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第陸話-復讐

復讐-15

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 その夜、チブル警察署の取調室に、茶髪の男・規陽ダナと緑髪の男・布袋存の2人が並んで座らされていた。
「お待たせしました」
 絢巡査長がそう言って取調室に入って来る。
「こんな時間に取り調べか?」規陽が絢巡査長を睨む。
 時間は24時を回っていた。
「そう」
「眠らせてくれよぉー」今度は布袋が発言する。
「それもそうね」
「じゃ、明日にしましょう」
 絢巡査長は素直に布袋の意見に従うように、制服警官達に規陽と布袋を留置場に入れるように指示をし去って行った。
 そして留置場に戻る道中、制服警官に「今日は、留置場が満室なので相部屋になる」そう言われた。
 規陽、布袋共に他の人間が居ない相部屋なのだろうそう思いながら留置場までの道のりを歩く。
 留置場の錠を開け「入れ」制服警官に促され牢に入ると、薄暗い留置場に先客が居た。
 詩であった。
「詩・・・・・・」
 真っ先に反応したのは、規陽だった。
「どうも」そう挨拶する詩の手には短刀が握りしめられていた。
「お、おい」
 詩の真意をすぐに見抜いた規陽は後ずさりする。
「どうして、そんな物を?」声を震わせながら布袋は質問する。
「それは殺すためよ!!!」
 短刀を振り上げ二人に襲い掛かる。
 規陽の腕に短刀が切り付けられ、血がその腕から血が滴り落ちる。
「ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 留置場に規陽の悲鳴が響き渡るが、看守役の制服警官は駈けつけて来ない。
「お、おい!!」布袋は涙目で部屋の隅に固まる。
「あんた達、自分が犯した罪を認めてないようね」
「み、認めてる!」
「噓をつくんじゃあない!!」
 噓をついて誤魔化そうとする布袋を詩は一喝する。
「何で俺達を!?」
「あんた達が旦那を殺したからよ!!」
 固まっている布袋は詩の正体にそこで気づいた。
「あ、あれは取田が殺したんだ」
「そう。でも、殺しただけじゃないでしょ」
 短刀を布袋の右脇腹に突きつける。
「強盗だ。最初は強盗しようと思って」
「それであんた達は、5人がかりで殺したの?」
「そうだ。すまなかった。許してくれ」布袋は情けない声を出しながら許しを乞う。
「私が許すわけないでしょ」
 短刀を押し付ける力が強まるのを感じる布袋はもうダメだ。そう思った時、明かりが点く。
「へ?」
 看守が事態に気付き助けに来たそう思った。
 しかし、そこに姿を現したのは肥後に絢巡査長そして、見覚えのある女の子と見知らぬ男の四人であった。
「な、作戦成功だろ」長四郎は勝ち誇ったような顔で発言する。
「長さん、冷や冷やしたよ」肥後は汗を拭う。
「それ、渡してください」
 絢巡査長のその言葉に素直に従う詩は、短刀を渡す。
 その場に崩れ落ちる布袋は息をぜぇぜぇと吐き、規陽を見る。
 規陽は白目を向き、倒れていた。
「ねぇ、気絶してるんだけど」燐は半笑いで規陽を軽くツンツンと蹴る。
「お仕置き効きすぎたかな」
 参ったなと言わんばかりに長四郎は頭をボリボリと掻く。
「お仕置き?」
「これ見てぇ~」長四郎は絢巡査長から短刀を受け取ると、刃先を指先で押し込むと赤い液が滴り落ちる。
「おもちゃ・・・・・・」
 放心状態になる布袋に話を続ける長四郎。
「あんたやこの気絶しているおっちゃんが本当の事を話さないと、次はこんなものじゃ済まないだろうな」
「じょ、冗談だろ?」
「どうかなぁ~ 後、今までの事も悔い改めないと同じようなことが起こるだろうな」
「う、噓だろ!」長四郎に縋りつこうとするが、簡単に躱され床に寝転がる。
「ま、後はお前たちの行動次第だ。じゃあな」
 長四郎達は、牢を出て行く。勿論、詩も一緒に。
 残された布袋と気絶した規陽。布袋は恐怖のあまり失禁してしまうのだった。
 規陽と布袋は警視庁に護送されることになり、卸と詩は沖縄県警で逮捕されることになった。
 最後に卸が供述した内容をここでこの俺、熱海 長四郎が書き記そう。
 当該の殺人事件を計画して、詩に接触を図った。
 当初この計画を説明した時は半信半疑で信用していなかったが、卸が調べ上げた男達の近況を聞いた詩はそこで決心し、卸の計画に参加することを決めた。
 卸は東京で事件を起こせば警視庁の刑事達が邪魔してくるのは容易に想像でき、下手したら自分達が手を下す前に逮捕される可能性だってある。
 それで他県で事件を起こそうと考え、弟の森井が居る沖縄に場所を決めた。
