羽の視界に入ってきたのは、曜日と数字だけ書かれた素っ気ない走り書き。急いで書かれたような文字なのに、やけに整った筆跡。文乃は「何だと思う?」と聞いてくる。
 月 ①ー④ 火 ②ー➂ ……というように金曜まで書かれていた。
「時間割?」
 今日は月曜日。月曜の美羽の授業は四限だけだ。が、文乃は以前学食で一緒に昼食をとっていた時に、週始めの一限は最悪だと愚痴をこぼしていたのを思い出す。

「あったり!」
「文乃って字奇麗なんだね」
 感心している美羽に、ニヒヒと不気味に笑う。美羽は首を傾げ、文乃の顔を見ると得意げな顔が広がっていた。
「時間割は時間割でも、私のじゃなくて、大隈先輩のでした。大隈ファンにとっては、彼の行動が知れる喉から手が出るほど欲しがる貴重なブツよ。しかも直筆だからね!」
「え?」
 美羽の驚いた顔を見た文乃は、また二ヒヒと笑っていう。
「実は、美羽が来たら教えてくれって大隈先輩直々に託があってね。
『これ、俺の時間割。もし俺のいる時間に美羽が来ていたら教えてくれ』って渡されたの」
 愛されてるねぇと言って、肘でぐりぐり美羽の脇腹をつついていた。

「でも、やっぱり、不思議だったのよ。わざわざ、何で私に頼んでくるのかなぁって。そんなの直接美羽に言えばいいじゃない?」
「それで……連絡したの?」
 美羽の堅い声と表情のない張り付いた顔に、驚いた文乃は「え? まずかった? さっき喧嘩してないって聞いたから連絡しちゃったよ」という。
 美羽は「喧嘩はしてない」と首を静かに横に振ったところで、いつの間にか教壇に立っていたのか。しゃがれた教授の声が響き、授業が始まった。
 しゃがれた声は美羽のバックに収まっている紙袋を主張させているかのようで、落ち着かなかった。
 ジャケットを借りたお礼くらいちゃんと向き合って、言った方がいいことくらいわかっている。
 あんなに迷惑をかけたんだから。だけど、やっぱり。会うのが怖かった。気づいてしまった心はどうやったって、元に戻すことはできない。心は元に戻せなくとも、せめて現実は少しだけでも巻き戻すことはできないのだろうか。
 
 美羽は答えを見つけられないまま、授業は終わりを告げていた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

元カレは隣の席のエース

naomikoryo
ライト文芸
【♪♪♪本編、完結しました♪♪♪】 東京で燃え尽きたアラサー女子が、地元の市役所に転職。 新しい人生のはずが、配属先の隣の席にいたのは―― 十四年前、嘘をついて別れた“元カレ”だった。 冷たい態度、不器用な優しさ、すれ違う視線と未練の影。 過去を乗り越えられるのか、それとも……? 恋と再生の物語が、静かに、熱く、再び動き出す。 過去の痛みを抱えた二人が、地方の公務員として出会い直し、 心の距離を少しずつ埋めていく大人の再会ラブストーリー。

処理中です...