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1巻

1-1

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   私と彼女と彼 ~氷のような貴女にさよならを~


【-3】


『好き』っていう感情にも種類があるんだってことを、昔の私は知らなかったんだ。


 校門を抜けていく生徒達が、ジロジロと私のことを眺めていく。他校の制服を着た人間が校門脇に所在なさげに立ってたら、確かに怪しく思うよね。分かるんだけど……うぅ、恥ずかしい……
 でも、私は恥ずかしさに耐えて、必死に顔を上げていた。校門から出ていく生徒を、一人だって見落とさないように。
 ――私にはもう、時間がない。なりふり構ってなんかいられない。
 この学校の出入口はここだけ。ここで待っていれば沙那さなは……私の幼馴染おさななじみは、必ずここを通るはず。
 そうやって気合を入れ直して、私はもう一度ぐに顔を上げる。
 その瞬間、だった。
 一人の生徒が私の目の前を横切っていく。
 どうやってお手入れしたらあんなに深くて綺麗な色になるんだろうって、いつもうらやんでいた黒髪。いかにも気が強そうな顔は、昔と全然変わることなく前だけを向いている。公立高校トップの進学率を誇る学校の制服をおくれすることなくりんと着こなした姿は、やっぱりカッコ良かった。

「あ……っ」

 かすれた声が漏れる。だけどそんなか細い声じゃ彼女を呼び止めることなんてできない。
 私はキュッと唇を噛みしめると、今度はお腹の底から声を張った。

「沙那っ‼」

 周囲がビクッと肩を揺らして私を振り返る。そんなだいおんじょう。だけど彼女だけが私を振り返らない。
 ただ、歩く足が、止まった。

「沙那、わ、私……」

 だから私は、彼女を逃がさないように……今度こそ置いていかれないように、必死に続く言葉を口にしようとする。
 だけど強い彼女は、その程度ではその場にとどまることさえしてくれなかった。

「あ……っ」

 彼女の足が再び動き出す。よどみない動きはまるで私の声なんて聞こえていないみたいだった。
 反射的に一歩、私の足が前に出る。最初の一歩が出てしまったら、二歩目を止めることなんてできなくて、気付いた時には私は彼女に向かって駆けだしていた。

「沙那っ‼」

 もう一度彼女の名前を叫びながら、今度は彼女の腕を掴む。さすがの彼女もそこまでしたら足を止めた。そのことに私は思わずホッと息をつく。

「沙那、私」
「……どのツラ下げて私の前に現れたのよ」

 だけどそんな安堵は次の瞬間粉々に打ち砕かれた。
 バシッと腕に痛みが走る。何かを考えるよりも早く体をすくませると、彼女の腕を掴んでいた手が外されていた。何が起きたのか分からなくて顔を上げると、キツい顔つきをさらにキツくして彼女が私のことを見ていた。
 りんとした顔で。りんとした声で。中学時代に『氷みたい』とされていた言葉通りの冷たさで、彼女は言葉を吐き捨てる。

「二度と私の前に現れないで」

 その言葉に私は、凍りついたように口を開けなくなった。


【-13】

 私と沙那は、元々マンションの部屋が隣で、幼馴染おさななじみだった。小学校に上がる年に私の家族が沙那の家の隣に引っ越してきてからの付き合いで、それからずっと、次の転勤で私達家族が引っ越すことになる中学卒業の春まで一緒に過ごした。
 沙那は美人で、頭も良くて、カッコイイ人だった。性格と目つきがキツくて誤解されがちだったけど、本当は面倒見が良くて、根はとても優しい子だった。
 そんな性格だったから、沙那は私を放っておけなかったんだろう。私は沙那が飛び抜けてる分を埋めるかのように、ドジで、見た目もイマイチで、どんくさかったから。引っ越してきた時に沙那が隣に住んでいてくれなかったら、私は多分学校に馴染むのにすごく苦労したと思う。周囲に知り合いが全くいない状態で小学校に入った私が上手くやっていけたのは、何くれとなく面倒を見てくれた沙那のお陰なんだから。
 私は沙那が大好きだった。沙那が中学で一緒にブラスバンド部に入ってくれた時、本当に嬉しかった。ずっとこうやって、たとえ引っ越して家が隣じゃなくなっても、大人になっても一緒にいれるって思っていた。
 少なくとも、私の方は。

