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異国編:ジッピン前編:出会い
【243話】到着
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「わぁ…!」
ポントワーブを発って17日目、アーサーとモニカ、ヴァジーとカユボティはジッピンの土を踏んだ。生まれ育った国(バンスティン国)とは全く違う景色を双子は夢中になって見回している。
バンスティンではレンガ造りの家がほとんどだが、ジッピンでは木造の家が建ち並んでいた。屋根もドアも見たことがない形をしている。
行きかう人々はみな黒髪か白髪で、髪型も顔立ちもよく似ていて見分けがつかない。だが彼らが見に付けている服には、花や幾何学模様など、さまざまな美しい模様が織られていた。服も、コットとスカート/ズボンというスタイルのバンスティンとは全く形が違い、足が隠れるほど長い裾の服を胸下もしくは腰で帯を巻いて着ていたり、その服に丈の長いスカートのようなものを合わせていた。ときたまその服の上に、バンスティンでも見かけるような上着を羽織っている人も見られた。
「ヴァジー、ジッピンの人たちが着てる服きれいだね!」
「ああ。美しいね。キモノと呼ばれる服だよ」
「キモノ…!」
「あのスカートはハカマ…だったかな?」
「かっこいい…!!」
「かわいい…!!」
キラキラした目でジッピンの人たちを見ている双子に、カユボティは微笑みながら「気に入ったのなら着たらいいよ。服屋で売っているから」と言った。
「ほんとに?!」
「着てみたい!!」
「分かった。でもまずは、用事を済ませてからね」
ヴァジーはそう言ってから目的の場所まで歩き出した。カユボティと「ああ、ジッピンの景色は美しいな」「画材は持ってきたか?」「もちろん。はやく仕事を終わらせて描きたいな」などとお喋りしている。
アーサーとモニカは彼らのうしろをひょこひょこついていく。すれ違う人たちが、外国人のアーサーたちをちらちらと見て何か話していた。だがジッピンの言葉が分からない双子には、彼らがなんと言っているのか皆目分からない。
「ねえカユボティ。ジッピンの人たちなんて言ってるの?」
「さあ。私はジッピンの言葉は分からないんだ。ヴァジーなら分かるかな?」
「ああ分かるよ。なんてかわいらしい子どもなんだろうと言っている」
「えっほんとに?」
「ああ。ここには銀髪に灰色の瞳の人なんていないからね。目鼻立ちもはっきりしているし、彼らにとってはかわいらしく映って仕方ないだろうね」
「な、なんだか照れるなあ…」
「試しにヒソヒソ話している人に微笑んで手を振ってみて」
「こう?」
アーサーとモニカは、ヴァジーに言われた通りジッピンの女性2人に手を振ってみた。すると彼女たちは「キャーーー」と高い声をあげて顔を赤らめながら手を振り返した。叫び声はどの国でも同じなんだなあと双子はぼんやり思った。
半時間ほど歩いたところに大きな屋敷があった。そこでカユボティとヴァジーが足を止める。開けっ放しの門から中へ入ると、小石が敷き詰められた広い庭が広がっていた。バンスティンではあまり見かけない木がいくつか植わっていて、小さな池にはかわいらしい赤い魚が泳いでいた。
「〇×◇!□●××?」
庭を箒で掃いていた青年が彼らに気が付き声をかけてきた。画家たちと顔見知りなのか、満面の笑みで手を振っている。ヴァジーも彼を見て顔を輝かせ、「おお!ノリスケ!」と名前を呼んでハグをした。ハグに慣れていないのか、ノリスケと呼ばれた青年はぎこちなくヴァジーの背中をポンポンと叩く。
「△□■◎?」
「※▼◇×!!」
「◎●□×!!」
わはは!と二人が笑っているのをカユボティはニコニコと眺めている。ノリスケはすぐカユボティにも駆け寄り、カタコトの言葉で挨拶をした。
「イラシャイマッセ。カユボテサン。マチシテオリマシタ」
「久しぶりだね、ノリスケ。元気にしていたかい?」
「?」
「●▼※ □△×◎?」
「×□!◎●△※~」
「元気だったと言っているよ」
「そうか。それはよかった」
それからも、ヴァジーが通訳をして二人がしばらく話をしていた。挨拶が終わったのでヴァジーが双子を紹介した。ノリスケはアーサーとモニカを見て「●◎※□~!!」と言いながら小さく飛び跳ねた。
「?」
「かわいい~と言っているよ」
「えへへ、ありがとう!」
「ハジメマシッテ。ワタシ ノリスケ。ジッピン イイトコ タノシメクダサイ」
