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6 王城にて再会

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「スタン兄様」

 王城の側妃様の宮殿に着いた私の目に、第二王子スタンリー殿下が見えました。

 淑女としてはしたないのですが、駆け寄って抱きついてしまいました。
 だって嬉しさが溢れ出してしまったのですもの。お許しになって。

「マリナ、見ない内に綺麗になったな」
「六年振りですもの。スタン兄様は相変わらず素敵です」

 私は至近距離からスタン兄様を見あげます。至福のひとときですわ。

 隣国との婚約話が持ち上がり、スタン兄様は隣国へと遊学されました。
 お相手の王女様が当時10歳とまだ幼く、国同士の情勢も安定していない事を理由に、成人間近なスタン兄様が隣国へと行かれたのです。
 結婚後は我が国でのお暮らしになる予定でしたのに、王女様はご不満だったようです。

 当時私も母を亡くしたばかりでしたから、寂しくて仕方がありませんでした。
 大切な人が私の周りからいなくなっていくのですもの。

 スタン兄様に泣きついて「行かないで」と我儘を言ったものですわ。
 スタン兄様はずっと困った顔をされていました。
 王命ですものね。私は貴族として、とても恥ずかしい事をしてしまったものです。


 私の12歳は、大切なものが消えて要らないものが増えていく、そんな時期でした。
 お父様はお母様が亡くなり、すぐに継母様とサリーニアを屋敷に呼び寄せました。
 ロンドリオ殿下は訳のわからない振る舞いをなさいます。
 何とも切なく辛い時が始まりました。

 それからは気が休まることがありません。
 ロンドリオ殿下は本当に何かとお騒がせな方でした。
 騎士団の方と揉め事をおこした、侍従を怪我させた。王城から抜け出して、城下で揉めた等々枚挙にいとまがありませんでしたから。

 サリーニアも異母妹だからといって、私宛に来たお茶会を勝手に参加して騒ぎを起こします。
 一応幼い頃より淑女教育は受けているはずなのです。今でも教育から逃げ出しているのでしょうね。
 全く淑女として出来ておりませんもの。

 大変だった日々も先日の婚約破棄で一挙に片付きました。
 本当に肩の荷が降りましたわ。


「このようなところで、はしたないですよ。二人とも」
「叔母様」
「母上、久しぶりなのですから見逃して下さい」

 私とスタン兄様は手を取り合ったままでしたからね。

「困った二人だこと。マリナリア、わたくし先程陛下より話を聞きました。昨夜遅くロンドリオ殿下がお戻りになったとかで、今朝お話されたのですって」

 今朝陛下にお話されたのですか?
 流石のロンドリオ殿下、嫌な事は後回しにされる方です。

「それで、スタンリーとマリナリアの婚約の話が持ち上がったのだけど……」

 叔母様は笑いながら「この様子だと進めていいわよね」とおっしゃいました。

「お願いします、叔母様」
「是非とも進めて下さい、母上」

 私とスタン兄様は顔を見合わせ笑い合いました。



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