「……っ‼」

 知らない間に寝落ちていたみたいだった。けたたましい音にハッと顔を上げると、見慣れた自分の部屋が目の前に広がっている。

「……私」

 ……そうだ、私、昨日沙那に会いに行って。話……聴いてもらえなくて。そのまま、帰ってきちゃって。
 そこまで思い出した私はハッと我に返ると慌てて自分が突っ伏していたローテーブルの上を探す。見つからないと思ったら、スマホは床に落ちていた。さっきの音は多分、うつらうつらしていた私の肘が滑ってスマホに当たって、そのせいでスマホがテーブルから落ちた音だったんだろう。
 私はスマホを拾い上げるとワタワタとメッセージアプリを開いた。目的の画面を開くけど、その画面は昨日私がメッセージを送った時から変化はない。返事はおろか、既読マークすらついていなかった。

「……沙那」

 私は思わず沙那の名前を呼んでいた。その声にジワリと涙がにじんでいるのが分かる。

「お願い……返事して……っ」

 でもそれが、すごくワガママで今更なことだってことも、分かっていた。
 だって私は二年前、沙那の彼氏に恋をしてしまったんだから。……ううん、『恋をしていた』って分かったのは、それよりもっと後のこと。当時の私は、自分がそんな感情を抱いているんだってことさえ分かっていないバカだった。
 たか君。同じブラスバンド部で、沙那と同じパートを担当していた。
 高部君は、カッコイイ男の子だった。イケメンってのもあったけど、さりげなく荷物運びを手伝ってくれたり、つらい思いをしている人を気遣うことができたり。大人って感じで、ブラスバンド部の女子はみんな高部君のことが気になっていたんだと思う。
 沙那も、そんな女子の一人だった。最初はいつもみたいにツンケンと『あんないけ好かないヤツ』って言ってたけど、同じパートってことで一緒に練習をするようになって、二年生ではクラスが一緒になってさらに接点が増えて。気付いた時には、恋に落ちていたんだと思う。二年生の秋口に『高部のことが、好き……なのかも』って私に打ち明けてくれた沙那は、顔を真っ赤にしていて、『恋する女の子』そのものだった。
 そんな沙那が可愛くて。そんな沙那を見るのは初めてで。
 私はなんだかそんな沙那を見られたのが嬉しくて、私だけに相談してくれたことも嬉しくて。『協力してくれる?』なんて珍しくしおらしく言ってきた沙那に『当たり前じゃんっ‼』って即答したんだ。
 本心だった。その時点では間違いなく、百パーセントのホント。
 私は沙那が高部君と素直に話せるように色々アドバイスをした。それでも沙那はやっぱりツンケンしていたから、私がちょっとだけお節介を焼いて、『ほんとは沙那、こう言いたかったんだよ』とか『あれは照れ隠しなんだよ』とか、沙那をフォローするようになった。
 自分から高部君に話しかけに行くのは、人見知りな私には大変なことだったけれど……。これも沙那のためだって思ったら、自然と頑張れたんだ。そんななりゆきで私は、高部君ともちょっとだけ、話せるようになった。
 沙那はよく私を『服のセンスがいい』って褒めてくれたから、それが嬉しくて、服の相談とかにも乗っていた。それの延長で、制服を可愛く着こなすコツとか、アレンジとかも。お姉ちゃんから教えてもらったメイクやネイルを沙那にも教えてあげたり……、と言っても、メイクもネイルも校則違反だったから、一番役に立ったのはスキンケアとか爪のお手入れ方法だったのかもしれないけれど。あ、髪のお手入れだけは、昔から私が教わってばかりだったな。
 とにかく、沙那は、恋に必死だった。私はそんな沙那を少しでも知ってもらいたくて、頑張る沙那のちょっとした変化をさりげなく高部君に伝えるのに必死になった。そのついでに高部君の好きな物や、趣味なんかを教えてもらったりもした。
 沙那の恋を応援すればするほど、沙那のために頑張れば頑張るほど、私の中には高部君のことが降り積もっていった。
 そのことにちょっと胸があったかくなったり、キシキシときしみが上がったりすることもあったけれど、私はそれは全部、私が沙那のことを思うからだと思っていた。私が沙那の恋を応援していて、沙那が好きだからだと思っていた。
 高部君が『可愛いね』って言ってくれて嬉しい。それは沙那に向けて可愛いねって言ってくれたから。だから沙那を応援する私も嬉しい。
 高部君が他の女の子と話していると、胸が苦しい。それは高部君が沙那を見てくれていないから。だから沙那を応援する私は悲しい。
 私が高部君を好きだと思うのは、沙那が高部君を好きだから。沙那の『好き』を通して高部君を見ているから。だから、私も高部君を好きなんだと思う。
 沙那が好きな高部君が好き。沙那を良く思ってくれている高部君が好き。
 私は沙那が、友達として好き。それと同じように、高部君のことも好き。
 ……あの時の私は、心の底からそう思っていたんだ。
『好き』っていう感情にいくつも種類があるだなんて、知らなかったんだ。