「ありがとうノリスケさん!」
「はい!たのしみます!!」
「●◎※□~!!」
ポントワーブを発って17日目、アーサーとモニカ、ヴァジーとカユボティはジッピンの土を踏んだ。生まれ育った国(バンスティン国)とは全く違う景色を双子は夢中になって見回している。
バンスティンではレンガ造りの家がほとんどだが、ジッピンでは木造の家が建ち並んでいた。屋根もドアも見たことがない形をしている。
行きかう人々はみな黒髪か白髪で、髪型も顔立ちもよく似ていて見分けがつかない。だが彼らが見に付けている服には、花や幾何学模様など、さまざまな美しい模様が織られていた。服も、コットとスカート/ズボンというスタイルのバンスティンとは全く形が違い、足が隠れるほど長い裾の服を胸下もしくは腰で帯を巻いて着ていたり、その服に丈の長いスカートのようなものを合わせていた。ときたまその服の上に、バンスティンでも見かけるような上着を羽織っている人も見られた。
「ヴァジー、ジッピンの人たちが着てる服きれいだね!」
「ああ。美しいね。キモノと呼ばれる服だよ」
「キモノ…!」
「あのスカートはハカマ…だったかな?」
「かっこいい…!!」
「かわいい…!!」
キラキラした目でジッピンの人たちを見ている双子に、カユボティは微笑みながら「気に入ったのなら着たらいいよ。服屋で売っているから」と言った。
「ほんとに?!」
「着てみたい!!」
「分かった。でもまずは、用事を済ませてからね」
ヴァジーはそう言ってから目的の場所まで歩き出した。カユボティと「ああ、ジッピンの景色は美しいな」「画材は持ってきたか?」「もちろん。はやく仕事を終わらせて描きたいな」などとお喋りしている。
アーサーとモニカは彼らのうしろをひょこひょこついていく。すれ違う人たちが、外国人のアーサーたちをちらちらと見て何か話していた。だがジッピンの言葉が分からない双子には、彼らがなんと言っているのか皆目分からない。
「ねえカユボティ。ジッピンの人たちなんて言ってるの?」
「さあ。私はジッピンの言葉は分からないんだ。ヴァジーなら分かるかな?」
「ああ分かるよ。なんてかわいらしい子どもなんだろうと言っている」
「えっほんとに?」
「ああ。ここには銀髪に灰色の瞳の人なんていないからね。目鼻立ちもはっきりしているし、彼らにとってはかわいらしく映って仕方ないだろうね」
「な、なんだか照れるなあ…」
「試しにヒソヒソ話している人に微笑んで手を振ってみて」
「こう?」
アーサーとモニカは、ヴァジーに言われた通りジッピンの女性2人に手を振ってみた。すると彼女たちは「キャーーー」と高い声をあげて顔を赤らめながら手を振り返した。叫び声はどの国でも同じなんだなあと双子はぼんやり思った。
半時間ほど歩いたところに大きな屋敷があった。そこでカユボティとヴァジーが足を止める。開けっ放しの門から中へ入ると、小石が敷き詰められた広い庭が広がっていた。バンスティンではあまり見かけない木がいくつか植わっていて、小さな池にはかわいらしい赤い魚が泳いでいた。
「〇×◇!□●××?」
庭を箒で掃いていた青年が彼らに気が付き声をかけてきた。画家たちと顔見知りなのか、満面の笑みで手を振っている。ヴァジーも彼を見て顔を輝かせ、「おお!ノリスケ!」と名前を呼んでハグをした。ハグに慣れていないのか、ノリスケと呼ばれた青年はぎこちなくヴァジーの背中をポンポンと叩く。
「△□■◎?」
「※▼◇×!!」
「◎●□×!!」
わはは!と二人が笑っているのをカユボティはニコニコと眺めている。ノリスケはすぐカユボティにも駆け寄り、カタコトの言葉で挨拶をした。
「イラシャイマッセ。カユボテサン。マチシテオリマシタ」
「久しぶりだね、ノリスケ。元気にしていたかい?」
「?」
「●▼※ □△×◎?」
「×□!◎●△※~」
「元気だったと言っているよ」
「そうか。それはよかった」
それからも、ヴァジーが通訳をして二人がしばらく話をしていた。挨拶が終わったのでヴァジーが双子を紹介した。ノリスケはアーサーとモニカを見て「●◎※□~!!」と言いながら小さく飛び跳ねた。
「?」
「かわいい~と言っているよ」
「えへへ、ありがとう!」
「ハジメマシッテ。ワタシ ノリスケ。ジッピン イイトコ タノシメクダサイ」
「ありがとうノリスケさん!」
「はい!たのしみます!!」
「●◎※□~!!」
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