 しかも都合の良い事に森井はホテルマンをしており、そのホテルを利用しようと計画した。
 詩には男達に接触してもらい沖縄に行くように仕向けてもらい、旅券やホテルの予約の手配は卸が行った。
 男達はすんなりと沖縄行きを決め、行動に移すだけの段階に入った。
 事前に毒物等は用意してあったので、那覇空港の宅配センターに送り詩にそれを受け取るよう指示をした。
 卸は詩が沖縄に来る一週間前から沖縄に入り、ホテルの構造や防犯カメラの位置等を調べ上げていた。
 森井には事件前日の夜、強めな睡眠薬を飲ませ森井と入れ替わりで出勤した。
 森井が起きたのは翌日の夕方で部屋には置手紙があり、代わりに出勤するそう書かれてあった。
 何かの冗談かと思ったが、睡眠薬のせいで思うように身体を動かせなかった森井は再び眠りについた。
 卸は森井としてホテルに出勤し、そつなく業務をこなしていた。
 そして、詩が最初の事件を起こし、全手を毒殺した。
 傷心の男達に脱法ハーブで正常な判断を欠如させ、取田を事件現場に誘いこみ長四郎の推理通り取田を絞殺し投げ捨てたのは卸であった。
 流石に警察も事態を重く見て、残りの三人の保護をしたので当初の計画が叶わなくなり詩にはせめてもの気晴らしにとスキューバダイビングに行かせた。
 卸は男達が連行されたチブル警察署で事件を起こすため、その下見として警察署前を張っていた所、垂水が脱走してくる所に出くわしチャンスと思い助ける形で共に行動した。
 それからスキューバダイビングを終えた詩を拾い、事件現場の海岸で2人係で海に沈めた。
 残りの2人を殺すために、詩が自首する事になった。
 その後は読者の皆様の知っての通りだ。
 で、今はラモちゃんと絢ちゃん、ラモちゃんの友達リリと共に海水浴に来ていた。
 俺はお守らしい。
 生き残った規陽と布袋は沖縄県警の警察官に東京へと護送され、絢ちゃんはラモちゃんと共にバカンスを楽しむ事になった。
 では、俺は水着ギャルの観察に勤しむ事にする。
 長四郎はサングラス越しに水辺で楽しく遊んでいる水着ギャル達を眺めているのに対して、燐達はビーチバレーを楽しんでいた。
「あ~また、落とした」リリがボールを落とした燐に文句を言う。
「ごめん、ごめん」と言いながらボールを拾い上げ、長四郎の方を見るとパラソルの下で水着ギャル達をニヤニヤしながら見ているので長四郎目掛けてボールを投げる。
「ぎゃあーす!!!」
 その断末魔と共に、長四郎の顔面にボールはヒットする。
「凄い・・・・・・」燐のコントロール能力に拍手する絢巡査長。
「うん」その意見に同意するようにリリは頷く。
「ったく、変態!!!」
 倒れる長四郎の傍に転がり落ちているボールを拾い上げながら罵声を浴びせる燐は再び、遊びに戻る。
「Uber Eatsでぇーす」
 クーラーボックスを持った肥後が長四郎の所に来た。
「あ、肥後さん」
 長四郎は砂浜に埋もれていた顔を上げ、肥後を見る。
「持ってきたよ。ぜんざい」
「おっ、待ってました!」
 すくっと立ち上がると、クーラーボックスから取り出されたぜんざいを貰う長四郎。
「みんなぁーぜんざい持ってきたよぉー」
 肥後は遊んでいる3人に声を掛けぜんざいを配る。
「これがぜんざいですか?」
 燐は肥後に問いかける。
「うん、ぜんざいよ。東京だと違うの?」
「違いますけど」絢巡査長も否定する。
 3人の女子たちの手に握られているのは、小豆の載ったかき氷であった。
「私、知っている。沖縄のぜんざいって小豆が載ったかき氷みたいなのをぜんざいって言うんだよね」
「へぇ~ そうなんだ」燐は相槌を打ちながらぜんざいを食べる。
 肥後が言うにはこのぜんざいは、沖縄のぜんざいの中でもTOP10に入る店の商品らしい。
 その為か、味は美味しくあっという間に平らげた女性三人。
「美味しかったです」と燐が感想を言う。
「それは良かった。持ってきたかいがあったよ。ねぇ、長さん」
 肥後が長四郎の方を向くとそこには長四郎の姿はなく、長四郎が居た場所に1枚の書置きが置いてあった。
“さらばーい”とだけ書かれていた。
「あ、逃げた」そう言う肥後の横で身体が小刻みに震えている燐。
 燐以外のその場に居た3人は後退りし始める。
 燐の怒りが爆発するのを予見したうえでの行動であった。
「何処に行ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 熱海長四郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 燐の怒りの声は500m程離れた所を走る長四郎を乗せたタクシーにまで聞こえるのだった。

 第陸話・完
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