あきって、高部君のこと、好きでしょ?』

 そうじゃないって気付いたのは、私より沙那の方が先だった。
 沙那は、三年生の夏、部活を引退するタイミングで高部君に告白した。沙那の努力は高部君に届いていて、高部君は照れ笑いを浮かべながら沙那の告白に頷いてくれたらしい。私はその場を見ていないから沙那からそうやって聞いただけだったけど、それが本当だってことは一緒に帰ったり、一緒に遊びに行くようになった二人の姿を見ていれば分かった。
 嬉しかった。嬉しかったの。飛び上がって喜んで、嬉し泣きをしながら『良かったね! 良かったねっ‼』って沙那を抱きしめちゃったくらいに。沙那も嬉し泣きをしながら『良かったよぉ~っ‼』って、私を抱きしめ返してくれた。
 ……それなのに、どうしてあんなことに、なっちゃったんだろう。

『え……』
『私、彼女なんだから。秋帆のこと見てたら、分かるんだから……っ‼』

 沙那が鋭い口調でそうやって切り出してきたのは、ブラスバンド部のメンバーの中でも特別に仲が良かった数人で卒業旅行に出掛けた先でのことだった。
 旅行、と言っても電車に乗って遠出するだけの日帰り旅行だったけど、中学卒業と同時にまた親の都合で引っ越すことが決まっていた私にとっては、仲が良かった友達と最後の思い出を作る場で、人生の一大イベントと言ってもいい旅行だった。

『なっ、なんで、そんなこと……っ‼ 沙那の彼氏にそんな……っ‼』
『じゃあなんで今回の旅行に高部君を連れてくことにこだわったの? 最初は私と二人で行くって約束だったじゃない! なのにふたを開けてみたらブラス部のみんなでってことになってるし……っ‼』

 沙那と二人での卒業旅行。それはブラスバンド部の中で卒業旅行の話が出るよりも先に約束してたことだった。
 だけど、ブラスバンド部での卒業旅行の話が出たのと同じタイミングで、引っ越しの予定が私が聞いてたよりも早くなってしまって、沙那と予定していた日には旅行に行けなくなってしまったこと、ギリギリブラスバンド部の卒業旅行のタイミングになら予定を空けられること、そこに参加してしまうと沙那と二人きりで再び出掛けるのは難しいこと、沙那との思い出も大切だけどどうせならみんなとも思い出を作りたいということ、そういう説明は全部きちんと沙那にしてあって、随分前に沙那だって納得してくれたはずだった。
 そもそも高部君が今回のメンバーに入っていたのはたまたま……というよりも、高部君の方が、みんなと一緒とはいえ沙那と一緒に旅行に出掛けたかったから参加してくれただけであって、私が無理に誘ったわけじゃないし、私がそこにこだわった覚えもない。確かに沙那には申し訳ないとは思ったけれど、私が自分勝手な思いでこういう風にしたわけじゃない。
 そうやって説明したかった。
 だけど私は沙那の思わぬ言葉に混乱していて、それが悲しくて、なんだか悔しくて、驚いてもいて、言葉が喉につかえてすぐに説明を口にすることができなかった。

