探偵は女子高生と共にやって来る。

飛鳥 進

文字の大きさ
104 / 770
第漆話-能力

能力-0

しおりを挟む
 9月上旬、都帝大学理工学部超能力研究室に所属する水川 勉みずかわ つとむ教授は一つの講演会場へと訪れていた。
 目的は明日、公開収録されるテレビ番組の下見の為だ。
 その番組というのは超能力を検証するというバラエティー番組で、今日の下見というのは制作陣がヤラセの仕掛けをしていないか、それを確かめる意味でここに訪れたというわけだ。
 お茶の水博士のようなハゲ頭を輝かせ、壇上を歩く水川教授。
「どうです? 何もないでしょう」
 今、話しかけて来たのはこの番組のプロデューサー・丹湯 蒼たんゆ あおいだ。
「そうですね。この舞台場には特に仕掛けはありませんね」
「そうでしょう。そうでしょう」
 胡麻をするような相槌を打つ丹湯を見て、少し不安になる。
「ですが、上に何か設置することは可能ですよね?」
「上ですか・・・・・・・」
 丹湯の顔が少しひきつったのを水川教授は見逃さなかった。
「何かあるんですか?」
「いえいえ、とんでもない」首を横に振り否定する丹湯だったが、水川教授の疑念は益々深まる。
 この依頼が来た時から、怪しいと思っていた。
 一か月前の事、研究室に一人の男が研究室を訪ねてきた。
 その男は20代半ばといった感じで、靴は履きつぶされ汚れており正直その靴で研究室を歩いて欲しくないと思った程だ。
 男はマジテレビのディレクター・大判 鮫夫おおばん さめおと名乗った。
 取り敢えず、水川教授は話だけは聞こうと思い大判を生徒が座る椅子に座らせコーヒーを淹れながら用件を聞いた。
「テレビ局の方が、私にどの様なご用件で?」
「はい、先生の知恵をお貸し頂きたく参った次第です」
 そう答える大判の前にコーヒーが入ったマグカップを置く水川教授は話を続ける。
「私の知恵ですか?」
 これは知恵という言葉に引っかかりを感じた水川教授の抗議といった所なのだが、大判はその事に気づいておらず話を進めていく。
「そうです。実は今度、この様な番組を撮影する事になりまして」
 大判は企画書を水川教授に渡す。
 その企画書の表題には「サイキック木馬スペシャル~サイキック木馬の秘密~」と記載されていた。
 サイキック木馬もくばとはここ最近、YouTubeの動画投稿で自身の超能力を披露し人気がうなぎ登りの自称、超能力者である。
 そういった類に食いつくマジテレビらしい企画だ。水川教授はそう思った。
「このサイキック木馬の超能力が本物か検証しろ。そういう事ですか?」
「その通りです。話が早くて助かります」
 この一言に少しカチンときたが、水川教授は話を続けることにした。
「私も超能力という研究をしているので、彼の動画を見たことはあります。しかしね、彼の能力は超能力ではなくただのマジックですよ」
「いや、そんなことはありません。僕は間近で彼の超能力を見ましたから」
「ほう、どの様な能力でしたか?」
「透視です。これを見てください!」意気揚々とタブレット端末で動画を再生させる大判。
 動画は、取材の過程で能力を確かめるために撮影したものであった。
 サイキック木馬は自分で用意したトランプを机に並べて全52枚を言い当てると宣言し、次々と当てていった。
 最後の一枚を言い当てた時、動画を停止させる大判はこう言った。
「どうです? これでも手品だと思いますか?」
「思いますね」即答する水川教授は続ける。
「このトランプ自体、サイキック木馬が用意した物です。そのトランプに細工してあったのでしょう」
「細工なんてありませんでした」
「貴方の細工と言うのは、折り目とか分かりやすい物ですよね。私が言う細工とはこのトランプの裏面です。一見、変哲もないように見えますが、マジシャンにだけは分かる印が書かれているんです」
「そんな・・・・・・」
「別にそれが悪いとは言いません。エンターテインメントなのでね」
「では、協力して頂けるということですか?」
 大判の頓珍漢な言葉に、ガクッと肩を落とす水川教授。
「エンターテインメントだからこそ、彼のマジックの種明かしをしない方が良い。私はそう言っているんです!!」少し語気を強めて大判に説明すると「ああ」と納得したようでその日は帰って行った。
 次の日もその次の日もと大判は何度も研究室を訪ねてきては、その都度追い返したのだが、一週間前、大判はプロデューサーの丹湯を連れて来た。
 幾つもの研究室でも断られたと語る丹湯。
 今日も追い返してやろうそう思っていたのだが、丹湯からまさかの提案を受けた。
「先生、撮影に使う機材、小道具等を事前に調査してもらうというのはどうでしょうか?
勿論、撮影当日まで誰にも触れさせません。お約束します」
 丹湯のその強気な姿勢に水川教授は誘いに乗ってみることにした。
 それから今日まで、機材や小道の準備に立会い細工されていないか調査していたのだが、最初に感じた胡散臭さは拭いきれずにいた。
 そして、水川教授は丹湯、大判を伴って舞台上の歩道の調査をしていた。
 ここは表彰式などで使用する幕を取付け、下に降ろす作業用の歩道で特に変な仕掛けもなかった。
 この場所を尋ねた時に見せた丹湯の反応に疑問を持ったが、現時点では異常はないのでその場を撮影し降りた。
 講演会場のロビーは休館日ということもあり、静かであった。
「明日は宜しくお願い致します」
「こちらこそ」丹湯にそう返事する水川教授。
「先生、お送り致します」
「宜しく」
 水川教授は大判に連れられて、車が停めてある駐車場へと向かった。
 二人は車に乗り込み、大判がエンジンをかけようとしたタイミングで「あっ」と何かを思い出したようであった。
「どうしました?」
「すいません、会場にスマホを忘れてきたみたいです。探してきても良いですか?」
「構いませんよ。待っておきますから」
「ありがとうございます!!」
 急ぎ足で会場に戻っていく大判を見ながら、丹湯が仕掛けてくるであろうヤラセについて考察しようそう思った時、首に紐がかけられる。
 驚くのも束の間、首を絞められる水川教授。
 必死の抵抗も虚しく水川教授は息絶えるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...