『秋帆がずっと高部君のこと見てたの、知ってるんだからっ‼』

 私が口ごもったのを見て、沙那は疑惑を確信に変えたみたいだった。
 私が高部君のこと、好きなんだって。

『親友なんだものっ‼ 秋帆が高部君に恋してるんだって、気付かないわけないじゃないっ‼』

 言われて、私は思った。
 あの『好き』は、私が沙那に向ける『好き』と、何が違うんだろう? って。

『私に協力してるフリして、いつか高部君のこと奪ってやろうって思ってたんでしょっ⁉』

 同時に、思っていた。
 そんなこと、絶対にしないって。

『ほんっと、サイテーッ‼ 私がどれだけ高部君のこと好きか知ってるくせにっ‼ 知ってて、高部君に近付く口実に使ったんでしょっ⁉ 秋帆、口下手だもんねっ⁉』

 私は、沙那が大好きで。大切に思っていて、感謝してて。
 だって、全部沙那のおかげだったから。沙那がいなきゃ、私は何もかもうまくできなかったから。
 だから少しでも、沙那の役に立ちたかった。沙那の想いを知ってほしかった。沙那に幸せになってほしかった。
 高部君のことは、好きだったのかもしれない。だって高部君が沙那のことを見つめて優しく笑うのを見ると、キシキシって音が聞こえたような気がしたから。沙那はもう悲しくも苦しくもないのに、心がきしむ音がしたから。だから私は、私の心で、高部君のことが好きだったのかもしれない。
 だけど。……だけど。
 沙那の隣で笑う高部君が好きだった。高部君の隣で笑う沙那が好きだった。その間に割り込みたいと思ったことも、成り代わりたいと思ったこともない。
 それだけは、絶対に絶対に、ホント。

『違うならなんとか言ったらどうなのよっ‼』

 ……そう、思ったのに。

『あっ……う、ぁ…………』

 混乱と、怒りに当てられた緊張で、私はまともに言葉を口にすることができなかった。血の気が引いて、頭がクラクラして、倒れないように立っているのがやっとだった。
 違うって、心の中では必死に叫んでいたのに。いつもの沙那なら、そんな私にきっと気付いてくれたのに。

『……なんとか、言ってよ』

 泣きそうな顔で、……泣き笑いのような顔でそう言った沙那は、私の心を見てはくれなかった。
 その時に、やっと分かったのかもしれない。
 沙那は、私の心を見ていないんじゃない。私自身が気付いていなかった、私の本心を見ていたんだって。

『……答えられないってことは、そういうことなんだ』

 泣きそうな顔で私の答えを待っていた沙那は、私が答える言葉を持っていないとさとると、氷のように冷たい声と眼差しで吐き捨てるように言いはなった。性格も目付きもキツかった沙那には敵も多くて、そういう人からよく『氷みたい』なんて言われてたんだけど、まさしくあの時沙那が私に向けた言葉や視線は氷そのものだった。
 沙那はそんな氷で私を刺しつらぬいたまま、身をひるがえして行ってしまった。置いていかれた私は、わざわざ捜しに来てくれた他のメンバーが私を見つけてくれるまで、ずっとその場に突っ立ったまま動くことができなかった。
 旅行先からどうやって帰ったのかは、記憶にない。気付いた時には私は、家族と一緒に次の新居に向かう車に乗っていた。記憶にはないけれど、多分沙那は最後の見送りにも出てきてくれなかったと思う。旅行先で一方的な喧嘩別れになって、それきり。
 新しい引っ越し先は、隣の県だった。隣の県と言っても車で二、三時間、電車に乗れば一時間ちょっとで元いた町に行くことができる。
 それでも私は、あの日から一度も、あの町に帰ろうとはしなかった。……帰れなかった。沙那と、高部君がいる町には。
 他の友達とはメッセージアプリでやり取りもしていたし、『遊びにおいでよ』と誘われてもいた。でも私は毎回お茶をにごしてその誘いから逃げてきた。
 理由は、分かっていた。
 私は、沙那に会ってしまうのが怖かった。……ううん、違う。沙那が会ってくれないことが、怖かった。どこもかしこも沙那との思い出にあふれているのに沙那がいない、会ってくれないあの町に行くことが、怖くて怖くて仕方がなかったんだ。
 ……だけど、そんな町に、今日私はやっと足を踏み入れた。
 逃げ回っていたのを、やめたんだ。

「……だって、時間がないの」

 スマホを握りしめたまま、力なく机にせる。顔を横に倒したせいで、部屋の隅に置かれたバケツが目に入った。その中身がチラリと見えて、今度は堪えきれずにポロリと涙がこぼれてしまった。

「私、もう……消えちゃうんだもん……」

 砂状病。
 今の私は、

「……だから、お願いだよ、沙那」

 呟く声が震えていた。体が震えて指先に力が入らない。スルリと抜け落ちたスマホが、もう一度けたたましい音を立てながら机に倒れていく。

「私が消えてしまう前に、私の話を聞いて」

【-19】

 砂状病。もしくは失踪病。
 文字通り、体が砂になって消えてしまう病。正確には、そういう病気じゃないかと言われている現象。それもジワリジワリと砂に変わるんじゃなくて、ある時、いきなり、まばたきひとつするような短さで人体ひとつがまるごと砂になって崩れ去る。その現象に遭遇して初めて、患者と周囲はその人が砂状病だったことを知る。つまり砂状病だと発覚した時には、患者は全員、すでに死んでいる。
 致死率はおそらく百パーセント。
 感染経路は不明。
 一応病気であるとは認識されているけれど、そもそもこれが感染症なのか、遺伝病なのか、先天的な物なのか、後天的な物なのか、もっと根本的な所からして『これが病気であるのか』という部分から解明できていない現象。
 発覚した時に患者はすでに死んでいるから、治療法も治療薬もなく、研究自体もめぼしい進展はない。
 最古の事例は十数年前にあるらしいのに、世間一般に認知されるようになったのは割と最近の話なんだとか。それに失踪なのか砂状病なのか分からない事例がたくさんあるらしいんだとか。有名な俳優さんが行方不明になっていたのは、自ら失踪したり誘拐されたりしたわけじゃなくて実は砂状病だったからだとかなんとか。
 そんな話題に事欠かない世界で、私達は生きている。
 ――私も、生きていた。
 今この瞬間も、世界で、日本で、もしかしたら自分のごく近くで、砂になって消えていっている人がいるのかもしれない。それが確かな事実であると知っていながら、私達はそのことを決して実感できていない。
 だって、ほんとに体感してみなきゃ、何がなんだか分からない。
 誰がなるのか分からない。防ぐ方法も分からない。死んだことさえ分からない。そんなないない尽くしな病気に警戒して生きろ、だなんて、現実味がなさすぎる。
 ――私もずっと、そうだった。
 ないない尽くしの病気。砂状病。
 この『病気』と仮定した現象があまりにも絶望的なものだったせいか、あるいは現実味が薄すぎたせいか。……この病気には、不思議な都市伝説が付きまとっていた。
 それは。

「発症して体が崩れたのち、二十四時間だけ、生前と同じ姿で、己が望んだ場所で行動することができる」


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